
欲望と純粋の狭間で【今日もコレカラ/第729回】
昨日、ヘアケアについての撮影で取材を受けた。
その時、その場にいた方から「どうして数あるライター職の中で『ヘアライター』だったのですか?」と聞かれ、24年前、名刺に「ヘアライター」と刷ったときのことを思い出していた。
テレビの仕事を辞め、ライターになろうと思った時、そもそもファッション誌で書くことになるとは思ってもいなかった。私が書きたかったのはノンフィクションだったし、社会課題に切り込むような記事を書きたかった。スポーツライターの道も検討していた。
でも、大学のクラスメイトで編集者になっている友人を訪ねたとき、「アシスタントを探している売れっ子ライターさんがいるから紹介しようか?」と言われたことがきっかけで、ファッション誌で仕事をすることになった。
ファッションもメイクもダイエットも担当した。深夜のクラブ取材も1年連載担当した。真夏のH特集も書いたし、読者アンケートページも書いた。
そのなかで、私にとって一番楽しい仕事が「ヘアスタイルを変えて撮影をする」ページだった。
ヘアページの撮影には、他の現場にはない特徴がいくつかある。
①プロモデルがほとんど登場しないこと。
髪を切ったりカラーを入れたりしなきゃいけないヘアチェンジのページには、プロモデルがほとんど登場しない。読者モデルと言われる一般の女の子たちを街でハントして登場してもらうのが常だった。撮影現場が生まれて初めてという人も多かった。とくに私の撮影現場はリアルにその場でカットしてもらう仕事が多かったので、読者モデルの中でも新人さんが集まりやすかった。
プロにメイクをされ、髪をばっさりカットして、生まれ変わる女の子たち。メイクルームをこっそりのぞくと、みんな自分の変身ぶりに驚いて頬を上気させている。ガチガチに緊張している彼女たちを盛り上げて笑わせて撮影するのが本当に楽しかった。
もともと美しくて選ばれし100点満点のモデルさんを120点にしようとプロがよってたかって撮影する現場より、初めての撮影現場にドキドキしている一見普通の女の子が美容師さんの手でシンデレラになっていく現場に、私はどんどんハマっていった。
もうひとつ。ヘアページには、他のページでは考えられない特徴があった。
②メインの仕事をしてくれる美容師さんにお金が払われてないこと。
今はどうなのかわからないけれど、私がヘアライターをしていた15年間、撮影に協力してくれている美容師さんにはお金が払われていなかった。「お店にとっても宣伝になるのだから、無償で出てください」というのが業界のならわしだった。
当時はカリスマ美容師ブーム時代で、雑誌に写真が大きく1枚載ると、数百人のお客さんが殺到するような時代だった。だから、美容師さんたちも営業前や後の時間をなんとかやりくりして撮影に協力してくれていた。少しでも大きく紹介されるようにモデルハントし、最新のヘアを研究し、現場に臨んでくれていた。雑誌で活躍することが、そのままカリスマ美容師への登竜門だったから、断る人もいなかった。
その「ひと旗あげたい」美容師さんたちのギラギラの野心と、それを支える「女の子を可愛くしたい」というピュアな思いとのはざまで、私はいつも熱にあてられていた。
ここで私は「成り上がる」ためにやれることは全部する仕事人の姿を見た。私が仕事に強欲なのは、この時期、「一握りのカリスマ」になるためにありとあらゆる努力をする美容師さんたちを見たからだろうと思う。彼らの仕事を見ていたら「やれることはまだ全然ある」と思うようになった。今でも思う。
ファッション誌にはたくさんの企画があるし、ページがあるけれど、ヘアページほど物理的にも象徴的にも「人の人生を変える」ページはなかったと思う。
私自身も、ヘアページに人生を変えてもらった。今の私を作ってくれたのは、15年間のファッション誌での撮影現場だ。
なーんてことを思い出していた。
昨日の撮影もとっても楽しい現場でした。
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撮影現場についてさとゆみゼミの仲間、早川さんが書いてくれました。
さとゆみゼミ プロフィール撮影会
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