
日時 2018/01/09
公式HP:http://www.umegei.com/kurotokage/
日生劇場にて『黒蜥蜴』を観劇してきました。江戸川乱歩原作、三島由紀夫脚本、デイヴィッド・ルヴォー演出。
ステージの上で演者が口にするセリフが、離れた席に座っていても耳元で聞いたかのように鮮明に聞こえる。演者の熱や息遣いも伝わってくる。あたりまえのことなのだけれど、生の演技、生の演奏が発する情報量は画面やヘッドフォンから見聞きするものとはやっぱり異なる。初演ともなればたまにミスもあるけれど、そもそも演劇とは人間が演ずるもので、生きているものなのだ。
見るものを飽きさせず、非日常感を演出するしつらえは息をのむ。床壁天井の表面のつくりかただけで人の印象や経験はここまで高揚するのだろうか、と感嘆する。
一見クラシカルな装いをしていながら、おそらく建物を設計した建築家は実はクラシックな様式には興味がないのだろう。スタイルのまぜあわせを破綻なく違和感なく納める天才的なマジシャンのよう。
日生劇場 #theta360 – Spherical Image – RICOH THETA
メタリックなアールデコ調のエントランスから、クラシカルな赤絨毯のホワイエ、そして海をモチーフにしたホール。利用者にとってわかりやすく親しみやすい建物でありながら、設計者としては「建物のカタチでで特別なことをしなくても、ここまでできるんだぞ」と迫られているかのようであった。
アールデコ調の天井もウロコのようなホールのインテリアも、素材感がレトロな感じがしてそれはつまりデザインが陳腐化してるということなのかもしれないけど、この建物の場合はそれがえもいわれぬ味わいを醸し出していて愛着が持てる。愛される建物というのは、こういうものなのだな、と思わされる。
文/佐藤桂火(建築家)
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