
憧れていたけれど、憧れなくなった人【今日もコレカラ/第620回】
誰かの仕事を羨ましく思うことってありますか?
私は、過去に一度だけあったんですよね。
かつての師匠というか先輩というか、私が人生でもっとも影響を受けた霊長類である是枝裕和さんの書籍、『映画を撮りながら考えたこと』を手にとったとき。
この仕事をしていると、「はじめに」よりなにより、まず奥付とスタッフクレジットを見てしまうのだけれど。
スタッフクレジットの構成だか執筆だかに「堀香織」の名前を見つけて、あああああああ、くそ、この仕事、ライターが入っているのかと、すごく悔しくなった。なんで私じゃないんだよ。と、思ったわけです。
私、自分の文章で禁忌にしている言葉がいくつかあって「くそ」は非常に品がないと思っているから書かないようにしているんだけれど、この時の気持ちがこの2文字以外で表現できないので、すみません。書きます。くそっ、この仕事、ライターが入ってるのか、と思いました。
人生ではじめて、誰かと替わりたいと思ったのがこの時であります。
だけどその本が本当に素晴らしくて、付箋だらけになったし、これから何回も読み返すだろうと思ったから、読み終わったあとには「是枝さんの脳内を書いてくれてありがとうございます。どこのどなかた知りませんが、堀香織さんありがとうございます」という気持ちになった。
ところがそこで話が終わらなくて、なんと堀さん、もともと私のnoteを読んでくださっていたとかで。この本について長々と書いたnoteも読んでくださって、「会いたい」と連絡をくれたのでした。
堀さんに聞くと、あれは2018年のことだったそうです。
初めて会った日から堀さんの(まだ言語化できていない)魅力に引き込まれた私は、その数ヶ月後には家飲みをして、その1年後には一緒に執筆合宿する仲になり、現在、堀さんが京都で経営する日本酒サロンで1日ママをするようになり、なんなら京都に家を借りるまでになった。
堀さんは、べらぼうに文章がうまい。
是枝さんの本を書いているのが堀さんじゃなかったら、私はちょっぴり呪っていたかもしれないというくらい、うまい。
亡き父のコラム編集を託すならこの人しかいないと思ってお願いをしたくらい、本当に、私は堀さんの文章を尊敬している。
憧れの人だったし、なんなら、知らない頃は「打倒・堀」くらいに思っていたけれど、実際お会いしてこれだけ人がよくて文章がうまいともう、憧れるって感じでもないし、実際にそのお人柄に接して堀さんにしかできない仕事があることもよくわかったので、もう憧れてない。ちょっと違いすぎる。
堀さんが堀さんにしかできない仕事をしているように、私は私で頑張ろう。そう思うようになった。
そんな堀さんの、自著が出た。
推薦の帯は、是枝さんが寄せてらした。
つくづく、憎らしい。
いや、間違った、羨ましい笑。
羨ましいんだけど、それよりなにより、堀さんの作家デビューがすごく嬉しくて。家族について書かれたこのエッセイ本がとっても素敵なので。
対談させてもらいました。堀さん、どうやって、ライターから作家になったのですか。
書くことにちょっとでも興味がある方には、もれなく全員に読んでもらいたいです。
8月19日には、青山ブックセンターさんで堀さんとトークイベントさせていただきます。ライター仲間の塚田智恵美さんがインタビュアーをしてくれるので、よかったらぜひきてくださいね。
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堀:少し乱暴な言い方かもしれませんが、ライターとして書く仕事に飽きていて。
さとゆみ:飽き、ですか。
“書く”ことは、記憶の救済か、封印か。堀香織さん『父の恋人、母の喉仏 40年前に別れたふたりを見送って』


