
トナカイの自己肯定感と、ある看取り【さとゆみの今日もコレカラ/043】
街じゅうクリスマスソングでつい脳内でも再生してしまう。
「真っ赤なお鼻のトナカイさんは〜」で始まるお馴染みの曲の歌詞が気になって仕方ない。
このトナカイさん、この日は役に立ったかもしれないが、それ以外の 364 日はどうなのだ? 一度いじめられなくなったら他の日もいじめられないのか。そして、人の(トナカイだけど)、存在価値は役に立つかどうかだ決まるのか……etc.
*
気になって調べてみると、この曲、歌い出しの部分は英語の歌詞が
「Rudolph the Red-Nosed Reindeer」で、トナカイの名前はルドルフだと宣言されている。
この一行で何がわかるかというと、ルドルフは新入りだということだ。サンタのソリを引くトナカイは8頭でそれぞれ名前がついている。そこにルドルフの名はないから、新入りだとわかる。
赤い鼻のせいでいじめられていたルドルフは、自己肯定感が低い。ある年の天気の悪いクリスマスの日、ルドルフの赤い鼻が輝くのを見たサンタから
「クルーの一員になってくれ」とスカウトされる。ルドルフのおかげで無事プレゼントが配られ、彼はみんなに尊敬されるようになった。つまり、スイミーと同じタイプの物語なのだとわかる。
ところで、この歌にはもとになっている絵本があって、作者のロバートには癌で闘病中の妻と 4 歳の娘がいた。この物語は、「どうしてママはみんなと違うの?」と娘に聞かれたロバートが、自分も体が小さくていじめられた過去を思い出し「人と違うことは悪いことではないんだよ」と娘に伝えるために即興で作った物語なのだとか。つまり、ダイバーシティの話だったのである。
看病でお金も乏しかったロバートはこの物語を手作りの絵本にして娘に渡そうとするのだが、本の完成を待たずに妻は亡くなってしまったというエピソードが残っている。
いじめの話でもあり
自己肯定感の話でもあり
ダイバーシティの話でもあり
看取りの話でもある
歌詞から、「人の(トナカイだけど)存在価値は、役に立つかどうかで決まるのか?」と連想したのだが、少なくとも作者がこめた祈りは真逆だったと知る。
知るのって、面白くて、怖い。後戻りできない。
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