
初・体・験【さとゆみの今日もコレカラ/第528回】
先日、ある映画に誘ってもらった。
日本初の「観客の投票によって内容が変わる」映画だという。
その日、私はイーロン・マスク本の担当編集さんと翻訳者さんが語る「最近のイーロンどうした?」的なトークイベントに参加する予定だった。
のだけれど、そちらはアーカイブで見ることにして、急遽友人の誘いのほうにジョインした。
映画『ヒプノシスマイク』。これが、なんというか、本当に得難い経験でありんした。まあ、ちょっと聞いてくれ。
映画自体は、アニメによるラップバトルだ。
武力ではなく、言葉で世の中を制する時代に「ヒプノシスマイク」という言葉の力を増幅するマイクが登場する。ラップにのせたリリックが、直接人の交感神経に作用するという設定。
映画館では、世界の頂点に立とうとする6チームのラップバトルを聴き、気に入ったほうに専用アプリで投票する。観客の投票を受け、ストーリーは48ルート。エンディングだけでも7パターンのエンディングがあるという。
上映開始から1ヶ月半も経っているというのに、映画館はみっちみちだった。発声OKの回だったので、1曲ごとにサイネージで応援する人たち、拍手で応援する人たちがいる。
友人が「多分、この会場で今日初見なのは、さとゆみくらいだよ」と教えてくれる。投票によってストーリーが変わるから、何度も足を運ぶ人たちがいるのだという。ほぼファンミーティングである。
かくいうその友人も、この日、3回目の鑑賞だという。映画が終わったあと、あの曲ほ今日初めて聴けたなどと話してくれた。
もとをたどれば、7年前。『ヒプノシスマイク』は音楽から始まったプロジェクトだったらしい。
ホームページには音楽原作キャラクターラッププロジェクトとある。6チーム18人のキャラクターが立っていて、それぞれに人気の声優さんたちが歌うCDが発売されている。
(出典:映画「ヒプノシスマイク」公式サイト)
もちろん、声優の彼らはプロのラッパーではない。ただ、友人いわく「もともと異常に滑舌がいい声優という職業にラップをさせるという目のつけどころが凄かった」とのこと。また、キングレコードが母体のプロジェクトなので、楽曲提供している製作陣が凄腕ばかりなのだという。
面白かったのは、ファンはおおむね「声優さんのファン」ではなく「キャラのファン」だということ。CDが発売されるたびにつくキャラのストーリーや、漫画化された物語を読んで、キャラにファンがついているのだそう。
映画館ごとに、渋谷出身のキャラが勝ちやすい映画館、横浜出身のキャラが勝ちやすい映画館などあるそうで、関西で見ると関西出身のキャラが勝ち上がるケースが多いのだとか。
何の情報もなく見た私でさえも、2時間弱の映画の中で18人のキャラが把握できるほどのキャラ立ちだった。
・ファンベースの考え方としても
・映画の新しいビジネスモデルとしても(普通の映画よりも割高である)
・インタラクティブなエンタメのケースとしても
・キャラクター開発の妙としても
・映画における言葉(歌詞)の見せ方の手法としても
ひっじょーーーーに、面白い体験だった。
「日本初の現場に立ち会っている」感があった。
きっと何年か後、「そういえば、あれが最初だったよねえ」なんて言い合う日がくるんだろうな。
ねえさん、サハール、お誘いありがとうございました。
「今日もコレカラ」は、毎朝7時に更新して、24時間で消える文章です。今日もコレカラ、良い一日を。
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