
ところがどっこい、長生きの法則【今日もコレカラ/第583回】
たとえばこの世にいる人、全員の人生が50年で終わると決まっているとして。
その50年を、60年とか、70年とか、100年とかに延ばす錬金術があるとしたら、それは多分、「他人の靴を履く」経験をたくさんすることに尽きる気がする。
自分の人生が進行している間に、自分じゃない他人の人生を生きる。そうすると、50年が増える。
他人の靴を履く一番簡単な方法は、読書だと思う。本でも漫画でも、読むことで私たちは、他人の人生を「仮生き」することができる。
よく本を読む人と話をすると、この人はたくさんの人生を「仮生き」してきたんだろうなあと感じる。
そして、つい最近発見した、「他人の靴を履く」の応用バージョンがある。
それは、「another自分の靴を履く」だ。
この、「another自分の靴を履く」は、主に書くことで実現できるような気がしている。
ねえ、ちょっと聞いて。
先日、大阪のNHKカルチャーセンターさんで、エッセイ講座の第2回目があった。
そこで、事前に書いたそれぞれのエッセイを、その場で書き直す実験をしてもらった。書き直すときのルールはひとつ。もともとの自分の文章のどこかに「ところがどっこい」という接続詞を入れる。そして、無理矢理にでも、それに続く文章をひねり出して、別の結論に達してもらうのだ。
「ところがどっこい」は、単に「ところが」でも「しかし」でも良い。要は、逆説の接続詞を入れて、ストーリーを「転」じる。
すると、自分の脳内から、思ってもいなかった論理展開や忘れていたエピソードが掘り起こされる。そして、前に書いたエッセイの「あり得たかもしれない別の結論」が導き出される。
これが、やってみるとわかるのだけれど、まるで、パラレルワールドの自分に出会うような体験なのだ。こんな可能性もあったのか! と驚く。
「書く」を続けているとときどき、こうやって、another自分に出会うことがある。書く前には想像もしなかった場所に連れて行かれるのだ。
そういうとき、私は、「いまこの瞬間、書かなければ得られなかった、別の人生を生きたなあ」と感じる。
「書く」と人生は、増える。
そんな体験を、先週、15人の仲間とした。
この効用のことを、私たちは「ところがどっこいの法則」と名付けて解散した。
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