
理想と現実と再び理想【さとゆみの今日もコレカラ/第 103 回】
この週末、2日間で 18 時間。みっちり集中して書くことを学ぶライティング道場を開催している。
昨夜1日目を終え懇親会をしたら、私の半分の年齢の参加者さんが、「いろんな人の考え方を伝えられるライターになりたい」とまっすぐに話していた。この仕事に可能性や希望を持って飛び込んでくる若い人たちに、「うん、めちゃくちゃいい仕事だよ」と伝える言葉が嘘がないようでありたいと思う。
いろんな人の考え方を伝えられるようになるには、情熱だけではなく、技術がいる。
2年前、あるロシア人の女性からとても大事な言葉を預かった。ロシアの商品の不買運動が始まり、ロシア料理の店に石が投げ込まれるような時期のことだった。
私は彼女に「今、聞いた話を書いてもいい?」と聞き、その人は「ぜひ書いてください。世界が分断されることを私は望んでいません」と言った。
タイミングを逃せない原稿だったから、すぐに執筆にとりかかった。これ以上ないくらい集中して書いた。けれども、仕上がった原稿は私が「こう書けるはず」と思った理想には全然届かなかった。リミットがきたので泣く泣く手放したけれど、納品したあと、悔しくて情けなくて布団の中で泣いた。
私にもっと書く力があったら。
たとえばこの話を預かったのが吉本ばななさんだったら、角田光代さんだったら。世界は変わったかもしれないのに、なんで私にはその筆力がないんだ。
これまで「ライターやるのに必要なのは、筆力だけじゃないんですよ」などと言って、書く技術を伸ばすことをサボってきた自分を殴りたかった。こんな大切な話を預けてくれた人にどう顔向けすれば良いのかわからなかった。
私がもう一度真剣に、上手くならなきゃと思ったのは、その日だ。こんなんじゃダメだ。また絶対に誰かをがっかりさせる。そんなの、もう嫌だ。
自分のホームページを見ると、
「書きたい人を書ける人に」
というコピーがある。
「いろんな人の考え方を伝えられるライターになりたい」と私が最も切に思っている。そう思っている人たちと今日もがっぶり取っ組み合ってきたいと思う
____________________
【この記事がおすすめ】
そのとき、「You are our hope(あなたたちは、私たちの希望なんだ)」と言ってくれた人がいたんです。彼は、空爆で奥さんと赤ちゃんを亡くされて、片足も失っていました。それでも、私たちのことを「希望」だと言ってくれたのです。


