
教科書では教えてくれない【さとゆみの今日もコレカラ/第290回】
終戦記念日だなあと思いながら、昨夜は「君死にたもうことなかれ」の全文をあらためて読んでいた。天皇の名が出てくるところなどは、今読んでもドキっとする。当時、与謝野晶子の家には内容に反発した読者からの投石などもあったらしい。
反戦歌人のイメージが強い与謝野晶子だが、実は、第一次世界大戦では、「いまは戦ふ時である戦嫌ひのわたしさへ今日此頃は気が昂る」と記している。
弟が出征したときには「君死にたもうことなかれ」と詠んだが、四男が出征するときは「水軍の大尉となりてわが四郎み軍にゆくたけく戦へ」と詠んでいて、まるで逆のこと言っている感ある。教科書では教えてくれなかった話だ。何が彼女を変えたのか。
晶子には12人の子どもがいた。人生の前半戦はほとんど妊娠していたことになる。出産は11回。二度双子が生まれそのうち1人が亡くなっている。徐々に売れなくなった夫を支え生計を立てるため、非常に多作だった。源氏物語は3度訳している。2度目の訳は完成間際に関東大震災で灰となり、そこから17年かけてやり直しをしている。
ちなみに、先の詩に詠まれた四男の名前はアウギュストという。長男から三男までは光・秀・麟だから、これも突然どうした感ある。フランスで「考える人」のロダン(オーギュスト・ロダン)に出会ったことがきっかけでつけた名前らしい。
晶子は6人の子どもを日本に置いて、パリに行った夫を追い5ヶ月滞在したのち、単身帰国して4ヶ月後にアウギュストを産んでいる。この頃、33歳。渡欧前にすでにお腹に子どもがいたということか。いや、パリで妊娠したのかもしれない。いずれにしても、体力な、となる。
教科書で名前を覚えただけの人にも、当たり前だが何十年もの人生がある。十数行の詩がその人の人生を象徴しているように感じるけれど、もちろんその人だって成長するし方針転換もする。人生って、長いよね。
✳︎「今日もコレカラ」は毎朝7時に更新し、24時間で消滅します。今日もこれから良い一日を。
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