
たったひとつの成功の法則(完結編)【さとゆみの今日もコレカラ/第575回】
先日、こんな文章を書いた。
著者累計○百万部という自己啓発分野の売れっ子著者さんが、非常に面白いことをおっしゃっていた。
よく「成功の法則」っていうじゃない。でもあれって、成功した人があとから振り返って言っているよね。
たとえば、自分の書籍を振り返って考えると、売れる書籍の販促方法の鉄板ってあるわけね。SNSで宣伝したり、有名著者とイベントしたり、読者特典つけたり。
それで、自分でもその方法を繰り返すのだけれど、それがあまり効かないときもある。
で、販促に疲れ切って「もういいや!」と思って、SNSでも宣伝せず読者特典もつけなかった本が、過去一番売れたりするのよ。
これにはびっくりしたね。
「なるほど! 売れるためには、何もしないほうがいいのか!」と思ったよね。これが本当の成功法則だったんだ! って。
で、それをもう一度、やってみるわけ。
何もしない。
するとね、何が起こると思う?
本がね、売れないの(笑)。
さて、この話からわかるたったひとつの成功の法則、なんだと思う?
(最近いただいた一番面白い問いだったので、お裾分けです)
「今日もコレカラ」5月25日
その後、この話の正解は何だったのですか? と何人もから聞かれた。ああそうか。これ、問いだけのつもりだったのだけれど、答えがあるように見えるなと思って、その続きです。
その著者さんと話したことは「つまり『成功の法則などない』」ということだったのだけれど、
それだけでは身も蓋もないので、なぜ「成功の法則などない」と断言できるのかを、もう少し考えたいと思う。
なぜ「成功の法則などない」と言い切れるのかを考えると、「パンと犯人の法則(さとゆみ命名)」にぶちあたる。
たとえば
「大量殺人を働いた犯人は、毎朝パンを食べていた」
これが事実だとする。
だけど、この事実だけで、「毎朝パンを食べている人は大量殺人を働く」とは言えない。
成功の法則もそれと同じで
「SNSで販促をすると、本が売れる」が事実であっても、「売れる本はSNSで販促している」とは言えない。
「販促をしないときのほうが売れた」が事実であっても、「売れる本は販促していない」とは言えない。
昨夜、ゼミメンバーで飲んでいたのでこの話をしていたのだけれど、このことをもう少しわかりやすく解説してくれている本がある。
昔、コレカラで書いた『生命科学的思考』だ。この中の「鶏と卵」話をもう一度。
たとえば、
・市場が大きくならないと成功事例が出ないが、成功事例がないと市場が拡大しない
・多くの人が飼ってくれないと価格を下げられないが、価格を下げないと多くの人が飼ってくれない
は「鶏と卵」のように、答えのない問題のように思えてしまう。
でも、実際には、そうではない。
市場が大きくなる要因は、
・成功事例が出ること以外にもあるし、
・市場の拡大以外に成功事例になる要因もある
同様に
・多くの人が買ってくれること以外にコストを下げられる方法もあるし
・コストを下げられない場合でも多くの人に買ってもらえる方法もある
つまり、一見A⇄Bのように見える成功の法則も実は、C,D,E,F,G……と、他の要因があって、
Aの因果(原因)になっている要素はBだけではないし、Bの結果になっている因果(原因)はAだけではない。
だから、再現性のあるたった一つの成功法則というのは、物理的に存在し得ない。
という話なんじゃないかと私は理解している。

『ビジネスの人生の見え方が一変する 生命科学的思考』より
上は、『生命科学的思考』からお借りした図です。因果関係の説明に関して、この本ほどわかりやすい本はないなと私は思っているので、よかったらぜひに。


