
一本隣の道を歩く【さとゆみの今日もコレカラ/039】
「もしキミが新しくコンビニを作ろうと思ったら、そのコンビニの前を通る人の数をカウントすればいい。その人数と店の床面積で売り上げはほぼ正確に予想できる。なぜかわかる?」
クイズを出してきたのは、ジョン・ハンケ氏だった。場所はカリフォルニアのナイアンティック本社。同社がリリースした「ポケモン GO」が世界中で社会現 象になっていた頃のことだ。
「人は、ルーティンを変えないということですか?」
隣の編集者がそう答えると、ハンケ氏はにっこり笑った。
「そう。家から学校や会社に向かう時、ほとんどの人は毎日同じ道を通る。人にいつもと違う道を通ってもらうのは、ものすごく難しいことなんだ」
彼は、自分が生まれ育ったテキサス州オースティンの話をしてくれた。人口1000 人。信号が1つしかない町の話だ。
「僕の田舎では、毎日夕方になるとみんな外に出て一緒に散歩するのが習慣だった。みんなで歩いておしゃべりしてから、それぞれの家に戻って夕食を食べたんだ。
テクノロジーは、人と人とを遠ざけたと言われている。僕たちは会話をしなくなったし、一緒に散歩をしなくなった。僕は、テクノロジーの力でもう一度、人と人をつなげたい。僕の田舎町のように、みんなが一緒に散歩できるようにしたい」
ああ、まさにポケモン GO はその役割を果たしていますね、と編集者は言った。パパは子どもと一緒にポケモンを獲りにいくし、レアキャラを探すためにいつもと違うコンビニに入る。
いつもと違う道を歩くと、発見があるでしょ。
人と人が現実の世界を一緒に探索するっていいよね。
ハンケ氏は、少年みたいな目をしていた。
そうか。この社会現象は、ハンケ氏が見たかった田舎の光景だったんだと気づく。その気持ちだけで、この人はすごいものを開発しちゃったんだなーと思うと、熱くなった。
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なぜ唐突に思い出したかというと、しばらくの間、京都に滞在するから。駅前のホテルから執筆場所のコワーキングまで、毎日違う道を歩こうと昨日の 朝、決めた。そして、毎晩違う人と会おうと思っている。
友人とのおしゃべりが楽しくて初日からうっかり飲みすぎたのだけれど、「生身の人間同士が会って話すから、面白い発見があるんだよ」と脳内で誰かが言った。
そうだ、ジョン・ハンケ氏だったと思い出したので書いた。
今日もGoogle map を見ながら、どのルートを歩こうかなと考える。
そういえば。Google map の生みの親もハンケ氏だったなと思い出す。彼の掌の上で転がってる。
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