検索
SHARE

「断ったらもう依頼が来ない?」スケジュールが回らないときの考え方【絵で食べていきたい/第38回】

新しい依頼のメールに喜んだのも束の間、受けるとスケジュールが回らなさそう。でもせっかくの仕事を断るのは怖い。そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。今回はそういうときにできることを考えます。

断りたくない、でも綱渡りも怖い

仕事を断るのが怖い、でも受けるとスケジュールが回らないかもしれない。フリーランスで仕事をしているとしばしば陥る状況です。断るほど仕事があって良かったね、などとやっかまれることもありますが、いざ自分がその立場になると非常に悩ましいものです。特に仕事を始めたばかりで、少しでも実績を増やしたい頃ならなおさらです。

断ったらもう依頼が来ないのではないか。
偉そうだと思われるのではないか。
せっかくの収入を逃すことになる。

考えるうちに断るのが怖くなって「なんとかなるかもしれない」と仕事を受けてしまう。そんなときに限って大きな修正や突発的な用事が入り、スケジュールがぎりぎりになって大変な思いをする。そんな経験を私もしています。
でも「受けるか断るか」は単純な二択ではありません。その間に、いくつかできることがあります。

断る前に調整できる条件はないか?

スケジュールが厳しいと感じたとき、まず「調整できることはないか」を考えます。
たとえばこんなことです。

・納期を少し延ばしてもらえないか
・修正の回数やチェックにかかる時間を減らせないか
・手のかかる描写を簡略化できないか
・資料をクライアント側で用意してもらえないか

「そんなことを聞いていいのだろうか」と不安になるかもしれませんが、制作現場での調整はよくあることです。先方の締切りに多少の余裕がある場合もありますし、納期は動かせなくても制作時間を短縮するために協力してもらえるかもしれません。無理な要求は避けるべきですが、「この条件ならお受けできます」と伝えること自体は決して失礼ではありません。少し条件が変わるだけで、無理だと思っていた仕事が受けられることもあります。

先に受けた仕事は守る

もうひとつ大事にしたいのは、「先に受けた仕事を優先する」ということです。

すでに仕事を受けた後で、もっと条件のいい依頼が来ることがあります。先に受けた仕事より原稿料が高い、納期に余裕がある、ずっとあこがれていた媒体からの初仕事、ということもありえます。

それでも基本は、先に受けた仕事を優先します。同業の友人に、こんなときどうするか尋ねても、皆同じように先に受けた仕事先をキャンセルはしない、とのことでした。理由は単純で、信頼こそが仕事につながるからです。自分の都合で先に受けた相手に迷惑をかけないということです。

もちろん納期の相談などはしても構いません。また、コンペや企画段階の案件など、まだ正式にスケジュール等が決まっていない場合は、状況をしっかり確認するべきです。たとえば、こちらは「受けたつもり」でスケジュールを空けていても、残念ながら相手は「仮押さえ」ぐらいの感覚という場合もあります。事情を話せば、進捗や見通しを教えてもらえるかもしれません。

「回らなそう」「断るのが怖い」それぞれの正体を分解する

そもそも「仕事が回らなさそう」と感じる理由をよく考えてみると、いくつかの要素に分かれていることが多いです。

たとえば、

・今受けている仕事が予定どおり進まないかもしれない
(例:修正が増えるかもしれない)
・自分の作業時間の予想がつかない
(例:資料集めに時間がかかるかもしれない)

つまり「回らない」という感覚の正体は、具体的な問題の集まりです。その問題が調整できることなのか、本当に無理なことなのか分けられれば、判断がしやすくなります。

同じように、「断るのが怖い理由」も分解してみると、依頼を受けないとそのぶん収入が減る、など明確な要素のほかに、このような理由も多いのではないでしょうか。

相手が気を悪くするのではないか。
二度と依頼が来ないのではないか。
偉そうだと思われるのではないか。

実際のところ、発注する側はどう感じているのでしょうか。

発注側は「断られること」に慣れている

経験上、一度断られたくらいで気にする人はあまりいません。制作の現場では、スケジュールが合わなくて断られることは珍しくないからです。ある編集者さんは、スケジュールを理由に何度も断られたら考えるかもしれないが、それも発注者の性格次第だと思うと答えてくれました。むしろ、回数よりは断り方で印象は変わるとのこと。

断り方が大切という意見は納得できると思います。感じが悪かったら今後頼む気は失せるでしょう。しかし感じの悪さ以上に問題になる断り方とは、

・返信が極端に遅い
・曖昧な返事をして直前で断る

といった、相手の都合を考えずに結果として迷惑をかけてしまうケースだと思います。つまり、丁寧に理由を伝えて断るぶんには、特に問題にならないことがほとんどです。

実際に使っている相談・断りメールの例

仕事を受けたいけれどスケジュールが回らなそうなとき、実際に私が書くメールはこんな感じです。

――――――――――
このたびはご連絡いただきありがとうございます。
大変ありがたいお話でお受けしたいのですが、現在進行中の案件があり、ご提示のスケジュールでは調整が難しそうです。

せっかくお声がけいただいたのにお役に立てず申し訳ありません。
もし今後またタイミングが合う案件がありましたら、ぜひお声がけいただけると嬉しいです。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
――――――――――

もし条件次第で受けられる場合は、こんな書き方をすることもあります。私の場合、いきなり断らずにこういったメールを送る場合が多いです。

――――――――――
ご提示いただいたスケジュールですと少々不安がございます。
もし納期のご相談が可能でしたら、ぜひお受けしたいと思っています。
たとえば締切りを◯日にご調整いただくことは可能でしょうか。
ご検討いただけましたら幸いです。
――――――――――

このように相談すると、相手がスケジュールを調整してくれることもあります。もちろん断られる場合もありますが、なんとかして受けたいと思っている気持ちは伝わるかもしれません。これが正解という書き方はないと思いますが、参考になればと思います。

悔しい「取り逃がし」を減らすために

最後に、悔しい「仕事の取り逃がし」を減らすために意識していることを紹介します。

まず「仕事を受けたらすぐ内容を確認する」ことです。納期がかなり先でも、必ず初日に資料と発注書を一度確認します。というのも、こんなことがよく起きるからです。

・資料が足りない
・指示がはっきりしていない
・発注内容に抜けがある

こうした問題は、気づくのが遅くなるほどスケジュールを圧迫します。土日にまとめて作業しようと思ったら、肝心のイラストサイズがわからない。連絡をとろうにも、発注者はお休み。しかも、依頼を受けてから何日も経っていて、いまさら質問もしにくい……。そんな状況は避けたいものです。

さらに、相手がチェックするのにかかる時間も確認しておくと安心です。修正は自分の作業時間だけでなく、相手がいつ確認できるかにも左右されるからです。

そしてスケジュールは、最初からぎりぎりに設定しないこと。
遊びの時間、休憩、睡眠。そういった余裕を「調整できるスペース」として残しておくと、仕事はぐっと回りやすくなります。

仕事を断るのは、やはり勇気がいります。特に駆け出しの頃ほど、怖い、惜しいと感じます。でも長く仕事を続けていくためには、「断る」「調整する」といった判断をして自分の信頼を守ることも、大切な仕事の一部なのだと思います。

文/白ふくろう舎

【お知らせとお詫び】
この連載に加筆修正した書籍『絵で食べていきたい!』(弘文堂)第 1 刷(2024 年 12 月 15 日発行)に、修正を要する表現がございました。 下記URLの通り変更いただけますよう、お詫びと共に、お願い申し上げます。
正誤表 https://hondana-storage.s3.amazonaws.com/83/files/85018_1.pdf

書籍『絵で食べていきたい!』は、こちらからご購入いただけます。

【この記事もおすすめ】

writer