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落ち込んだときのメンタルの立て直しかた【絵で食べていきたい/第41回】

絵の仕事を続けていると、メンタルコントロールはとても重要だと感じます。仕事のミスやトラブルで気持ちが落ち込んだとき、どう対処するか。仕事を続けるうえで避けては通れない問題です。性格は人それぞれですが、自分の傾向を知ることで、安定した精神で仕事を続けやすくなるのではないでしょうか。

メンタル管理が重要な理由

どんな仕事もそうですが、中でもフリーランスイラストレーターには、安定したメンタルが必要だと感じます。理由は、仕事のほとんどが固定された場所での個人制作であること、納品までの進行も自分一人に委ねられていることです。
この状況では、一度メンタルが落ちると気持ちの切り替えがしにくく、制作に影響がでやすいのです。さらに、やる気がでないからと仕事を後回しにして、気がついたら締切りを守れない、ということにもなりかねません。有給休暇もないので、調子を崩して仕事を減らしてしまうと収入も減り、生活が立ち行きません。

自分がどんなときに落ち込みやすく、どうすれば早く回復できるのか。この傾向を知っておけば、メンタルを安定させやすくなるはずです。

落ち込みのパターンを考える

仕事でミスをして落ち込む。他人の活動と比較して落ち込む。落ち込む場面はさまざまですが、大きく分けると2つのパターンがあります。

1つ目は、仕事でミスをした、取引先と揉めた、力不足でコンペを逃した、批判をされたなど、原因がはっきりしている落ち込み。
2つ目は、普段なら気にせずにすむような些細な出来事や、はっきりした理由もなく気持ちが落ち込み、それが続く場合です。

1つ目のように原因がはっきりしている場合は、その対処が最優先です。仕事でミスをしたならリカバリーとお詫びをする。取引先との揉め事は状況を整理し、信頼できる人やプロに相談して今後の方針を決める。力不足や批判などで、自信をなくしたり傷ついたら、誰かに聞いてもらったり思い切り気持ちを書き殴るなど、一度吐き出します。そのうえで反省すべきか、何か行動すべきか、あるいは気にしないかなどを改めて考えます。このように「次にどうするか」を決めることで、いったんは落ち着けるはずです。

落ち込んだ気持ちの切り替え方

自分が原因となった落ち込みなら、もちろん反省も必要ですが、いつまでも引きずらないことも大切です。

今後の方針を決めたのに、気がつくとくよくよと同じことばかり考えている、頭の中で言い訳ばかりしている。そんな思考のループにはまっていたら、まずは頭を強制的にそこから切り離すことを考えます。具体的にはこんな方法です。

1)身体をつかって別のことをする
脳内が「くよくよ」でいっぱいだと気付いたら、まずはパソコンやスマホの前から離れます。私の場合、手っ取り早く離れるために、部屋の掃除や料理などの家事をします。手足を動かし、五感をつかうのは、気持ちの切り替えに有効だと感じます。散歩や運動をして自然に触れ、日光を浴びるのはさらに効果てきめんです。

2)寝る
可能なら、いっそ寝てしまうのも非常に効きます。私は「フテ寝」と呼んでいますが、30分ほど寝るだけでもかなり気持ちが楽になります。強制的に脳を休ませるのです。

3)別の情報や刺激に脳をつかう
場所を変えられない場合は、小説やマンガを読んだりドラマを見たりします。よくできた物語に没頭していると、他のことを考える暇がありません。強引に脳を別のことで埋めるので、落ち込んでいることを忘れられます。

4)人と話す
視野が狭くなっているとき、自分一人ではなかなか気付けないので、人と話をするのは有効です。同業者なら状況を理解してもらい、共感やアドバイスを得やすいでしょう。一方、全く違う環境の友人と話すのも良いです。自分にとっては大問題だと感じたことに「え? それの何が問題なの?」という反応をされることもあります。すると、「実は大した問題ではないかも」と少し気が楽になるかもしれません。

5)ノートに書き出す
手をつかって、落ち込んでいる正直な気持ちや、今後どうしたいかなどを文字にします。同じことを何度も考えてしまうなら何度も書きます。もう書くことがなくなれば、気持ちも落ち着くかもしれません。ミスが原因で落ち込んでいる、と思っていたけれど、より細かく考えると「ミスはしたけれどそれには理由があったことをわかってほしい。このままでは相手に誤解されたままだと思う」など、一番自分がひっかかっている部分が明確になるかもしれません。

落ち込みの他の原因を探す

上記の方法を試しても落ち込みが長引く場合や、落ち込みパターン2のように、些細なきっかけでも落ち込みやすい状態が続くなら、原因は他にあるかもしれません。

1)自分の性質や価値観などと関係がある
2)落ち込みやすい環境にある

1つずつ説明します。

1)自分の性質や価値観などと関係がある

たとえば私の場合、「締切りを守る」ことを大事にしているので、スケジュール調整がうまくいかないと非常に強いストレスを感じます。おそらくイラストレーターとしての自分の評価のうち「締切りを守れること」が大きな部分を占めていて、これを失うと自分の価値が下がると感じるからではないかと思います。

イラストに修正が入る場合、なんとも思わず直せるときと、強いストレスを感じるときがあります。自分にとって「この部分が自分の独創性だ」「この部分は苦労した表現だ」など、大事だと感じる部分に修正が入ると、まるで自分自身を否定されたように感じるのでしょう。

人間関係で悩むことも多いのですが、「相手は自分にがっかりしたのではないか」という、考えても仕方がないことでくよくよします。これも私に「人に期待される自分でいたい、失望されたくない」という気持ちが強いせいだと思います。この傾向は会社員時代から気付いていたのですが、自覚し、受け入れ、気にしすぎないようにするという段階ひとつひとつに時間がかかりました。

どういう原因で落ち込みやすいか、よく考えてみると、自分の価値観や性格、自信のある部分とない部分などが見えてきます。自分向きの書籍を読んだり、全く違う性格の人と交流したりして、自分の悩みをより客観的にとらえられるようになると、少しずつ立ち直る時間が短くなるのではないでしょうか。

2)落ち込みやすい環境にある

特に原因がないのにずっと気分がふさぐ。些細なことで落ち込み、なかなか元気になれない。そんな場合は、今の自分の置かれている環境を洗い出してみてください。たとえばこんなことです。

・長期間身体に無理をさせている
睡眠不足、長時間労働、栄養バランスを欠いた食事などが続くと、身体だけでなく心にも影響がでます。忙しくなると休養時間が減り、さらに食生活も荒れるというように、負の連鎖が起こりがちです。そして心身への影響に本人が気付くのはかなり後になってからということが多いのです。

・日々ストレスを感じる状態にある
人間関係が良くない。狭くて暗い、騒音のある場所に長時間いるなど、心理的、物理的な環境そのものが自分にストレスを与え続けていることがあります。

・大惨事などで心が傷ついている
実際に自分が経験したことでなく、大きな天災や人災などの情報に触れるだけでも心に傷を負うことがあります。連日のニュースから、無意識に無力感や罪の意識などを感じ続けることになります。

・季節、年齢、病気などによる心身の不調
ホルモンバランスや気圧、加齢による不調など、さまざまな要因が体調だけでなく心にも影響します。

自分がこのような状況にあると気付けたら、落ち込みから回復する方法も見つかりやすくなります。生活習慣や置かれた環境は簡単には変えられないかもしれませんが、できる範囲で自分が楽になる選択をしていきましょう。特にフリーランスは仕事も不規則になりがちなので、適度な運動、バランスの良い食事、良質な睡眠などは意識して習慣化したいものです。

落ち込みを減らしつつ、うまくつきあっていく

比較的、気持ちの切り替えが上手で、あまり落ち込んでいる様子がない人もいます。そういう人は、居場所を複数持っているように思います。職場、家庭、地域活動、趣味の場など、それぞれに「いろいろな自分」がいる人です。忙しいのであまり落ち込んでいられないという理由もあるでしょう。それに加えて、一箇所で何かが起きても、自分の中の全てがダメになったと感じないですむからではないでしょうか。
「絵の描けない自分に価値はない」「仕事をしていない自分に価値はない」などと、ある場所のみで評価されることを自分の価値としてしまうと、逃げ場がなくなります。

冒頭でフリーランスイラストレーターの、同じ場所で、一人きりで仕事を完結するという特性をあげました。意識してこれと逆の状態に自分を置いてみるのはどうでしょうか。

ボランティア活動などを通じて地域との関わりを増やす。植物やペットなど、何かを育てる。新しい趣味を始める。何かを学ぶ。同じ行動でも、いつもと違う場所でやってみる。

さまざまな場所に自分を置くこと。そこで何かを受け取ったり与えたりして、助けられたり、感謝されること。その数とバリエーションが多いほど、心身のバランスをとりやすくなる気がします。

落ち込んでも早めに立ち直り、自分なりの良い状態を保つことが大切なのは、改めて言うまでもありません。しかし、落ち込むのは誰にでもあることで、決して悪いものではありません。いつも万全で絶好調でいられる人はいません。落ち込んだり調子を崩したりするのが普通です。自分は超人ではなく普通の人間だと受け入れ、気持ちにもスケジュールにも余白を持つ。そんな姿勢こそ大切なのかもしれません。

好きな仕事を長く続けるために、この記事が何かヒントになれば幸いです。

文/白ふくろう舎

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