
マイブーム、お弁当づくり。【連載・炭田のレシピ本研究室/第5回】
スマホ片手に検索すれば、いくらでも素晴らしいレシピに出会える時代。それでもやっぱり「レシピ本」が好き! この連載では、ジャンル問わず年間100冊以上のレシピ本を読むフードライターの炭田が、同じテーマのレシピ本を2冊ご紹介します。なぜ2冊かというと、取り扱うテーマが同じでも、本によってアプローチが違って面白いから。
いま私に、空前絶後の「お弁当」ブームが到来中。春だからお弁当がテーマと見せかけて、ただただハマっているお弁当本を2冊紹介します。
続編が怖い。みんなそうでしょ?
学生の頃に好きだった映像作品の続編が制作されたというので、公開初日の朝一番の上映を友人と観に行った。そしたらなんとびっくり、死んだはずのキャラクターが生き返っていたことがある。上映後、ままならない気持ちを抱えた私たち二人は、ファミレスとカフェとカフェを梯子して映画の感想を語り合った。
それ以来、この世のすべての「続編」をいぶかしい気持ちで眺めている。「1」に感動すればするほど、次にくる「2」が怖い。そもそも「2」が「1」を超すことなんて、なくないですか? あるんですか?
前言撤回、手の平くるりん
な~んて「2」に対して斜に構えて生きていたのに、「1」と肩を並べるすっごい「2」と出会っちゃったんである。藤井恵さんの『からだ思いの藤井弁当』、すごかった。
「1」にあたる『藤井弁当』は、卵焼き器だけで作るお弁当の本。卵焼き器にお湯を沸かして野菜を茹でて「副菜」を作り、お湯を捨てて「卵焼き」を作り、最後に肉や魚の「おかず」を作る。以上。このシンプルさがウケて、発売以来5年連続お弁当本のトップに輝き、28万部を超えるベストセラーだ。
しかも紹介されているレシピはすべて、ひとつの材料+調味料の組み合わせで構成されている。つまり、レシピ本を読んでいてよくある「このレシピが作りたいけど、材料が足りないんだよナァ~(作るのやめよう)」が発生しない。野菜1種類、肉か魚が1種類、あとは卵があればお弁当ができる、とても心強い1冊なのだ。
で、続編となる『からだ思いの藤井弁当』は、「1」の卵焼き器を使った調理システムはそのままに、カロリーと塩分が控えめなヘルシーレシピになっている。ダイエットとか別に……と思うかもしれないが、実は醤油や味噌を多用する日本人の食事は塩分が多くなりがち。ラーメンの汁を飲む、寿司ネタに醤油をピシャーッとかける、餃子の裏と表にタレをつける、天ぷらはひと口ごとに塩にダイブさせる、などなど。思い当たる節があるなら、塩分過多の食生活だと思っていいだろう。意外と他人事ではないのが塩分なのだ。

肝心のレシピは、カロリー&塩分オフなのにしっかり食べ応えがあるのもすごいところ。私のお気に入りは「豚ロース肉の梅オイスター煮」、「にんじんのカレーみそ和え」、「細ねぎ入り卵焼き」の組み合わせ。すっぱくてコクのあるお肉のおかずに、にんじんがちょっぴり苦手な私でも箸がすいすい進むスパイス香る副菜、そしてほんのり甘い細ねぎの卵焼き。ご飯がもうちょっと欲しくなる程しっかりした味付けなのに、塩分は1.9g。一般的なカップ麺の半分以下だ。もう「ブラボー!」と言うしかない。誠に勝手ながら一レシピ本愛好家として、今年のレシピ本大賞を受賞するのでは? と思っている。「2」、熱烈に応援している。
組み合わせの妙がスンバラシー
そんなわけで、私はいま空前のお弁当ブーム。ちょっと目先が変わったお弁当にも挑戦したくて、2冊目はしらいのりこさんの『スープジャーとおにぎり弁当』をチョイスした。お弁当に温かいスープを食べられる有り難みは、普段家で仕事をすることが多い私はそこまで感じない。スープジャーの保温機能のおかげで、朝さっと煮るだけで長時間煮込んだような味になる点も「なるほどね」くらいの気持ちだった。
だがしかし。実際に作ってみると、スープとおにぎりの組み合わせの「妙」が、もうこれ以上ない程に素晴らしくて、用意しなくて済むはずのお弁当を毎朝いそいそと作っている。つい先日なんか、お弁当を食べるためだけに近所の公園に出向いてしまった。

どの組み合わせも甲乙つけがたいのだけど、絞りに絞って2つだけ紹介する。まず1つ目は「甘め豚汁+鮭たらこおにぎり」の組み合わせ。さつまいもとコーンが入っている甘めの豚汁は、単品で食べると「子供も好きそうなやさしい味わいだな」と感じた。だがそこに、鮭とたらこのしょっぱみが利いたおにぎりが加わると、豚汁とおにぎりの永久機関が完成する。たらこを辛子明太子にすると永久機関はさらに加速して、5分もしないうちに食べ終わってしまった。早食いは体に良くないよなぁと思いつつ、やめられない止まらないコンビネーションだ。
2つ目は「チキンスープカレー+塩ナッツおにぎり」。カレーは手間の割に本格的な味わいで、クミンが香り高くいい仕事をしている。合わせる塩ナッツおにぎりは、口の中でほわっと崩れる白いご飯にナッツのアクセントが堪らない。ワインに詳しくないくせに「このおにぎり、赤に合うんじゃないかな」なんて思える、洒落た味がする。もちろんカレーともナイスマッチだ。
「スープジャー」とタイトルにあるので持っていない人は敬遠するかもしれないが、まずはおうちごはんとして作ってみてほしい。スープとおにぎりの組み合わせは50パターンも紹介されているので、きっとお気に入りが見つかるはずだ。
お昼ごはん、各自!
お弁当を作るようになって「こりゃ~いい!」と思ったことがある。自分と同じように在宅で働いている夫と、お昼ごはんを別々にしやすくなったことだ。
私は料理が好きで苦にならないタイプなので、これまで自分がお昼ごはんを作る時は「食べる?」と夫に聞いていた。でも夫は食に対して保守的なので、いくら体にいいとはいえ雑穀ご飯や発芽玄米ご飯より、白いご飯が好き。私が作りたいとってもすっぱい酸辣湯とか、香菜たっぷりのトムヤンクンは「ちょっと苦手」なので、出てきた時は私に気取られないようにしながら食べていた。そうなるとやっぱり、夫も好きそうなものを作ろうかな、と思う。ラブだし。
でもいまは、毎朝作る予定のお弁当の中身を夫に伝えて「食べる?」と聞いている。夫は自分の好きなものなら「うん」だし、苦手な時は「いいかな」となり自分で用意している。これがとっても心地いい。
お昼ごはん、各自! 好きなものを好きなように作って食べる喜びをいま、噛みしめている。
文/炭田 友望
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