「アニメと声優」徹底分析（後編）【運ちゃんのウィキペディアのおかげです／第22回】
長年ウィキペディアを眺め、寄稿し続けた運ちゃんが、ウィキペディア日本版のページビュー（以下PV）を分析します。前回に続き、ウィキペディアを使って「アニメと声優」について考察する後編です。
前編の「アニメ」編では、ウィキペディアで最も閲覧されているのは人以外では「アニメ」でその数はドラマより多いこと。アニメ作品とドラマ作品との比較。実際の作品名での多言語展開やページの分裂・増加などからアニメ作品への興味関心が世間で高いことなどを分析しました。後編はウィキペディアでも検索されることが多い職業「声優」を中心に考察します。
サッカー選手の２倍。閲覧数が多い「声優」
月間10万PV超えのページ（＊１）を区分し大きく２種類にわけた「人以外」の4591ページのうち、今回は「人物（グループ含む）」6126ページをカテゴリ分けした大分類の表をみていきたいと思います。
＊１・・・月間10万PV超えのウィキペディア日本語版：１万717ページを必ず１つのカテゴリに分類（カテゴリ数は200以上）／集計期間は2015年７月から2024年２月までの104か月（過去８年８か月）
月間10万PV超えのウィキペディアでよく閲覧される「人物のページ」は役者が1426人と最も多く、続いてスポーツ選手、ミュージシャンと続きます。「声優」は約５％の287人で、この閲覧数の多さに私はびっくりしました。スポーツでは野球に続き２番目に人数の多いサッカー選手（144人）の約２倍です。お笑い芸人や政治家よりちょっと少ない人数。まさかアナウンサーよりも声優の方が100人以上多いとは！
ここで2023年の声優年間PVランキングをみてみましょう。
「声優」PV年間ランキング
前年より95万PV増えている１位の宮野真守さんや４位の木村昴さんはテレビのバラエティ番組・情報番組でも活躍しているのでご存知の方も多いのではないでしょうか。
宮野真守さんは2017年から出演している星野源さんの音楽トーク番組『おげんさんといっしょ』メンバーとして、2018年と2019年のNHK紅白歌合戦に出演。2023年にはTBS『A-Studio＋』や日本テレビ『おしゃれクリップ』など数多くのトーク番組にも出演、日本テレビ『ぐるぐるナインティナイン』「ゴチになります」に毎週レギュラー出演しました。
木村昴さんは、2020年からテレビ東京『おはスタ』のメインMCを担当、日本テレビ『ヒルナンデス!』のレギュラー出演、TBS『アッコにおまかせ!』にも定期的に出演しています。2023年10月に結婚した種﨑敦美さんはその発表日１日のPVは12.7万PVと注目度も大きく、このようなライフステージが変わるタイミングもPVに影響があるでしょう。
２位の津田健次郎さんは2023年に、６位の花澤香菜さんは2022年にTBS系『情熱大陸』に出演していました。
配役発表のタイミングも、声優にとってはPV増の大きな理由です。悠木碧さんの2023年の１日最大PV日（1.3万PV／２月16日 木曜）は、小説『薬屋のひとりごと』のテレビアニメ化で猫猫役を担当するとの報道があった日です。高橋李依さんの１日最大PV日（0.9万PV／４月15日 土曜）は、2023年の話題作の一つ『【推しの子】』（アイを担当）初回放送日でした。
また年間ランキングTOP24には『【推しの子】』以外にも2022年に最も閲覧されたアニメページでもある『SPY×FAMILY」や、前編で紹介した2023年にPVが多かった『呪術廻戦』『葬送のフリーレン』『鬼滅の刃』『東京卍リベンジャーズ』『薬屋のひとりごと』のすべての作品からランクインしています。
つまり、その年の人気作品と担当声優のPVは相関関係があると言えるようです。
声優のテレビバラエティー番組やトーク番組の出演もPVに影響が出ます。
佐倉綾音さんの2023年の１日最大PV日（4.5万PV／１月22日 日曜）は、女優の浜辺美波さんが日本テレビ『おしゃれクリップ』に出演する際に親友としてサプライズ登場した日でした。
花澤香菜さんの１日最大PV日（2.4万PV／３月７日 火曜）は、フジテレビ『ぽかぽか』に１位の宮野真守さんと共に出演した日でした。
続いて24位までです。
2023年の話題作『【推しの子】』に出演した声優の中から、石見舞菜香さんが13位、潘めぐみさんが15位、大塚剛央さんが21位にランクインしています。石見舞菜香さん・潘めぐみさんは前年比でPVが約２倍、大塚剛央さんは前年比の約７倍と大きく増えています。
2023年のテレビアニメ出演数は、24位の神谷浩史さんは７作品（メインは６作品）、13位の石見舞菜香さんは31作品（メインは10作品）と、多い方だとテレビのアニメ番組だけでも年間30作品以上に出演しています。ウィキペディアページのPV増の理由として出演する作品数の多さも１つの要因になっています。
また前編に続いて今回も、多言語版に関する調査も実施しました。
小林千晃さんと大塚剛央さんが共に一桁でしたが、他の方々は皆さん10か国語以上に翻訳されているようです。アニメのグローバル化と同様に、声優もグローバル化が進んでいるようです。
主な声優のウィキペディア１日最大PV
今までは年間PVのランキングをみてきましたが、ここでは１日のPVが急増した主なものの理由をまとめました。訃報があった場合PVは増えるのですが、この表では亡くなった方のPV増は除外しています。
人気声優同士の結婚は４組あり、結婚報道が多くを占めました。
そして１位はやはり皆さんが気になる配役で、27年ぶりに『クレヨンしんちゃん』しんのすけ役を引き継いだ小林由美子さんでした。小林由美子さんの2015年７月から2023年12月までの１日の平均は985PVですから、たった１日で約700倍のPVを集めたことになります。
今月『ちびまる子ちゃん』で、主人公「まる子」の声を34年間担当していたTARAKO（63歳没）さんがお亡くなりになりました。新たな「まる子」を誰が担当するかの配役も、注目されるでしょう。
TOP声優200人のプロファイル
ウィキペディアPVで昨年多かった声優200人のプロファイルを確認してみましょう。声優という職業についてもっと知りたく、PVランキング200位までの方についてまとめました。（＊２）
＊２・・・独自選抜した計799人（2015年７月から2024年２月までの期間に、一度でも月間10万PV超えたことがある声優287人を含む）の中から、2023年１年間のPV上位200人のデータを集計。
声優のTOP100平均年齢は日本人の年齢中央値より約4〜5歳若く、女性声優の方が20人多いという結果でした。
声優TOP200のプロファイルで注目した点は下記の２つです。
①声優事務所をつくった人が多い（独立した35人中10人）。
現在でもオーディションで仕事が決まることが多い声優。大手プロダクションに所属しているメリットは、一般的な芸能プロダクションより大きいのかもしれません。独立した35人中10人が個人事務所ではなく複数人の事務所になっていることも、特徴です。
②南関東の出身者が多い（過半数超え）。
南関東（東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県）で107人と過半数を占めます。日本の人口比では、東京は約11%、神奈川・埼玉・千葉の３県で約18%ですから、この１都３県の出身者が飛び抜けて多いとわかります。名古屋（愛知県）も人口比の約２倍で、関西は人口比とほぼ変わらずという結果でした。もしかして声優は都会的な仕事だと言えるのかもしれません。
今月のTBS系『日曜日の初耳学』の「インタビュアー林修」で津田健次郎さんが、まるまる１時間ゲスト出演している番組が放送されました。年末年始でチェコのプラハに１週間プライベートで旅行に行った際、５人の現地の方から写真撮影やサインなどを求める声がけがあったと話されていました。もしかすると私たちが思っているより早く声優のグローバル化は進んでいるのかもしれません。
ウィキペディアページがどう多言語化され、「アニメ」や「声優」の情報がどのように広がり、何で人気があるのかなども含め、引き続きしっかりとウォッチしていきたいと思います。
今回、改めて声優という職業は静止画から命を吹き込み動画に変える魔法の職業だと実感しました。私は高等学校で情報学の授業を担当していたことがあります。文章で「大嫌い」と伝える場合は当然、文字通りの意味となります。しかし動画の場合は同じ「大嫌い」というセリフが、「愛している」という意味になる場合もあるということを「映像制作」を通して体験してもらうことを行っていました。声により、セリフと正反対の意味を伝えることができる魔法の職業、声優。素敵な職業ですね。
もしかしたら我が家の未就学児に将来、声優になることを薦めてしまうかもしれません。だって、野沢雅子さん（87歳）は『ドラゴンボール』孫悟空役を37年間、そして今年の新作も担当することを知ったからです。加藤みどりさん（84歳）も現役で『サザエさん』のフグ田サザエ役を55年間担当しています。80代になっても働ける凄い職業「声優」！
リニューアル第１弾どうだったでしょうか。もしウィキペディアのPVを使って何か「はかりたいもの」のリクエストがあれば、是非教えてもらえると大変嬉しいです！ また次回！
本ランキングは、ウィキペディア日本語版のPVから、人物名・グループ名ではないもの、歴史上の人物（100年以上前に生まれ、既に亡くなっている人）、プライバシーに配慮が必要な人、不適切な言葉を削除し、100の位以下を切捨て表記して作成しています。
文／運ちゃん
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