
クビ宣告された日のこと【今日もコレカラ/第717回】
先日、コロナ前は比較的よくお会いしていた会社の社長に、ばったり再会した。
コロナで大打撃を受けた業界だった。そのさなかは事業が本当に大変だったこと、コロナ禍が明けてもお客様がなかなか戻らなかったこと、しかしその際に発見した業界の課題を解決するために、新しいビジネスモデルを思いついたこと、そしてそのビジネスをすすめるうちに、もともとのコアサービスの方にも新たな道が拓けてきたことなどを聞いた。
話は共通の知り合いの話題に及び、私も以前お世話になった某企業が、その方の会社に大型の投資をしていることを知った。「取締役のAさんにすごくお世話になっている」と聞いたので、ちょっとひやっとした。
というのも、以前私はそのAさんと大げんかをしていたからだ。いや、大げんかというよりも、どちらかというと大目玉をもらったと言ったほうが良いか。
あれは30代後半の頃だった。私はある会社の事業担当の方から、会社の大型プロジェクトを手伝ってほしいと言われた。当時の自分のリソースの半分くらいを割いてコミットするくらいの大きなプロジェクトだった。その人から「上司と会ってほしい」と言われ、会食したときに知り合ったのが取締役のAさんだった。その会社唯一の女性役員であったAさんとはお酒の席で非常に意気投合し、今度は社長とも会食を、ゆくゆくは上場を目指すつもりなので、ボードメンバーの一人になってほしいとまで言われていた。
しかし、実際の仕事が始まると、どうにも納得のいかないことが多かった。担当者が仕事を進めてくれないので、スケジュールをがっつりあけていた私たちが宙ぶらりんにされてしまったこともあった。
チームメンバーの仕事を守るためにも、と、私はAさんに直談判をしにいった。チームリーダーと一緒に問題点を整理し、箇条書きにして話し合いに臨んだ。
私としては、99対1くらいで担当者に非があると思っていたし、こんな失礼な扱いを受けたことはないと思ったし、「担当者を変えてくれなければ私たちチームはこのプロジェクトからおりる」と話した。
が、話を全部聞いてくれたあと「悪いけれど、今回の件はさとゆみさんと、さとゆみさんのチームのほうに非があると思う」と言い、私たちはびっくらこいた。
それまでいつお会いしてもにこにこ優しかったAさんは、厳しい顔をして「担当者を変えることはありえない。彼女は私たちの会社の財産だ。むしろ、さとゆみさんたちのチームに降りてもらいたい」と言われてしまった。さらには、私たちの仕事がいかに期待ハズレだったか、あなたにうちの会社の人間を批判する権利はない、こちらが文句を言いたいくらいだとまで言われた。
今回、再会した社長に「Aさんって、素敵な方ですよね!」と言われたので、これは黙っているのは良くないと思って「実は、過去にめちゃくちゃ叱られて、Aさんに出入り禁止にされているんです」と正直に話した。
社長はとてもびっくりしていた。
Aさんはスーパー優秀な人だし、そのAさんになぜ叱られたのか、何をやらかしたのか、と聞かれた。それに対しても正直に答えた。最初は99対1くらいの割合で先方に非があると思っていたけれど、先方にとっては逆だったという話もした。
社長は「ひとつ聞いてもいいですか?」と前置きをして、質問をしてきた。
「そういうときって落ち込みますよね。さとゆみさん、どうやって自分を立て直ししたんですか?」
私は、そのクビ宣告をされたあとの記憶をたどった。
Aさんと別れたあと、一緒に行った仲間と、「ちょっと思いもよらない反撃でしたね」と話しながら、原宿の街をとぼとぼ歩いたのを覚えている。
でも、Aさんから見ると、私たちの仕事のほうがよっぽど期待ハズレだったという言葉は真摯に受け止める必要があるよねという話になり、そのままカフェに入り何時間か反省会をした。
私たちのチームの落ち度はどこにあったか、私のディレクションにどう問題があったか、今回の事態をどう回避できたか、ここまで言い分がズレたのはどこに問題があったかなどなど、一緒に話を聞いた仲間と検証しているうちに「あれ、99対1で相手が悪いと思っていたけれど、たしかに私たちにも相当問題があったかも……っていうか、元凶は私?」となった。
私はおおいに反省し、次の日にはAさんと担当者にそれぞれ長いお詫びのメールを送った。
その後、仕事の継続はやはりできなかったし、しこりは残った。でも、あのとき私たちの仕事の甘さをとことん追求され反省できたのは、本当によかったと思っている。
そして、あの時、落ち込むよりもとことん反省して今後に活かそうと思えたのは、仲間と一緒に大目玉をもらって、仲間と一緒に反省会をできたからだと思っている。自分一人だったら、何ヶ月もショックを引きずったかもしれない。
自分でも驚くほどはやく立ち直れたこと、そして今後はもっともっと謙虚に仕事をしなくてはならないと本当に心から反省できたのは、一緒に要点を整理してくれた人がいたおかげだった。
仲間がいることって本当にありがたいことだと思ったし、自分の未熟さを知ったし、これ以降、私はできるだけ一人で仕事を受けずにチームで仕事をするようになった。
ということを思い出したのでした。
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ある日、番組ゲストを決める打ち合わせで「○○さん、使えないんだよねー」と発言した瞬間に、我に返った。自分の声なのに、知らない人の声のように聞こえた。
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