
『西日暮里のシェアハウス』
株式会社 勝亦丸山建築計画が、設計するだけではなく自身がサテライトオフィスとして改修費を全額出資し、2Fのシェアハウスの入居者募集も行っている新しい試みのシェアハウス。プロジェクトメンバーであり入居者の一人でもある不動産コンサル/ラッパーのカタチトナカミさんによる新曲建築ラップ「Multi」も、シェアハウスのオープンと同時に公開となり、話題を呼んでいます。
自らが出資し、入居し、入居者募集も行う
このプロジェクトの最大の特徴は、建築家自身が改修費を全額出資して設計事務所+シェアハウス+ゲストルームに空家を生まれ変わらせるという提案を、設計案から収支計画まで合わせてオーナーに提案し、実現していること。自分の設計事務所の入居先を探す際に、 現状回復義務のない物件であることを条件として最初は空家の購入を検討していたが、最終的には原状回復義務なしでオーナーと契約するかたちでこの物件を借り上げている。オーナーさんとの折衝や契約部分、物件探し、賃貸管理運営については、創造系不動産がサポートしている。
富士市ベースでの活動とつなぐ、サテライトの拠点として
設計者の勝亦さんと丸山さんは、パートナーシップを組んで設計活動を行われている若手建築家。勝亦さんは自身の出身地である富士市をベースにする活動も行われており、東京側の拠点としてこの『西日暮里のシェアハウス』を位置付け、富士市と東京を往復しながら活動されている。富士市での活動も、設計活動はもちろん地元商店街の空家リサーチを富士市からの委託で引き受けている。設計者という枠組みにとらわれず「まちをどうつくるか」という観点から必要なサービスを提供していこうという姿勢を持たれているのが特徴だ。既存建物を解体しながら現場で発見しつつデザインを行い、入居予定者がデザインに着手するまえに「自分はこのあたりに住みたい」という要望を出してそれをデザインにフィードバックしたり、つくることとつかうことのプロセスをオーバーラップさせながらプロジェクトは進行した。
界隈の空家をみつけて、徐々に街中に展開していく
『西日暮里のシェアハウス』界隈にはコインランドリーや銭湯があり、「谷根千」とよばれているエリアに近い。のんびりした昔ながらの雰囲気ものこしつつ、近年では外国人観光客を対象とした民泊事業も数多く仕掛けられておりポテンシャルが高いそうで、『西日暮里のシェアハウス』でも、ゲストルームを一部屋設けており、海外留学生や旅行客などの滞在先としての運用も予定している。ポテンシャルが高いエリアである一方で、空家が多いこの地域で、このシェアハウスを核にしつつ近隣の空家へと事業を拡大していくことも視野に入れているそう。
設計者が当事者として街に腰を据える
「設計者はクライアントのお金を、代理人として預かって設計する。でも、もっと当事者としてエリアに関わっていくためには、自分たち自身が事業主としてプロジェクトをつくらないといけないと思いました。」と語る勝亦さん。 手の届く範囲で確実に街を良くしていく。街の主治医のようなエリアへの関わり方をする、新しい建築家像を見せていただきました。
文/佐藤桂火(corecolor共同主宰、建築家/佐藤桂火建築設計事務所主宰)
http://ksaa.jp/
twitter : @kei_fire
『西日暮里のシェアハウス』プロジェクト概要———————————————–
事業主:株式会社 勝亦丸山建築計画
所在地:東京都北区
竣工2017年8月
用途:シェアハウス・ゲストルーム
施工:株式会社 リアルサポート 一部セルフビルド
不動産:創造系不動産 株式会社
協力:富士商工会議所
撮影:千葉正人
ラップ:カタチトナカミ
HP:西日暮里のシェアハウス
展覧会UIA2017に出展