本文へスキップ
Share

いまも心に残る名解説【今日もコレカラ/第1014回】

村上龍さんがお亡くなりになった。
龍さんの書籍は『69』の描写で吐いてしまって挫折したあたりから、熱心な読者ではなかったのだけれど、一冊だけ強烈に印象に残っている本がある。

『すべての男は消耗品である』。

その文庫本の解説がすごかった。

超売れっ子直木賞作家だった山田詠美さんが、超売れっ子芥川賞作家だった龍さんに対して「こんなひどい本を書くな。あんたには『コインロッカー・ベイビーズ』みたいないい小説もあるのに、この本があるだけで台無しだろう」(さとゆみ意訳)のようなことを書いていて、それにめちゃくちゃ驚いたのだ。

こういう書き出しをして、最後には褒めるのかなって思ったけれど、最後まで罵倒し続けていた記憶がある。

これを書く詠美さんもすごいし、それを載せる龍さんもすごい。そして、なるほど、本ってこういうふうに読んで良いのだと、心底感じいった。
多分、初読は高校生の時だったと思う。
よいこちゃんの読書感想文や小論文ばかり書いてきた自分が、「本気の感想って、こういうことを書くものなのだ」と目覚めた瞬間だった。

今回、これを書くにあたって、原文がどうだったか探したのだけれど、家に書籍はすでになく(多分実家にある)。ネットの海をあさっていたら、昨日まさに、たらればさんがXのポストでこの部分に触れてらした。

村上龍の作品の中で好きな文章はたくさんあるのだけど、一番インパクトがあったのは『すべての男は消耗品である』一巻にある、「絶望した時に発狂から救ってくれるのは、友人でもカウンセラーでもなく、プライドである。」です。

先ほど久しぶりに読み返したくなってAmazonで探したら、あったんだけどこのKindle版250円には、(角川文庫版に入っていた)山田詠美の解説がない!! 後にも先にもあの文庫版解説は最高of最高で、正直いって『すべての男は消耗品である』シリーズは、あの山田詠美の解説があってこそ救われる文章群だと思っているので、未読の方はなんとか探して手に入れて読んでみてほしいです。

(https://x.com/tarareba722/status/2113625901065994672?s=20)

再読したすぎて、自宅の本棚を探し回って見つけてきました。

(以下引用)

「私は、この本が大嫌いである。村上龍本人が嫌いなんじゃないよ。こういう本に拍手を贈る読者を作り上げたこの本が嫌いなのである。いくつかある彼の素晴らしい小説までもを、田舎臭いイメージの中におとしめる最悪のエッセイ集だと私は思っている。こういう言い方を伏線にして、実は、最後に誉め言葉、(愛ゆえの忠告とか、なんとか)を最後に持って来ようなどという気は、まったくない。だって、この本は、そんな気を起こさせないくらいひどいからである。」

(『すべての男は消耗品である』村上龍著、角川文庫版「解説」山田詠美著より引用ここまで。いま奥付を見たら(初版平成二年十一月十日発行で)、平成十八年七月二十五日 四十七刷版であった。ひええー)

(https://x.com/tarareba722/status/2113635667205103873?s=20)

作家同士の斬り合い、殴り合い、惚れ惚れする。これぞ、文の芸。

ちなみに、名解説といえば、『月の満ち欠け』に寄せられた、伊坂幸太郎さんの「解説はお断りします」という文章。あれは、あの文章だけでも一冊分の価値があると思ったなあ。

【この記事もおすすめ】
「既視感ゼロ!もっと自由で、もっと面白いものを」

Writer
#佐藤 友美
Back Number
#さとゆみの今日もコレカラ

記事一覧にもどる

Writer

尾崎 ゆき

#徳島県在住 #ライター #人と人をつなぐ記事制作

ぐみ

GUMI

#エンタメ #本 #感想家 #取材 #企画 #編集

書き手の一覧はこちら