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そうだ! 綺麗になろう【今日もコレカラ/第644回】

突然だけれど、メイクをしようと思い立った。
ちょっと心境の変化があって、突然、綺麗になりたいと思ったのだ。

私は普段、ほぼメイクをしない。
20代の時に、ひどいアトピーになり、それ以来、日焼け止めもファンデーションも塗れなくなった。私が同じ美容の業界でも、コスメライターではなくヘアライターに特化したのは、化粧品を試せないことも理由だった。

子どもを産んでから、アトピーはだいぶよくなり、かわりに喘息がひどくなった。アレルギーマーチというやつだろう。
それでも、ファンデーションを塗ると顔がかゆくなるので、避けていた。『女の運命は髪で変わる』を上梓して、テレビの仕事が増えたとき。メイクさんにメイクされると、収録が終わる頃には顔が真っ赤になっていた。

それが、いつ頃からだろう。多分、40歳になる頃だったか。気づいたら、メイクをされてもかぶれなくなった。肌も老化で鈍感になるのかもしれない。
友人から、これなら多分大丈夫だと思うよと渡された日焼け止めにも、かぶれなくなった。
かくて、私は40歳を超えてからファンデーションを塗れる体質になったのだ。

とはいえ、メイクをする習慣がない。
化粧水も乳液も、40代を超えてから初めて買った。クレンジング剤と言われるものを初めて買ったのも40代だ。
化粧品って、こんなに高いのか。こんなに高価なものをみんな毎日顔に塗り、毎日洗い流しているのかと驚愕した。
私の人生になかった予算なので、何を削って、化粧品代にあてればいいのか困ってしまった。これまで不要だったお金なので、お金をかけるのがもったいないと思ってしまう。
かくて、私のポーチには、コンビニコスメとドラックコスメしかない。
化粧品売り場でBAさんに商品をすすめてもらうという経験もしたことがなかった。

そんな、私、が!
50歳を目前に、突然、そうだ! メイクをしようと思い立った。
思い立ったが、何をどうしていいのかわからない。
というか、そもそも、私の化粧ポーチにはアイライナーとアイブロウ、たまに使うシャドウとリップくらいしか入っていない。

そういえば、友人がメイクを習ってから全然顔が変わったと話していたのを思い出し、同じ人のメイクレッスンを受けてみることにした。
友人が薦めてくれたアーティストさんの予定表を見ると、全国の百貨店を転々としているようだ。そして、昨日が梅田の日だった。お。行けそう。

そう思った私は、昨日、行ってきました。梅田の阪急。
「お待たせしましたー」とやってきた男性は、韓流ドラマに出てきそうなめちゃくちゃ色白の毛穴レスの美男子だった。口元にはほんのりピンクのリップ。
「今日はどんなメイクにします? うわあ、肌が綺麗ですねえ。ミュートメイクが似合いそう」
という。
ミュートメイク……。多分、カラーレスなメイクのことだろうなと想像する。
ええと、普段メイクをしないもので。メイクの基本を教えてほしいですとおずおず伝える。

「まっかせてください! 肌は、そうですね。バブみを出しましょう」

バブみ……。一応、言葉の意味はわかる。あれだろう。赤ちゃん肌というやつだろう。
だけどな、こちとらもう、50歳だぜ。時代が時代なら孫がいたっておかしくない歳だぜ、さすがにそれは先生無理ではないでしょうかなどと思う。

あれよあれよというまに、私の顔はめちゃくちゃいろいろ重ねられて「メイクしていない風」に仕上がっていった。

そうか、人はこの「メイクしていない風」の顔に、大枚をはたくのであるなと勉強になった。
一方で、だったら、メイクしないでいいのではないかとも思った。
思ったけれど、そう、私は今日、心を入れ替えるためにやってきたのだ。

家に戻ったら息子に「顔、白っ!」と言われた。
やっぱり。ママもそう思っていたよ。

あのブランドの一番濃ゆいファンデを使ってくれていたのだけれど、私の日焼け肌、そもそもそのブランドのラインナップでまかなえる色じゃなかったんだろうと思う。アーティストさんも、おーい、うちのブランドターゲットじゃない人がきちゃったよと思っただろうな。

綺麗への道は遠い。

※「今日もコレカラ」は朝7時に更新です。バックナンバーが読めるようになりました。

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