この地球で、我々はいつも宇宙人。2つの物語を目撃して。【今日もコレカラ/第1013回】
77歳のお母ちゃんと、15歳の息子と、映画「我々は宇宙人」を見に行った。
わずか72館のスタートから、口コミで広まり、インディーズの映画としては、異例の大ヒットとなっている作品だ。
上映が終わり、会場がすーっと明るくなったとき、その場にいた人たちがのろのろと立ち上がり、出口に向かいながら一斉に何かを口に出していた。
「すごかったねえ」
「なにあれ。ヤバかった」
「最後、くるわあ」
「こういうのだと思ってなかった」
「あれ、どういうことだったと思う?」
「ちょっとわからんかったな」
「いやでも、すごかったね」
……etc.
ひそひそとした声が重なり、小さな室内楽みたくなっている。
この映画の感想に、「自分の話をしたくなる」というものが多いらしいけれど、実際に映画を見てなるほどと思った。
子どもたちの物語は、完全に固有の物語だけれど、あの子ども時代独特の自分と他人の境界ルールがわからない感じは誰もが知っている。
地球に生まれてすぐのあの頃って、全員が宇宙人で、自分も宇宙人なのである。
物語のディテールが丁寧に描かれれば描かれるほど、あれは、私の話だと思う。
といった話とは別に、この映画が口コミでどんどん興行収入をのばしている背景には、作品の内容だけではなく、このアニメ映画の制作過程にも「ドラマ」があるからだろうなと感じる。
1分のパイロット版を持ち込んで、カンヌ国際映画祭に正式招待されたという経緯。
さらに、藤本タツキさんはじめ、各界のクリエイターたちが次々とクラファンや対談で応援をしたというファンベースの側面もある。
藤本さんとの対談では、スタッフなどに、小学生のころの「なんてことないけど覚えていること」を1年近く聞いて集めたというエピソードが語られている。また、誰の評価も聞かずに作り続けた3年半、「本当に誰かが見てくれる作品になるのか」と、ずっと悩んでいたとも。
初めてとった賞が、世界三大アニメーション映画祭と言われるオタワ国際アニメーション映画祭でのグランプリ。29歳での受賞は史上最年少。
信じた道で、成功する。
大資本の援助なく、頭角を現す。
クリエイティブに関わる人たちが、(とくに若い人たちが)これほどドラマティックな瞬間を、目撃しない手はないと思う。
そう、目撃、という言葉が非常にしっくりくる。
物語ができるまでの物語。
一度で何度も噛み締められる映画だなと思う。
【この記事もおすすめ】
下村 「岡崎さん、頑張れ」と祈るように見守っていました。他社さんとの取り組みの様子を見て、「岡崎さんは、この機会に賭けていらっしゃる」と感じたんです。作家さんには、ステップアップしていく大事なタイミングがあると思うのですが、岡崎さんにとっては、今がその時期なんだって。
- Writer
- #佐藤 友美
- Back Number
- #さとゆみの今日もコレカラ