検索
SHARE

ヒラギノ明朝 ProN【さとゆみの今日もコレカラ/002】

新聞社には、紙面のレイアウトに合わせ 12 文字で自動的に改行する執筆ソフトがあるそうだ。『三行で撃つ』の著者、朝日新聞の近藤康太郎さんが教えてくださった。ただし、近藤さん自身はそのソフトは使わないと言う。曰く「そんなにせせこましい画面で、でかい世界が見えるか? 窮屈な場所で書くからグルーヴしないんだよ」と。

その話を聞いた次の日、私はライター仲間のちえみとパソコンを並べ原稿を書いていた。「ねえ、ちえみって、原稿は何で書いてるの?」と聞くと、「書籍や Web はスクリブナーで。雑誌はワードです」と言うので、フォントは?と重ねたら「エッセイはゴシック系で、インタビューなら時々、明朝」と言う。え? 書くものによってフォント変えるんだと驚いたら、「明朝って、なんかいい感じのニュアンス出ちゃうじゃないですか。ゴシックなら誤魔化せない気がして」とおっしゃる。

「さとゆみさんは?」と聞き返されたので、ヒラギノ明朝 ProN の 11 ポイントと答える。2000 年のスピーチで、ジョブズが画面いっぱいに「愛」の字を拡大し、cool と評した書体だ。自分の文章も人からもらう原稿も、すべてこれに変換する。A4に 40 文字×36 行。毎度同じフォント同じサイズで書き、読むと、「詰まりすぎだな」とか「論理が飛んでる」に気づく。CORECOLOR メンバーの原稿の誤字脱字も、変換した瞬間に気づくことが多い。

「私、最近、17 ポイントくらいで原稿書いてますよ」とちえみがまたびっくりすることを言う。「文字が大きいと、次々ページが進むから『書けてるー!』って気分になるんです」。

大きく振りかぶって、でかいことを書くのだと決める。そのためには、最初から最後まで見通せる広い画面が必要だ、と近藤さんは言う。「文章を書くとは、迷路を創ることである」。

ジェットコースターに読者を乗せて疾走したいと、ちえみは言う。落ちると思ったのに曲がる、進むと思ったところで落ちる。「見えないジェットコースターを建てるんです」。

ぜんぜん違って、同じだね。

writer