
都立現代美術館で開催中の『山口小夜子 未来を着る人展』に行ってきました。
↑「三宅一生『馬の手綱』を着た小夜子」 撮影:横須賀功光 1975年
アジア人初のトップモデルとして活躍した山口小夜子さん。
三宅一生、山本寛斎などのモデルを始め、コレクションで数々のブランドのモデルをつとめた姿はもちろんのこと、57歳で急逝する直前まで、若い世代の表現者たちとコラボレーションしてきた実験的な取り組みも一挙に公開されています。
個人的にとても興味深かったのは、横須賀功光さんが撮影し、コシノジュンコさんがスタイリングされた、1974年の資生堂「ベネフィーク」の雑誌広告のための写真のベタ焼きが展示されていたこと。
セレクトした写真には○がついていて、トリミング位置も指定されていて「ああ、この中からこの写真を選ぶのか」「そうか、ここをトリミングするんだ」などと、写真家の方の思考が見えて楽しかったです。
山口小夜子さんといえば、資生堂の広告モデルを専属で務められていた期間が長かったのですが、当時のポスターもそろい踏み。
↑「資生堂 舞」 ポスター 撮影:横須賀功光 AD:中村誠 1978年
大胆なトリミングで知られるアートディレクター中村誠さんの一連の広告は、今、見てもとても新鮮です。
そして、晩年は若いクリエイターの人たちとコラボレーションして、活動の幅をどんどん広げた彼女。それは、そのまま「SAYOKO」という新ジャンルであったと言われるほど、多岐にわたり、そして斬新だったようです。
↑生西康典+掛川康典 「H.I.S. Landscape」 (「六本木クロッシング」出品作品、森美術館、2004年)
↑撮影:下村一喜 2005年
圧倒されて喉がからっからになりながら会場を出たら、学生の方々が次々と今回の作品集を手に取り、食い入るように見ていたのが印象的でした。彼女の活躍をリアルタイムで知ることができなかった人にこそ、「日本にはこんなにも超越したモデルがいたのだ」と圧倒されるのかもしれません。
写真の前でずっと佇む人、映像をじっくり見ている人。誰もが、写真や映像と対話しているようでした。こんなにも人の流れが「悪い」展示会はしばらくぶりに体験したように思います。
作品集には、彼女が
今回の展覧会のタイトルは「未来を着る人」ですが、彼女は生前「雨だって、風だって何でも着られるの」と言っていたそうです。そして「身体は服を着て、心は身体を着ているのよ」とも。
服を着て、映像を着て、空間を着て、時代を着た彼女。展示点数も映像点数も多いので、ぜひ、ゆっくり浸ってください。
『山口小夜子 未来を着る人』
会期:2015年4月11日(土)〜6月28日(日)
開催時間:10:00〜18:00(入場は17:30まで)
休館日:月曜日(ただし5月4日は開館)、5月7日
出品作家:生西康典&掛川康典、宇川直宏、エキソニモ、森村泰昌、山川冬樹
(ライター/佐藤友美)