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10年後の騎士団長殺し【今日もコレカラ/第932回】

10日ほどかかって、村上春樹さんの『騎士団長殺し』を読了というか、聴了。
オーディブル的には前後編がさらに上下巻あって、4本分の超大作。
スペインで聞き始め、トルコで佳境に入り、東京で聴き終えた。
本当は『1Q86』にトライしたのだけれど、これはちょっと声がどうしてもダメだった。
この『騎士団長殺し』は、高橋一生さんの朗読で、これがちょっと感動的なレベルで素晴らしかった。
とくに、騎士団長の声はもう、これしかない感ハンパなくて震えた。
ご本人のインタビューを聞くと、感情移入して体がほんの少し動くたびに、衣ずれの音が入ってNGをもらっていたらしい。
自分がそんなに体を動かす演技をしてると思わなかったから、それが意外な発見だったと話していた。
そして、僕の声はよく眠くなると言われる、とも。
これはまさにまさにまさにで、高橋さんの声を聞きながら何度寝落ちしたことか。なんなら後半は、時差ボケで眠れない夜の入眠用に、あえて聞いていたりもした。大抵15分で落ちる。
『騎士団長殺し』は10年前の発売当時は、村上春樹全部盛りみたいな感じで、過去作品の壮大なる焼き直し? 的な論調が多かったように記憶している。
けれども、次の作品が出て以降、一気に評価がひっくり返った。いまは、壮大なる実験的作品だったと評されることが多い。
学生時代、学部生の私たちは、生きている作家で卒論を書いてはいけないというルールがあった。
生きている作家は、一作増えるごとに、過去作の位置付けが変わるからだ。
この『騎士団長殺し』がそうだったように。
私たちのような仕事も、その時々、プロジェクト単位で評価されることが多い。
でも、何年か経って振り返ると、アレがあったからコレがあるという、どうしようもない連鎖のようなものがある。点だけでは見えない、線でのつながりがある。
オリジナリティのある作品が描けなくなった画家の再生の物語。
この本一冊が、創作者の創作姿勢について書かれた本なので、その点でも非常に面白かった。
映画『月とキャベツ』をもう一度観たくなったな。

写真は拙著『道を継ぐ』がAmazonランキングで『騎士団長殺し』を抜いた奇跡の瞬間。

※「今日もコレカラ」は朝7時に更新です。バックナンバーが読めるようになりました。

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