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白髪と抜け毛とマリー・アントワネット【さとゆみの今日もコレカラ/第 193 回】

フランス革命で処刑されることとなったマリー・アントワネットは、そのストレスから一晩で白髪になったと言われている。

先日、あれって本当? と聞かれたので、いやありえない。少なくとも一度生えた毛に関してはメカニズム的に途中で色が変わることはないと答えたのだけれど、気になって調べ直してみたら、2020 年の Nature にハーバード大学の研究チームによる Solving a biological puzzle: How stress causes gray hair とする論文が発表されていて、過度なストレスによって分泌されるノルアドレナリンは急速に色素再生幹細胞を活性化させ枯渇すると書かれていた。

つまり、一晩で白髪になるかはともかく、急激なストレスは色素生産工場を爆速で働かせ、その結果、その色付け工場を破壊することがわかったのだという。

マリー・アントワネットは、処刑される時はショートヘアだったと言われる。牢に入れられてから処刑まで2ヶ月あったそうだから、その間に生えた新生毛に関しては、色素再生幹細胞が機能しなかった可能性はあるだろう。あながち、都市伝説ではなかったのかもしれない。

この研究チームを率いた博士は、「ストレスによる有害な影響は、私の想像以上だった」と語っていて、身体のメカニズムって面白いな、と思った。

20 代の頃、会社勤めをしていたときに全頭に7箇所ほどハゲができたことがある。サイズはまちまちで1円から 500 円サイズまで。ストレスによる円形脱毛症と言われ、ストレスを受けている自覚が全くなかったから驚いた。 1年弱、何をしても治らなかったのだけれど、会社を辞めたら全てのハゲから一斉に毛が生えてきた。徐々に生えてきたのではない。最終出社日に送別会をしてもらい、24 時頃帰宅して、朝起きたら全てのハゲから雨後の筍のように毛がジョリっと生えていた。会社を辞めてストレスがなくなったという自覚もなかったのでやはり驚いたが、身体というのはかくも正直なモノなのだと感心した。

ライターになった時、髪が抜けるようなことがあったら絶対に仕事をやめようと思っていたけれど、24 年間ふさふさだ。

昨年、美容院でカラーリングをしたら、さとゆみさんて今は白髪がほぼないんですけれど、40 歳の頃は僕、がっつり白髪染めを使っていたんですよ、と言われた。うん、知ってる、と答えたら「一度白髪になった毛母細胞が黒髪を生成するって、毛髪科学的にはありえないんですけれどねぇ」と言われた。私の白髪生成がストップしたタイミングを教えてもらったら、完全に離婚のタイミングだった。うむ。

白髪と抜け毛とマリー・アントワネット。それぞれにささやかな教訓のある話である。

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