
自分の顔は好きですか?【さとゆみの今日もコレカラ/第292回】
美川憲一さんから、高級化粧品一式をいただいたことがある。
ファッション誌のライターをしていたころのことだ。
大学生向けの雑誌で「人生の先輩に学ぶビューティー」企画を担当した。巻頭ビジュアルは美川憲一さんと小柳ルミ子さんだった。ひょえーと思いながら、アポをとった。
その撮影現場で普段の肌のお手入れ法から、ヘアケアへのこだわり、健康に対しての意識、よくつかう美容アイテムなどを取材させていただいていたら、突然、「ねえ、あなた、自分の顔が好きでしょ」と言われた。
へっ?と聞き返すと、「あなた、全然美人じゃないけれど、いい顔してるわよ。そういう人って、自分のことが好きなのよね」と、言われた。
自分の顔……。
どうだろう。「お前は器量が悪いのだから」と言われて育ち、美人ばかりのテニスサークルで「戦闘要員枠」と言われ、就職した先では「おばちゃん」というあだ名で呼ばれていたくらい老け顔だった。
でもまあ、そんな自分の顔が嫌いだったかというと、たしかにそうでもなかったかもしれない。
「そういうのって、顔に出るのよ」と、美川さんは言った。
だけど、いつまでもそのままじゃダメ。もうちょっとお手入れしてあげなさい。今日もすっぴんでしょ?私が使っている化粧品をあげるから、それでしばらくケアしてみなさい。そう言われて、住所を聞かれた。
後日、本当に美川さんからスキンケア用品が送られてきた。調べてみたら、総額10万円くらいの高級品だった。
あれはいったい、何だったのだろう。
多分、美川さんが言ってらしたのは「自己肯定感」のようなものだったような気がする。
あれからかれこれ、20年経つ。相変わらずスキンケアは苦手だ。夏になると、どんなに気をつけていても、小麦色というより土色くらいに日焼けしてしまう。
だけど、こんがり仕上がった自分を、悪くないなと思う。シワが増えてきた顔も、そんなに嫌いじゃない。ときどき、美川さんのことを思い出す。
もらった化粧品はうまく使いこなせなかったけれど、もらった言葉は今も案外拠り所になっている。
✳︎「今日もコレカラ」は毎朝7時に更新し、24時間で消滅します。今日もこれから良い一日を。
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