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2015.10.19 Mon
建築家 フランク・ゲーリー展 “I Have an Idea”

2015年10月16日、六本木の21_21 DESIGN SIGHTにて、「建築家 フランク・ゲーリー展 “I Have an Idea”」がスタート。

(技術監修としてこの展覧会にかかわられた遠藤豊(LUFTZUG)さんのインタビュー記事はこちら)
オープニングと、展覧会ディレクターを務められた建築家、田根剛(DGT.)さんによるトークショーに参加してきました。

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田根さんと技術監修の遠藤豊(LUFTZUG)さんが打ち出した 展示コンセプトは、『建築的な模型や図面やスタディプロセスの展示だけではなく「ゲーリーがどのようにアイデアを生み出し、それを育んで形にしているのか、その思想や人となりを含めてこの展覧会を通して伝えたい」ということだったそう。そして建築のアイディアはもちろん、それを実現するための様々なデザインの前提条件を含めた、建物が生まれるまでのプロセスすべての段階に対して出されたアイディアが展示される。展覧会タイトルが”I have an idea”である所以である。
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 会場はエントランスから順に5つのセクションに分けられて展開する。
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1.ゲーリーのマスターピース
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建築は見に行かなければ体験することができない。まだ体験したことのない来場者に、まずゲーリー建築を擬似的にでも体験してもらいたい、というコンセプトにより壁面に展開するムービー。
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2.ゲーリー・ルーム

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ゲーリーの思想や信念や思い、人となりを展示するセクション。図面や模型だけでは伝えきれない創作に対する想い・人間性が、写真、アイスホッケーのユニフォーム、好きな絵画、自分がデザインしたヨットに乗った写真、壁面に展開するテキストにより表現される。
スタジオから拾ってきたガラクタのような模型やガラスの欠片、 ドンキホーテ、シェイクスピア、川端康成、が好きなゲーリー、アメリカ版サザエさんともいえるザ・シンプソンズに出演したメディア上のゲーリー、、、
様々な角度からみたフランク・ゲーリーという人間を浮き彫りにする展示。
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このセクションで最もエキサイティングなのが、ゲーリーの「マニフェスト」。
『君たち、「オレのマニフェストを知っているか?』
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ゲーリーのマニフェストはクリエイターに希望と勇気をくれる。
そしてゲーリーの前ではすべてのクリエイターは何の言い訳もできない。
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3.アイディアの進展
ここには、田根さんの考案した“アイディアグラム “が展示されている。
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建築を発想し、実現し、使われていく過程で考えなくてはならない要素のひつとひとつを、architecture 、technology、peopleの三大カテゴリに分けながらツリー状に分岐した図で整理しているダイアグラム。
ゲーリーは、そのすべてひとつひとつに対してアイディアをもち、提案する。
なぜなら、それは規制の枠の中で不自由になってしまうデザインを、解放し自由にするために必要不可欠だから。
ちなみに面白いエピソード。ゲーリーは、「建築と建物は違う、建築は歴史家や学者が勝手にカテゴライズしたものだから、建築は作らない 。オレは建物をつくる。」と言っているとのこと。なるほど。
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4 .アイディアリアライゼーション
実現に向けて越えるべきハードルをどう超えるのかについての展示。中心となるのは、ゲーリー・テクノロジーというゲーリーが考案したシステムについての解説動画。
  • ヴィトラの螺旋階段がうまくつくれなかったこと、
  • その時の経験から2Dの図面に変換せず3Dの模型をそのまま実物の3Dへと結びつけるマスターモデルのアイディアが生まれたこと、
  • カティアというフランスのジェット機設計のためのシステムに着目したこと、
  • バルセロナで実現したサカナのオブジェへカティアを適用したこと、
  • ビルバオのグッゲンハイムのプロジェクトでこのシステムがコストコントロールにも有効であることに気づいたこと、
  • 通常ニューヨークの建設プロジェクトでは予算の3割が発注ミス、段取りのミス、交通渋滞による物資の遅延でなくなるが、ニューヨークのビークマンタワーではこの部分を圧縮することで自分のデザインを予算内で収めることに成功したこと、
  • 予算が増えないのであれば工期を圧縮するか、無駄なコストをなくす。なんと見積もりと実際の建設費の誤差は1パーセントだったこと
などなど。
設計者の言う「誤差は1パーセント」や「コストを13パーセントカット」というロジックは鵜呑みにすることはできないが、ヴィトラでの気づきから、フェイスブック本社ビルにおける4Dの次元(時間軸、つまり工期もコントロールし始めた)に入り始めたゲーリーテクノロジーの進化は、複雑な形態の実現の過程で現れるあらゆる困難に対して、諦めないで創作する道を探し続けた、希望の物語だ。
ちなみに現在では、ザハ・ハディドやヘルツォーク&ド・ムーロンも、サポートしているという。
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ゲーリーは、ゲーリーテクノロジー社を創設し、「もうこれでどんな建築家もダメな建物をつくる言い訳はできなくなった」と言う。
それは、「ツマラナイ四角い建物じゃダメだ、どんな複雑なカタチもコストと工期の中で実現できるのだから!」という意味ではないだろう。
そうではなく、「建築家はデザインだけ考えて、状況が整わないからデザインできないという言い訳はできなくなった。デザインを貫徹するためにデザインの前提条件から関与してアイディアを出せばいいんだ。おれはそれをやったぞ!だからお前らも言い訳できないからな!」ということなのだろう。“アイディアグラム”で示されたように、プロセスのあらゆる段階に対してアイディアを提案していくことで、自分の建築的創造を現実社会に着地させるその執念と実行力には唸るほかない。
テクノロジーはテクノロジー単体で評価されるべきではない。
僕たちが引き受けるべきなのは、ゲーリテクノロジーを使って形態の可能性を追求することではなく、デザインをとりまく前提条件を含めて変えていこうとするその姿勢だろう。ゲーリー・テクノロジーがなければそれはただの精神論だが、ゲーリー・テクノロジーの存在が「建築家はもう言い訳はできない!」というゲーリーの言葉に重みを与えている。
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5.ゲーリーのシークレット
最後の回廊の部分で展示される、ゲーリーの秘密。
工場、アノニマスな建物のおもしろさ、うつくしさ、合理性、を追求したゲーリーがキャリアの初期の頃に撮った写真の展示。
サカナに対する偏愛がポストモダン的状況の中で生まれてきた面白いエピソード。
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とにかくゲーリーは、その中で使われる空間の使い勝手、基本的なスペックを大切にしているのだという。外観に注目が行きがちなゲーリー建築だが、中に入って心地よい気持ちになれるのは、平面計画のうまさ、使われ方への配慮など基本的な部分の検討にに割かれる時間が多いためだろう。
作品のイメージからとかく誤解されやすいゲーリーの、建築家としての圧倒的な達成を見ることができる、必見の展覧会。
建築家だけでなく、広くクリエイションに関わる方々にとって、得難い経験となるはず。
文 / 佐藤桂火

建築家 フランク・ゲーリー展 “I Have an Idea”  公式ホームページ

会場:21_21 DESIGN SIGHT(東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内)

会期:2015年10月16日(金)- 2016年2月7日(日)

休館日:火曜日(11月3日は開館)、年末年始(12月27日- 1月3日)

開館時間:10:00 – 19:00(入場は18:30まで)


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