
海外に住んだとて、日本の味を食べたいよね!?【連載・炭田のレシピ本研究室/第18回】
毎日の料理は、ほぼレシピ本頼り。年間100冊以上のレシピ本を読んでいるフードライターの炭田が、いま推したいレシピ本を紹介する連載。今回のテーマは「海外で日本食」。異国の地での料理をどうするか?問題に立ち向かう2冊をご紹介します。
夏からインドネシア? マジかよ!?
海外赴任の辞令が出ました。夏からインドネシアです。親友が。
私より3つ年下の彼女はグルメで、酒飲みで、料理はあんまり得意じゃない。彼女から海外行きの知らせを受けたLINEは「聞いてー! インドネシア行くことになった」の次が「子供のお弁当作らなきゃいけないんだけど」の文字と、かわいいキャラクターが口から虹色の吐瀉物を放つ絵文字だった。そりゃゲロくらい吐きたくなる。料理が好きな私だって、異国の地で子供のお弁当を作ることになったら、吐くだろう。しかも彼女の子供はまだ小学1年生。きっと食の好みも色々とあるはずだ。各種スパイスやココナッツミルクなど、食べられるのだろうか……?(好き嫌いの多い小学5年生の我が子には、出したことすらありません)
お弁当づくりも、毎日の料理も、日本以外の国でこなすのはどう考えてもハード過ぎる。だから今回は、海外で料理をする必要がある人に読んでほしいレシピ本を選んだ。我等友情永久不滅。
信じてるぞ! リュウジ!
まずは、お弁当の本から紹介したい。とはいえ彼女には、インドネシア行きの連絡をもらった時に、このコラムでも以前紹介した藤井恵さんの『藤井弁当』という本を勧めている。卵焼き器だけで3品のおかずが作れる本で、シリーズ累計37万部を売り上げているベストセラーだ。もちろん素晴らしい本で、ぜひインドネシアのお供にしてほしいのだが、もうちょっと違う方向性の本も紹介したい。「こういうのでいいんだよ、こういうので」とか「料理するだけで偉い!」みたいなやつ。海外で暮らす彼女には、きっとそういうマインドも必要だ。
そう考えた私の頭に浮かんだのは、料理研究家のリュウジさんの顔。料理が苦手な人でもおいしく作れるレシピを数多世に送り出してきたリュウジさんなら、なんかこういい感じにバシッと答えをくれる気がする。信じてるぞ! リュウジ! 紹介するのは、『リュウジ式 生きるための弁当 LIFE HACK RECIPE103』だ。

この本は、レンチン一発で作れるチャーハンや、巻かずに作れるオムライス、果ては揚げずにレンチンで完成する唐揚げなど、料理の「手間」の部分を大幅カットしたレシピが勢ぞろいしている。私のお気に入りは「鶏ムネねぎ塩漬け」。パサつかず時間が経ってもしっとり食感の鶏むね肉は温めなくてもおいしいから、お弁当にぴったりだ。流石は総フォロワー1000万人のリュウジさん! 頼れるぅ! なんだけども、私は「はじめに」に記してあるメッセージに痺れた。
これまで10冊以上のレシピ本を世に送り出し、料理研究家歴8年のリュウジさんだが、意外なことに「お弁当」の本はこれがはじめてだと言う。「お弁当づくりがめちゃくちゃ大変なことを知っているから、逃げていた」とのことで、だからこそ「朝の限られた時間で、毎日お弁当を作っているだけで無限に褒められていい」と、お弁当づくりの努力を大いに認めてくれる。それでも茶色のおかずばかりで彩りが気になるなら「リュウジが弁当なんてこれでいいんだよって言ってた」と、自分のせいにしろとまで言う。
いつも不遜な態度のキャラクターなのに、なんて優しいんだ……! 好き……! と、私の感想はさておき、お弁当づくりに憂いているすべての人の心をほぐす「はじめに」なのだ。お弁当は無理をして品数を作らなくていいし、ギリギリまで寝られるくらい簡単&そこそこウマけりゃいいんだって。そんなリュウジさんの言葉を、親友に贈ります。
豚肉がなければ、チキンを食べればいいじゃない
お次は、さらに具体的にインドネシア暮らしを想定した1冊を紹介したい。というのも、彼女が行くインドネシアはイスラム教徒が多いので「豚肉」が手に入らないらしいのだ。豚肉なんて、特に意識せずとも週の半分は使っちゃう便利食材なのに、一体全体どうやって料理をしろと……?
だがしかし、パンがなければお菓子を食べればいいわけで、豚肉がなければチキンを食べるのはどうでしょう。鶏肉は「安い、高たんぱく質、飽き知らず」だと、これまたリュウジさんが仰っています。2冊目は、丸ごと鶏肉のレシピだけが載っている『偉大なるチキン野郎 -伝説の鶏レシピ108』です。

「鶏むね肉」の本とか、ダイエット目的の「鶏肉」の本は他にもあるのだけど、鶏肉を使いつつ“うまさ”をこれほどに追求した本はなかなかないのではと思う。調べたところ、インドネシア以外の国も日本のお肉とはだいぶ事情が違うようで、薄切り肉が手に入らなかったり、肉は大体骨付きで売っていたりするらしい。むね肉、もも肉から始まり、手羽、ささみ、砂肝までフォローするこの1冊なら、インドネシア以外の国でもきっと役に立つはずだ。
料理が好きじゃない私の親友は、普段「唐揚げ」を作らないと思うけど、この本の「油と片栗粉をぐるぐる混ぜたものに鶏肉を突っ込んで、フライパンで揚げる」やり方なら、イケると思う。皮カリカリで、お酒が進む味だったよ。
そしてこの本、メニュー名を見ただけで味の想像ができるものばかりなので、海外にいながら「日本のアレが食べたいよぉ」を叶えてくれると思う。ただレシピに使われている調味料が多いから、何を持っていくかは本と睨めっこして決めてほしい。醤油とか砂糖は現地でも買えるだろうから、味の素とアジシオはマストかと!(インドネシアでいちばんメジャーな味の素の商品は「Masako」ってやつだけど、味が日本と違うみたいだから気を付けて)
超・個人的な私信
私が行ったことがある国は、新婚旅行で行ったベトナムとカンボジア、親友に勧められた台湾だけ。もちろん旅行だから、その国で暮らしたことはない。だからそんな私が色々と書いたところで、役に立つかは正直なところよく分からない。でも、海の向こうで「レシピ」は検索すればいくらでも探せても、料理をする「マインド」は難しいと思って、今回の2冊を紹介した。役に立つといいなぁ。読むのが面倒なら、音読するからLINEしてね。
文/炭田 友望
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