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ライターの原稿が「AIのテープ起こしそのままだった」件【今日もコレカラ/第956回】

ライターになって26年経つのだが、先日初めての分野で研究者の方にインタビューをすることになった。

前日まで、その方の著作を読んだり、論文を読んだり、動画を見たりして、勉強した。
わからない用語だらけなので、手元に用語集も作った。つまり、カンペだ。

朝早くの取材だったので、万が一にも寝坊しないように。前日は22時には寝た。アラームを5個くらいかけて、約束の時間の20分前にZoomに入ってスタンバイした。

一人待機しながらzoomの画面に映る自分の顔を見ていたら、前髪が長いなと思って、自分でハサミを出してきて前髪を切った。
私はヘアスタイルの専門ライターだったので、顔の印象を決める前髪を自分で切るなんて絶対にしちゃダメと原稿には書くのだけれど、どうにもこうにも目にかかる髪が気になって、人生で初めて自分で前髪を切った。

私、気合、入ってるなぁと、鏡を見ながらちょっと笑けてくる。
こんな緊張感久しぶりでとても気持ちが良い。

事前に大筋の質問リストは考えていたのだけれど、実際に話を聞くと、次から次へと質問が頭に浮かぶ。
第一人者の方から、現在の最先端研究について話を聞くのは、とことん驚きの連続だ。本当に楽しい時間だった。前髪を切った甲斐もあった(違

さて。取材が終わった日から、どんなふうに原稿にするか、書き出しは何から始めるか、あの日からずっと考えている。

もちろん、質問した順番に原稿を書くわけではない。

文字数にもよるけれど、インタビュー原稿は一度話をバラバラに分解して、エッセイを書く時のようにゼロベースで書く。
私の場合、取材音声を聞き直し、原稿に入れたいキーワードだけをメモして、そのまま何も見ずに書くことが多い。
もちろんテープ起こしはするけれど、それは確認に使う程度で、テープ起こしをもとに文章を書くことはない。

ちなみに、凄腕で有名なあるライターさんは、テープを起こしから鍵になる単語を20個か30個残して、残りは全部消去すると言っていた。
そうすることによって、元々の発話のニュアンスに引っ張られずに、日本語として一番読みやすい文章にできるからという。
単語だけを元にしてゼロから書くところは、私も同じだ。

友人のAちゃんに、中学生の息子に、78歳のお母ちゃんにこの話を伝えるとしたら、何から話そうか。そんなふうに考えて、話の順番を決める。

ところで、先日、Twitter(現X)で、ライターの原稿に関するポストが、ずいぶんと話題になっていた。

「先日のインタビューを原稿にしたので確認してください」と言われ、原稿を読んでみたら、録音をAIで文字起こししただけの文章だった。こっちは抑揚や間を使いながらインタビューにこたえていたのに、まったくそれは考慮されず、誤字だらけ、変換や接続詞もめちゃくちゃな原稿がきて正直残念すぎた…

https://x.com/toshitaka_szk/status/2089610055536853097?s=20

『僕には鳥の言葉がわかる』を書かれた鈴木俊貴先生のポストだ。

これを読んだ時、そんなライター存在するのか! と驚いたし、それ以上に、そんな原稿をインタビュー相手にチェックに回してよいと判断した編集者がいることにびっくりした。
が、一方で、あり得ない話でもないかもと思った。

たとえば、私のゼミの課題でインタビュー音源から原稿を書く課題を出すと、初回はまあまあの割合でテープおこしをまとめたような原稿があがってくる。
さすがに、誤字だらけということはないけれど、音源を忠実に再現しようとしている原稿もある。


「原稿を書くというのは、日本語を日本語にわかりやすく翻訳するということですよ」
「話し言葉を書き言葉に変え、論理展開を整え、ストーリーテリングしてね」
と伝えると、驚く人もいる。
「逐語的に伝えなきゃいけないと思っていた」
と言うのだ。

よく考えると、私もインタビュー原稿を初めて書いたときは、そう思っていた気がする。その人の言葉づかいのクセをそのまま使わないといけないと思っていた。
でも、編集者さんに、「それは、単なるテープ起こしです」と言われ、なるほど! と納得したのだ。

私だって、教えてくれる編集者さんがいなければ、テープ起こしを綺麗に整えることを「原稿を書くこと」だと勘違いしたかもしれない。

今は当たり前のようにやっているインタビュー原稿だけれど、自分が初心者のときに躓いたことは、忘れないようにしなきゃなあと思った次第。

この話については、いろんな編集者さんや著者さんと意見交換をしたので、また書く。

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