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ライター生命が尽きた(と思った)日。【さとゆみの今日もコレカラ/第389回】

今日、この後7時半からX(Twitter)のスペースでトークをする予定の塚田智恵美さんの原稿に、「あ、終わった」という言葉が登場するシーンがある。

あるスポーツ選手に「モチベーションが下がったときにどうするか」というテーマで話を聞きに行ったら、「モチベーションが下がったことはない」と言われてしまったという場面だ。

「あ、終わった」。

その瞬間、ヒヨコのライター生命は尽きた(と思った)。

ヒヨコの「まぐれ」と取材における「問い」【連載・欲深くてすみません。/第3回】https://corecolor.jp/3957

塚田さんもわたしも、もうヒヨコではないので、こういった取材からどうやってリカバリーするかの打ち手もいくつか蓄えてきたと思う。

わたしだったら多分、モチベーションが下がったことがないことを面白がって話を聞くと思う。モチベーション下がる人たちのことをどう思いますか? と聞くかなあ、と、この原稿をもらったときに思った。

塚田さんがこのときにどうしたかは、ぜひ本文を読んでくださいね。

どんなにベテランになっても、ヒリヒリするような取材現場はある。それでも、振り返ればそこからどうにかこうにか、原稿のタネを見つけて現場から帰ってきた。その繰り返しで、ライターを続けている。

そんな私にとって、「あ、終わった」。私のライター生命は尽きたと思った瞬間は、実は去年のことだった。

私はいつも取材現場で録音を2つ回す。いわゆるテレコと言われるレコーダーで1つ。iPhoneの録音を1つ。これは過去に、インタビュー1時間まるっと録れていなかった経験を経て(超早口の宮台真司先生のインタビューだった)、必ず2つ音声を録っておくことを習慣づけていたからだ。

そして、私が「終わった。ライター生命、尽きた」と思ったのは、家に帰ってきて、さてその音声をパソコンに取り込もうと思ったときのことだ。レコーダーがどれだけバッグを探しても出てこなかったときのことだ。

血の気が引くってこれのことかと思った。指先がすーっと冷たくなって、歯がガチガチあたる音がきこえた。

ヤバイ。

ヤバすぎる。

なにがヤバイって、今日インタビューした方は、ある業界の大重鎮だった。そして「これはオフレコだよ」と言われながら聞いた業界のヤバい噂話が大量に録音されている。

万が一流出したら、文春に載る。

しかもそのレコーダーには、まだ消していないというか、数年前のある国民的アイドルの音声も残っている。

私は芸能界に疎いので、基本的にタレントさんの取材はお断りするのだけれど、「Aさんの取材であれば受けます(好きなので)」と公言していた人がいて、そのAさんの取材音声だった。

その内容を思い出す。そして、さらに血が引いていく。あれはもっとヤバい。「人生初のロング休暇」に入る直前だったAさんはとてもリラックスしていて、仕事以外のプライベートな話がわんさか出たのだった。マネージャーさんから「あれは書かないでくださいね」と言われた内容は、私も「これは絶対書いちゃダメだろう」とわかるくらいの、プライベートトークだった。

ライター生命終わった、と思った。

これまでこんなに一生懸命やってきたのに、こんな終わり方、あるかよと思った。

しかも、自分だけの問題ではない。大御所にもAさんにも大迷惑をかける。その取材をした媒体の編集者さんたちも巻き込むだろう。管理体制どうなってるんだと言われるだろう。

取材現場に戻って探した。警察にも届けた。編集者さんに連絡をしたら、その方もものすごく慌てていた。一縷の希望をかけてiPhoneのほうの音声を聞き直す。意外と流出しても大丈夫な話だった可能性はないかと、すがるような気持ちで聞いたのだけれど、ダメだ。これはやっぱりアウトだ。

そうして眠れない夜を過ごした次の日、レコーダーは、バッグの底から出てきた。あんなに探したのに、なぜ?

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かくして、私はライターを辞めずに済んだ。それ以降、レコーダーは使わないことにした。iPhoneだけで音声をとる。iPhoneであれば、万が一紛失してもロックをかければ中身は引き出せない。

ライター仲間にその話をすると、私は取材後すぐに現場の近くのカフェに入ってパソコンに落としたら、音声はすぐに消去しますと言われた。

私、今までどんだけ無防備だったのだ、と思った。

この出来事は、神様が私の無防備具合を見かねて「そのままでは、ライター業を続けられなくなる日がくるよ」と警告してくれたのだと思っている

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なぜ今日このことを書いたかというと、塚田さんとトークをするからという理由もあるけれど、CLOVA Noteのベータ版がもうすぐ終了すると聞いたからだ。フリープランの場合、2025年以降はデータを機械学習に利用されるという(有料版は大丈夫)。

みなさん、かつての私のように、ライター人生が尽きないように気をつけてね。

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