
世界で一番日本語に厳しい人たちの世界を覗いてきた【さとゆみの今日もコレカラ/第505回】
私は、「ライターの仕事は、日本語を日本語に翻訳する仕事」だと思っている。
日本語は「話し言葉」と「書き言葉」がかなり遠いタイプの言語だ。
誰かの音声を録音してそれをテープ起こししただけでは、何を言っているのか全然わからないことが多い。講演録ですら、相当手を入れないと、読めたものにならない。話せるからといって書けるとは限らないのが日本語なのだ。
その日本語を日本語として読めるものに翻訳するのが、ライターの仕事だと考えている。
でも、 “本物” の翻訳家の方の仕事ぶりは、私たちライターの比ではないほど、日本語に対して厳格であり、ストイックである。
たった一言のワードを訳すために、一日中調べ物をすることもあると聞く。
そして、面白いのは、例えば英語を日本語に翻訳する人の場合。
鍛えるべきは圧倒的に「日本語」のほうなのだという。
翻訳本を何冊も担当し、翻訳家の人たちとの交流も多い編集者のりり子さんが、先日こんなことを言っていた。
今度、翻訳勉強会に出るんだけども、そこでやることは徹底的に日本語の文章力を磨く訓練なのがおもしろいなと思ってる。
英文のエッセイ(原稿用紙にしたらたぶん2枚程度)の中から300ワードほどを抽出して、その日本語の書き分けをみっちり10時間やるの。英文の意味を全員が等しく理解したうえで、日本語でどう書き分けるかを訓練するんだって。
話を聞いてると、英語がまったくわからなくてもできるトレーニング(つまり日本語のトレーニング)で、それがおもしろいなあと思った。
りり子さんは、手話翻訳家の人たちの間では、「日本語を日本語に翻訳するトレーニング」も取り入れているらしいよとも教えてくれた。
書籍ライターになったとき、ベテランのライターさんから「日本語を鍛えるために、翻訳書をたくさん読みなさい」と言われた。翻訳家の人たちほど、日本語と真剣に向き合っている仕事はない。ライターの仕事が恥ずかしくなるほどだ、とも言われた。
今回、りり子さんが、翻訳家・村井理子さんの書籍を担当した。
その書籍『エヴリシング・ワークス・アウト 訳して、書いて、楽しんで』を読ませてもらって、のけぞった。
ここまでか!! 翻訳家の人たちは、ここまでするのか!!! となったからだ。
興奮しまくった私は、りり子さんに「村井さんのインタビューをさせていただけないでしょうか」とお願いした。
かくて昨年末。
滋賀県にある村井理子さんの仕事場にお邪魔して、ロングインタビューをさせていただいた。
村井さんは、翻訳家だけではなく、エッセイストとしても活躍されている。
翻訳とエッセイ、その脳の使い方の違い。
翻訳家に共通する気質。
日本語への取っ組み合い方。
仕事に向き合うモチベーションの保ち方。
長く仕事を続けるための工夫。
業界のトップランナーの方の言葉は、どれもこれもビビッドで、興奮しまくりの2時間のインタビューを、ライター仲間のまいちゃんがまとめてくれました。
「ピンチに書ける。悔しいと書ける。イラっとすると書ける」 翻訳家・エッセイスト 村井理子さんが語る、文章との取っ組み合い方
村井さんのファンの方も、翻訳に興味ある人も、エッセイに興味ある人も、そしてライターのみなさんも、ぜひ、読んでほしい! です!
「今日もコレカラ」は、毎朝7時に更新して、24時間で消える文章です。今日もコレカラ、良い一日を。


