
古本屋で本を買うのは良くないことか【さとゆみの今日もコレカラ/第 206 回】
かつて、ある出版社の編集長が「書籍を図書館で読む人、古本屋で買う人は、私たちの読者ではありません。読者とは、定価で本を買う人、つまり出版社や著者に利益をもたらす人だけを指します」と言っていたのを聞いたことがある。
だいぶ昔の話で、そのときはまだ自分で本を書いたことはなかったし、うーん、そうかなあ。でも図書館で本を借りたり、友達との本の貸し借りをしたからこそ、今の本好きの私がいるんだけれどなあと思っただけだった。
今、自分が著者になって思うことは、もうどんな手段でもいいから、読んでほしい。誰かに借りても、図書館で借りても、ブックオフで買ってくれても、道端で拾ってくれてもいい。入手ルートは何でもいいから、一人でも多くの人に読んでもらいたい。これが本音である。
『本を出したい』にも書いたけれど、大ベストセラーにでもならない限り、本を書く仕事は赤字だ。時給換算したら息子のお手伝いのお駄賃より安くなった本もある。
それでも本を書くのは、そのテーマについて書きたいからだし、読んでもらいたいからだし、その感想をもらって再び考えたいからである。
先日、読書猿さんがしびれる投稿をされていた。
お金がなくて新刊を買えない、でも古本屋で売り買いするのは著者に申し訳ない気がするという学生に対して、読書猿さんはこう答えていらした。
中古で安くたくさん買ってください。利用できるなら図書館も使ってください。
何冊かを諦めて新刊書店で一冊を買うより、
あなたが一人前の本読みに育ってくれた方が、業界的には何千倍もうるおいます。
https://x.com/kurubushi_rm/status/1793258201238090105
たくさん本に出会い、どうしても手元に置きたい本を見つけてください。 そしていつか、がんがん稼げるようになって、山ほど本を買ってください。 あなたがそうなるまでの時間は、今この業界に関わる私達がつくります。 業界を支えるのはあなたの義務ではない。それは私達の仕事です。
https://x.com/kurubushi_rm/status/1793258204245488039
「あなたがそうなるまでの時間は、今この業界に関わる私たちがつくります」
やはり、しびれる。
読書猿さんのような売れっ子ではないけれど、業界の端っこにいる人間として、この気概だけは持っていたい。
そして、極め付けがこちら。
不遜を承知で言えば「読んでもらえりゃこっちのもの」と思っています。もしも私の書いたものに少しでも力があるならば、どんな経路を通っても最後には私に自由を与えてくれるはずだと(続
https://x.com/kurubushi_rm/status/1100013683462131713
源氏物語だって、枕草子だって、初版はたった1部だったのだ。
そのたった1部を読みたいと思った人たちが、あの長い長い物語を書き写し、それをまた読み伝える人がいたから、今、私たちが紫式部の、清少納言の文章を読むことができるのである。
というわけで。
私の本には、どこで出会ってくださっても、読んでくださるのであれば等しく嬉しいです。もちろん、買ってくださった方には心からのお礼を。あなたが手に入れてくださったおかげで、私は次の本を書くことができます。
【この記事をおすすめ】
いや、本当に売れてほしいです。もし売れなかったら、編集者を辞めようと思っているくらいです。今この時代に日本語を使っている人にとって、この本に書いてあることが「身につけておいたほうがいいな」と思えない内容だったら、編集者としてのピントがずれているということなので。それくらいの覚悟を持って世に出しました。


