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ガチギレの採用面接【さとゆみの今日もコレカラ/第 129 回】

インタビューで学生時代の就職活動について聞かれた。それで思い出したのが、試験を受けに行った会社で、受付のおばちゃんにガチギレされたことだ。

『世界の車窓から』を作っているテレコムスタッフという会社の面接でのことだった。「今から2時間で、青山ブックセンターについてのテレビ番組の企画を立てる」という課題が出た。

当時のテレコムスタッフは、青山ブックセンターから徒歩3分の場所にあった。もちろん、書店まで行ってリサーチしてきて良いと言われ、学生たちは全員、青山ブックセンターに向かった。

書店員さんに取材をしたり、書籍の陳列の工夫について考えたり、客層を観察したりし、なんとなく企画が頭に浮かんだときには、1時間が経っていた。

やばい、そろそろ会社に戻って企画を書いて提出せねばと思って店を出たのだけれど、そこで事件が起きた。

ワタシ、スジガネイリノ、ホウコウオンチ

行きは良い良い帰りは怖い。

くる時はみんなで来たからいいけれど、気づけばもう誰も書店にいない。  え、会社、どこだっけ? わたし、どっちから来たっけ? たしか茶色い雑居ビルだった気がする。いや、グレーか?

Google マップなんてない時代だ。そこからが地獄だった。慣れないヒールで北青山の路地を一本一本歩いてまわる。しらみつぶしにビルに入り、看板を見てここじゃないと次のビルに移動する。

やっとテレコムスタッフを見つけた時には、課題の提出時間の 10 分前で、会場にはもう数人しか残っていなかった。

受付のおばちゃんに、かくかくしかじか、道に迷ってしまった。もう提出時間には間に合わないので、試験は辞退しますと伝えたら、おばちゃんが驚きの見幕でガチギレしてきた。

「あなたね、そんなことで、諦めるわけ? あと 10 分あるでしょ? 10 分で何かできることはないわけ? あなたの就職活動に対する思いはそんなもんなの?  こういう場面が今後またあったら、あなたはまた諦めるわけ?まあ、がっかりしたわ。ほんとがっかりだわ!」

たしかそんな感じだったと思う。細かいニュアンスまでは覚えていないけれど、生まれて初めて受けるレベルの、本気の説教だった。

その時、心の底からこの会社で働きたいと思った。一介の学生のために、受付のおばちゃんが頭から湯気を出しそうな勢いで説教してくれる。こんな人がいる会社で働きたいと思った。席について、企画を書けと言われた A4用紙に反省文を書いた。

方向音痴でごめんなさい。だけど、御社の受付の方にガチで怒られて感動しました。私は、こんなオトナがいる会社で働きたいです。御社とはご縁がなかったと思うけれど、今後の就職活動においては、おばちゃんに言われたことを胸に頑張ります。諦めない。企画は立てられなかったけれど、ここに面接に来て本当によかったです。おばちゃんありがとう。

後日、面接通過の通知がきて、混乱しながら会社に行ったら最終の役員面接だった。面接官の席におばちゃんがいた。受付のおばちゃんじゃなくて、会社の役員だった。その日のうちに採用の連絡がきた。

おばちゃんに、「あなた、うちが第一志望?」と聞かれた。いえ、第二志望ですと正直に答えた。この人に嘘をついちゃいけないと思ったからだ。「あの会社はもうすぐ結果が出るよね。じゃあ、そちらに落ちたらいらっしゃい」と言われ、「いえ、その第一志望はすでに落ちていて、後期採用試験を受けるつもりです。おそらく8月までは結果がわかりません」と伝えた。「そうか。うちは今年、2人しか採用しないのだよね」と言われた。決して圧をかけられたわけではなかったけれど、そこで、内定を辞退した。そしてもう一度、あの日叱ってくれてありがとうございましたと、お礼を伝えた。

諦めたら、そこで試合終了だよ。

あれから 30 年。漫画の中ではなく、ガチで私に教えてくれたおばちゃんに、私は今でも感謝している。「10 分でできることはないの?」というおばちゃんの声を時々思い出す。何度かその声に窮地を支えられたと思う。あのおばちゃんみたいなオトナに、私はいま、なれているかな(おばちゃんおばちゃん言うてすみません。たぶん、今の私よりもずっと若かったと思う)。

【この記事をおすすめ】

数年後、この本がきっかけで、仕事のやり方を変えて大きな結果が出ました!と言いたいと思う。

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