
機が熟す【さとゆみの今日もコレカラ/第144 回】
昨日発売になった『本を出したい』の初期構想は、実は 2017 年にあった。
ある出版社で打ち合わせを終えたあと、帰り支度をしてエレベーターホールで、見送ってくださった編集長さんと立ち話をした。「そういえば、私、著者になるための本を書いてみたいんですよねー」と言ったら「え、それ面白い。詳しく聞かせてください」と言われ、会議室に呼び戻されたのが始まりだ。
「小説家になるための本や、脚本家になるための本はたくさんあるけれど、著者になるための本って、ほぼないんですよ」と話したら、「たしかに!」となって盛り上がり、その場で 30 分ほど構想を相談しあった。
その後、構成案を提出し、企画会議も通していただいたのだが、なかなか書き始められなかった。
当時、著者さんの書籍の執筆が立て込んでいたこともある。でも、それ以上に書けなかった理由は、私がまだ「著者になるための本」を書けるだけの経験を持っていないことが原因だったと思う。
当時の私は、まだ書籍ライターとしても著者としても駆け出しで、「著者になるには」という本を書くとしたら、その経験をした著者さんたちの経験談をまとめるしかないと思っていた。つまり、インタビュー集である。本当にインタビュー集でいいのかな、などと考えるうちに時間が経ってしまった。
時は流れ、その出版社が倒産したこともあり、その企画は宙に浮いたままになっていた。
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すっかり忘れていた「著者になるには」本の企画について思い出したのは、前著、『書く仕事がしたい』の打ち合わせをしていたときだ。
文章術の本ではなく「ライターになるには本」にすると決めたとき、担当編集のりり子さんに「そういえば、昔、『著者になるには』本を企画したことがあった」と話して、久しぶりに思い出した。
そのときは「そちらも面白そうだけれど、でもまあ、さとゆみのど真ん中はライターだから、まずは『ライターになるには』本をつくろう」と言われ、もちろん私も異論なく、『書く仕事がしたい』をつくった。
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それからまた時間が流れ、昨年の夏、りり子さんから久しぶりに連絡があった。
「ねえ、さとゆみ、あの『著者になるには』本、どこかで進行してる?」と聞かれ、「いや、全然」と答えた。「だったら、うちでやらない?」とりり子さんは言った。
私もぼんやりと「あの本、出すならこの1、2年だな」と思っていたので、このタイミングの連絡にびっくりした。
会って話をしたときに、お互い考えていたことは同じで、「あの企画、今でしょ!」だった。
出版スクールやゼミが、この1年で非常に増えた。有名な編集者や著者が、出版プロデュース業に乗り出している。おそらく、2024 年のどこかで、これらの講義録をまとめたものが出るだろう。
やるなら、今、でしょ。
問題は、「私(さとゆみ)に、著者になるための本を書く資格があるか」だった。過去に頓挫した苦い記憶もある。だが、2017 年のときとは少し事情が変わっていた。
雑誌のライターから書籍ライターに転向して 10 年。その間に 52 冊のライティングを担当させてもらった。それ以外に、自著が8冊、共著が3冊。
自著を含めた 63 冊のうち、29 冊は自分で企画を持ち込んで採用された書籍である。最後まで通らなかったのは2冊だけなので、書籍の企画を通すためのコツのようなものも見えてきたと思う。
本来、「著者になるには」という本を出すとしたら、その書き手として適任なのはミリオンセラーを世に出すような、実績のある編集者さんだと思う。ただ、著者の立場もライターの立場も、ビジネス書も実用書も経験した私だから、気づけることがあるかもしれない。
そして、一つの出版社だけではなく、いろんな出版社とお付き合いがあるからこそ(数えたら 28 社でした)、いろんなやり方をお伝えすることができるかも。
最初に企画した時からは、ずいぶん時間がかかったけれど。
私自身の経験も、そして、世の中のニーズ的にも、今、ちょうど機が熟したたのかもしれない。そんなふうに考えて、この本を書き始めた。
2017 年に書いていたとしたら、絶対に書けなかったことを書けたと思う。こういうとき、コツコツと歳をとってきた甲斐があるなあと感じる。
著者になりたい人にはもちろんだけれど、ライターの皆さんにもお役に立てる一冊になったのではないかなあと思う(文章の書き方については、むしろ、『書く仕事がしたい』の5倍くらいのスペースを割いてみっちりと解説しています)。
『書く仕事がしたい』のときもそうだったけれど、『本を出したい』には、類書がほとんどない。りり子さんいわく、類書がない書籍を企画会議で通すのは(書店にそのための棚がないから)とても大変なことらしい。
昨日、『本を出したい』を書店さんで見つけてくれた方々から、続々と「ここにあったよ」と、写真が送られてきた。「なるほど、この棚に!」という棚に置かれているものもあって、とても嬉しい。
全力投球しました。
お役に立てますように。



