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たった1回の観察で何をわかった気になっているのだ【今日もコレカラ/第626回】

今、滞在している宿というか、家というか、その広大な敷地には池があって、カナダグースが7羽住んでいる。

はじめて敷地を散歩をしたとき、彼らはビシっと1列に隊列を組んで、池からどこかに向かって出勤をする最中だった。なぜ出勤かというと、夕方散歩したときに、また池に戻る彼らを見たからだ。
誰か検査員がいるのだろうかというくらい一糸乱れぬ歩き方をするので「グースって、こんな感じで群れを作って歩くもんなんですね」とか「いったいどこに出勤しているんですかね」「池のどこに家があるんでしょう」などと友人と話していた。
その横で放牧された牛たちが、時間帯によって移動し、最後は小屋に戻る様子を見ていたから、グースたちも同様に、夜過ごす池が彼らの家で、昼間はどこかで何かをして、夜になったらまた家に戻るのだと思ったのだ。

次の日、やはり夕方お散歩で家を出たとき、彼らは退勤途中で、池に戻るところだった。
ところが、前日の秩序はどこに行ったというくらい、列はバラバラで、「カナダグースって、こんなに秩序正しいものなんだ」と思った1日前の感想がふっとぶ。マジで、てんでバラバラじゃないか。

「1日見ただけではわからないものですねえ」「昨日見ただけだったら、カナダグースは軍隊ばりの秩序を持って歩くって思っちゃいましたよね」なんて話しながら、家に戻った。

その次の日。
やはり池から出勤するグースたちを見た。この日は秩序と無秩序のちょうど真ん中くらいの列をなしていた。再び「どこに出勤しているんでしょうね」なんて話をしていたのが、朝のこと。
私が冗談で、「ひょっとして、池と陸を1日10回くらい往復しているだけかもしれないですよ」と話したら、友人はちょっと考えたあと、「またまたー。そんなことあります?」と返してきた。私も「だよね」と言って笑った。

お昼ごろ。ゴミ出しのために再び家を出た。
この時間に外に出たのは初めてだ。
そしたら、なんと。

グースたちは、池からあがって、どこかに行く途中だった。
朝、出勤した(はずの)グースたちは、いつのまにか退勤(だと思った)していて、もう一度、どこかに向かう途中だった。

私と友人は、顔を見合わせる。
彼らはどこかに出勤して退勤しているのではなく、本当にただただ、1日に何度も、池と陸を往復しているだけなのかもしれない。

その様子を見た友人が、
「私たち、世界のほとんどを、わかっていないんですね」
と、友人が言う。

たまたま一糸乱れぬ隊列を見て
たまたまランダムな隊列を見て
たまたま朝池を出て夕方いけに戻る隊列を見て
その都度、勝手にグースたちをわかったつもりになっていて、
結局、それが全部、「その時たまたまそうだっただけ」の現象だったことを知り、いや、人間界も本当にそうだよな。たった一度観察したくらいで、その人をわかったつもりになるのは浅はかof浅はかだよなあ、などと話をしながら帰ってきたのでした。

いろいろ、縮図。

追伸:その後「グース、イギリス」で検索をかけたら最初に出てきたのがマザー・グースの歌だった。

Sing a song of sixpence,
A pocket full of rye;
Four and twenty blackbirds,
Baked in a pie,

When the pie was opened,
The birds began to sing;
Was not that dainty dish,
To set before the king?

6ペンスの うたをうたおう
ポケットは むぎでいっぱい
24はのくろつぐみ
パイにやかれて

パイをあけたら
うたいだす ことりたち
おうさまに さしあげる
しゃれた おりょうり?

お前もやっぱりパイなのか!

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※「今日もコレカラ」は朝7時に更新です。バックナンバーが読めるようになりました。

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