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一番最初【さとゆみの今日もコレカラ/第178 回】

「一番」も「最」も、ともに「いちばん」を指すので、「一番最初」は重複表現です。腹痛が痛い、みたいなやつね。

と、今月だけで2回原稿に赤字を入れた。入れたのだけれど、「一番最初」と書きたい心持ちは非常によくわかる。なにであれ、初めてのことは深く心に残る。そして一度きりしかない。一番だし最初だしと書きたくなる気持ちにもなる。

誰の小説だったかエッセイだったか、「初めて演劇を観る人を誘うときはとても緊張する。最初の体験が良いかどうかで、その人がそのあとも演劇を観ようと思うかどうかが決まるから」という表現があった。

私が東京で初めて観た演劇は三谷幸喜さん率いる東京サンシャインボーイズの解散公演の「罠」で、主演は西村雅彦さんと宮地雅子さんだった。

「ジャンボ!」

「へがっぱ!」

の2言で始まるこの演劇は、最初の4文字で観客がどっと湧き、次の4文字で椅子が揺れた。大人数の爆笑は会場を揺らすのだと知った。閉演まで怒涛だった。感情曲線が上にも下にも振り切れるほど乱高下した。東京、やべえよ。すごいところにきちゃったよ、と興奮した。

その後の学生時代は、バイト代のほとんどを演劇に費やした。その後も素晴らしい舞台をたくさん観たけれど、「一番最初」のこの公演のときほど鳥肌が立った経験はない。初めてのライブ。初めてのデート。初めてのプレゼント。初めての会社勤め。初めての上司。初めての……。どんな人の心の中にも、がしっと痕が残る「初めて」がある。

先日のトークイベント、「子どもが生まれてから初めて夜の外出をしました」と言って来てくださった方がいた。

人生で初めて、講演会に参加しましたと言ってくれた中学生もいた。

「コロナ後、初の県外移動です」と私のセミナーに来てくれた 70 代の方がいた。

自分でお金を払って勉強をする経験は初めてですという人もいる。

どの会場にもきっとそんな、「初めて」の人がいる。

私にとって 100 回目の講演でも 1000 回目のセミナーでも、誰かの「一番最初」であることを考えるとわくわくする。

今日は、福岡です。初めての方々にお会いできるのが、楽しみ。

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