
1年に1週間だけ 12 年間【さとゆみの今日もコレカラ/第 185 回】
筋トレをしながら思い出していたのだけれど、昨年の今頃はアキレス腱を切っていた。手術せず、保存療法も選ばず、アキレス腱を切った次の日から歩いて治す「歩行療法」というアクロバティックな治療法を選んだのは、ゴールデンウィーク中にどうしても参加したいイベントがあったからだ。
映画『Dr.Bala』の舞台挨拶。ドキュメンタリーの聖地、東中野ポレポレで封切られる映画をゼミメンバー37 人で応援に行った。
世界各国の映画祭で賞を獲ったこのドキュメンタリーは、医療ライターのこずえちゃんに紹介されて知った。慈恵医大に勤める医師が、年に一週間の夏休みの間だけ、ボランティアで東南アジアに通う。その 12 年にわたる活動が、東南アジアの医療現場を劇的に変えているという内容らしい。日本でなかなか配給が決まらないから応援したいと言う。
CORECOLOR で監督のインタビューをすることになったので、試写用の URLを送ってもらった。
ドキュメンタリーは苦手だ。かつてその作り手の現場にいたからかもしれない。観るまでの腰が重い。
ところが、ある日の仕事の帰り道、ケータイの画面でその映画を再生したら止められなくなった。その日わたしは電車に乗るのをやめて、82 分の映画を観ながら家まで歩いた。映画が終わってからも、脳がぐわんぐわんいっている。
結局1週間で3回観た。これはたくさんの人に観てもらいたいと思い、インタビュー原稿を掲載するだけではなく、メディアで働く友人たちを中心に試写会をすることにした。
試写が終わると、みんなが続々と感想を送ってくれた。その感想が熱すぎて、ワードにまとめたら2万字近くあった。それぞれがいろんな場所で感想を書いてくれ、インタビュー記事を企画してくれ、さまざまな形の応援が後押しのひとつとなって『Dr.Bala』は日本の映画館で観られることになった。これは、アキレス腱の手術をしている場合じゃないと、ギブスした脚で舞台挨拶に駆けつけたのが1年前の4月 29 日。GW 中のポレポレは、連日満席だったらしい。
あれから1年経った。今年の GW、『Dr.Bala』は横浜国際映画祭に招待されている。今日は監督たちがレッドカーペットを歩く日である。上映は5月5日の午前中。トークショーもあるというので私も観に行く予定だ。6回目になる。
初めて観た時は、命の使い方について考えた。1年のうち1週間、何かに時間を使うとしたら、何に費やすだろう。12 年続けられるほど、のめり込めることはあるだろうか。
次に観た時は、人との関わり方について考えた。自分一人でやるのではなく仲間を作ること。巻き込み巻き込まれることの相乗について考えた。
3回目は明確に勇気をもらった。4回目では、今後 12 年で自分がやることを決めた。5回目が1年前のポレポレ。一緒に観た仲間たちの感想がまた刺激になった。
観るたびに、脳の開かなかった扉が開く映画だ。2回目以降は脳の半分で映画を観ながら脳の半分は凄まじいスピードで考え事をしている。映画に照らされる自分を定点観測するような感覚がある。今回も何を思うのか、今から楽しみ。
5月5日、横浜シネマ・ジャック&ベティ、ご一緒しませんか。Amazon プライムでの配信がスタートしているので、映画館が難しい方は、ぜひ GW 中にそちらでも。
そして、この映画の主人公である大村先生の書籍が発売になったそうだ。私はゲラで読ませてもらったのだけれどこれが映画の感動を超えるほどの素晴らしい書籍だった。いまは Amazon 在庫切れしているので、この話はまたいつか。
【この記事をおすすめ】
私と同じように2度、映画を観た人は私の周りだけでも5、6人はいる。その中の一人が、「『Dr. Bala(ドクター・バラー)』はドキュメンタリーなのだけれど、映画を観ながら自分を見つめ直しているような感覚になる。まるで『内観』のようだ。だからきっと何度も観たくなるのかもしれない」と言った。


