あの人に取材されると「自分を好きになる」【今日もコレカラ/第1002回】
京都のフリーマガジン「ハンケイ500m」は、日本タウン誌・フリーペーパー大賞を受賞する媒体だ。
多様な価値観で生きている京都の人たちを特集するこの媒体、なんと、6年前、7年前に掲載されたお店のもとにも、お客様が訪れるのだという。
グルメやイベントスポットといった「情報」ではなく「人」にフォーカスした媒体だからこそだと思う。
「今・旬」だけではなく「この先もきっと変わらない、普遍的な価値」にフォーカスした取材だからこそだと思う。
先日、そのハンケイ500mの編集長・円城新子さんに講演をしていただいたのだ。
円城さんは「多様な価値観で幸せに生きている人」の生き方を紹介したい。そしてその生き方を知った人たちに「いろんな人生があっていいんだな」と思って欲しい。そういう強い信念で媒体を運営している。
たとえば、と、そのときに話してくれたのが、「仕込みが大好きな料理人」の話。
その方の店は、京都でも行列ができるほどの人気店なのだけれど、ご本人はとにかく「仕込みをしている時間」が一番好きで、可能な限り「仕込み」だけをして生きていきたくて、損益分岐点ギリギリまで店を開ける時間を短くしているのだそうだ。
もっと稼げるはずとか、もっと回転率を上げられるはずとは考えない。自分が一番幸せを感じる時間に人生を使う(つまりこの場合は「仕込み」)人がいるんだということを、ハンケイ500mはずっと伝え続けている。
そこでゼミメンバーから質問が上がった。
「そういう変わった価値観を持っている人はどうやって見つけるんですか? そして、それを取材でどうやって引き出すんですか?」
そう、それなのだ。
たとえば「自分は仕込みをしている時間が一番好きで」と取材で言われたとしても、「へええ、仕込みが好きなんですね」と相槌をうつだけでスルーしてしまいそうだ。
その話から「損益分岐点ギリギリまで仕込みたいくらい、仕込みが好きなのだ」まで聞き出すには、何か特殊なアンテナがいるような気がしてしまう。
私は円城さんの取材に立ち会ったことが一度あり、円城さんがパーソナリティを務めるラジオで話をさせていただいた経験も一度ある。
だからわかるのだけれど、円城さんは「人は、人それぞれに多様で、人それぞれに面白い」ということを、まったく疑っていない。まっすぐに信じている。
絶対に面白いはずなのだ、と思って取材をするから、その人のその人らしさを毎回聞き出すことができるのだ(そしてそれは必ず面白い)。
これは、宗教のようなものだと思う。
どういう宗教かというと、「人は多様であり、人それぞれに必ず面白い」を信じる宗教だ。
円城さんは講演の中で、「取材して原稿を書くと、取材相手の人に『自分を肯定された気がする』ってよく言われるんです」と話していた。
それはそうだと思う。こんな人に取材されたら、誰だって自分を肯定された気持ちになれるだろう。

私自身も、円城さんに指摘された言葉で、くいっと人生の扉を開いてもらったことが二度ある。
一度は
「CORECOLORって、書き手をエンパワーするメディアだね! そんなメディア、日本中どこにもないよ!」
と言ってくれたこと。この言葉が、今回のCORECOLORリニューアル後のタグライン「『書く』力を誰かのために、私のために」にも繋がっている。
そしてもうひとつは、
「好きな場所で好きな仕事をするために、バイトしてもいいんじゃない?」
と言われたこと。CORECOLORをマネタイズしないことに一切の迷いがなくなったのは、円城さんの言葉があったからだ。
今回、CORECOLORのサイトをリニューアルするにあたって、ひとつだけベンチマークしたサイトがあった。それが、Web版ハンケイ500mだ。
パッと見で、ハンケイさんはカラフルで、CORECOLORは新聞をイメージしたモノトーンなので雰囲気は違うのだけれど、これからも、「フォーカスした人が輝く」サイトにしていきたいなと思っている。
ところでいま、Web版ハンケイ500mを見たら、
毎年秋、客が長い行列をなす和菓子店。「『栗に聞いてください』としか言いようがありません」
というタイトルが目に入って、爆笑し、マジで、こういうとこだぞ! って思ってる。最高だ!
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「さとゆみさんは、勝ち組やね。そんなに大切なものがあるなんて、めっちゃ人生の勝ち組やわ。私、そういうおっちゃんやおばちゃんの話をいっぱい聞いて伝えたいねん」
- Writer
- #佐藤 友美