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サヨナラだけが人生さ【さとゆみの今日もコレカラ/第 71 回】

文房具売り場でペンの試し書きをするとき、何を書きますか?

私の観察によると、英語の小文字の L を繋げたような試し書きが一番多くて、次いで直線と波線が多い。文字だと、あいうえおが多くて、12345と書く派閥もある。「永」の字も時々みるのは習字の影響か。万年筆コーナーだと、佐藤とか鈴木とか、苗字が増える。一度、綾小路を見たことがある。

表参道に文房具カフェというカフェがあって、近くに住んでいたときはときどき通った。

そこで一度、「サヨナラだけが人生さ」という試し書きを見て、笑ってしまっ た。右肩上がりのちょっとクセのある字で、少し神経質そうな雰囲気を漂わせている。どんな人が表参道の文房具カフェでボールペンを試し書きして、サヨナラだけが人生さ、と書くことになったのか、気になって仕方ない。男性だろうか、女性だろうか。井伏鱒二か林芙美子が好きな人だろうか。私はその横に「人生足別離」と書き足して、店を出た。今思えば鼻につく書き足し

だ。次に行ったときにはもう、その試し書きは捨てられ別の紙になっていた。

ところが先日、10 年越しに、その文字と再会した。京都の街を歩いているとき、ふらり入った雑貨屋に、またあの文字を見つけたのだ。「サヨナラだけが人生さ」。ドキッとして、つい周りをきょろきょろ見渡してしまった。もちろん確信はない。でも、ちょっと拗ねたような、右肩上がり。アナタハ京都ニスムヒトデスカ?

サヨナラだけが、の下あたりに、「文房具カフェでお会いしましたね」と書いて店を出た。

こんな令和の時代に、伝書鳩よりも不確実なラブレター。きゅん。

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「ひろせすず」で「嫁」という文字を創作したこともあります。

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