
話題の本屋さんにちょっとモヤっとした話【今日もコレカラ/第732回】
先日、友人と夕方から横浜美術館に行く約束をしたとき、「私、朝からみなとみらいのBUKATSUDOで仕事しているよ」と言われたので、「じゃあ、私も朝からそこで仕事する。夕方一緒に出よう」と答えたのに、なぜか高輪ゲートウェイのBUNKITSUに行っていた。
友達がなかなか来ないなあと思って連絡をとって、勘違いに気づいた。「BU」しか合ってないじゃないかと言われ、いや「TSUも合ってる! 惜しい!」と打ち返したら「全然惜しくない」と言われた。うん。惜しくない。
まあ、それはいいとして、高輪ゲートウェイのBUNKITSUさんは、オープンしたてのとき出版業界の人たちの間でだいぶ話題になっていた。
広さ1000坪超。こんなご時世に10万冊超の本が揃う滞在型の書店がオープンしたのだ。みんなこぞって足を運んでいた。そして、「自由で楽しい本屋」や「本の森」のキャッチコピーのとおり、あらゆるジャンルの本が並ぶ空間に心踊らせつつも、業界関係者ならではのモヤッとした気持ちをSNSで発信する人もいて、気になっていたのだ。
私は、というと、たしかにあらゆるジャンルの本が揃う空間に魅力を感じたけれど、やはり気になることも多かった。
館内は六本木や福岡の文喫さん同様、有料のスペースがあって、読書をしたり仕事をしたりできるようになっている。
このスペース、TSUTAYAさんのシェアラウンジ会員だとフリーで使えるので利用してみたけれど、これが、だいぶ残念な感じだった。
モニターもあるしweb会議室もあるのでビジネスユースも見越しているのだと思うけれど、とにかくデスクが狭い。奥行きが全然ないので、モニターを置いたら手前にパソコンを置けない。電源も圧倒的に足りない。読書であればいいと思うけれど、仕事ではちょっと使いにくい感じだった。
カフェの食事もいまどきフードコートでもこのレベルはないだろうという感じで、残念な感じ。
六本木の文喫さんが、広々としたデスク、いろんな用途に合わせたテーブルと椅子の配置、そこらのカフェより美味しい食事がウリなので、これにはちょっとびっくり。
もうひとつ。
これは私が書籍をつくる側なので気になるのかもしれないが、本の横積みがすごく気になった。誰かの家の本棚のように縦に並べた本の上に本が積まれている。
この雰囲気、たしかに無造作だから逆に気軽に本を手にとりやすい効果があるのかもしれない。実際、それを絶賛している利用者の声もあった。
だけど、あきらかに本が傷む。すでにカバーの上が折れている本もたくさんあった。そういう本を買いたいという気持ちになるだろうか。
これが図書館だったら全然気にならないと思う。むしろ、大量の本に囲まれる多幸感に包まれるだろう。でも、売り物の本だと考えると、ちょっと悲しい気持ちにもなる。
取次の日販さんが運営する書店さんなので、返本についてのリスクがないのだろうか? 全部買い切りとか? いや、そんなことは多分ないよなあとも考える。
と書きつつ、何十年も前に、本屋に椅子を置いて「どうぞご自由に読んでください」という書店さんがオープンしたとき、「本の立ち読みを推奨するなんて!」「知らない人が読んだ本を、誰が買うんだ?」と非難轟々だった過去を振り返ると、今回の取り組みもすんなり受け入れられていくのかもしれない。
あの頃、多くの人が「こんなのうまくいくはずがない」と言っていた滞在型書店は、むしろ増えている。
この業界のすみっこに身を置く一人として本に触れる人が一人でも増えてくれたら嬉しいと思う。
思う反面、折れ曲がった本のカバーのことを思って、ちょっとモヤっとした気持ちになりながら、横浜に向かった。
横浜に行くのになんで高輪で待ち合わせなのかなって思ったんだよなと考えながら。
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私は本屋で本を選んで、本屋で買う機会を失いたくない。さまざまな本が並ぶ本屋の中を回遊魚のように泳いでワクワクしたり、まだ読んでいない面白そうな本を見つけてテンションが上がったりするのが何より好きだから。


