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今日から自分は生まれ変わる【今日もコレカラ/第694回】

10年以上前に取材させてもらった美容院での話。
それまでスタッフに対していつもイライラ怒鳴り散らし、あれができない、これもできないのかと怒ってばかりだった経営者がいた。当然スタッフはどんどん辞めていく。「ここまで育ててやったのに、恩知らず」と、また怒りが爆発する。
その彼が、ある日突然改心した。

きっかけは、先輩美容師にアドバイスされたからだったか、本を読んだからだったか、取材したのに忘れちゃったけれど、とにかくある日突然「俺は、こんなんじゃダメだ。悪いのは全部俺のほうだったのだ!」と思ったらしい。

それで彼が何をしたかというと、当時4人いた従業員全員にむかって、「これまでの自分は間違っていた。みんなにも本当に悪いことをした。心から謝りたい。今日から自分は生まれ変わりたいと思う。今までが今までだから信じられないと思うし、自分もすぐに変われるかわからないけれど、精一杯努力します」と、頭を下げたそうだ。

これは、相当勇気のいる行為だっただろう。それまで怒鳴り散らしていた相手に頭を下げたのだ。

その後、その経営者の方は、スタッフの人たち一人ひとりと話をして、どんな美容院であれば働きやすいかを聞き、課題をひとつずつ改善していったそうだ。もちろん、耳が痛くなるような自分への不満も聞いた。
それでも「自分は生まれ変わるのだ」と、ひとつひとつ対処していったという。

取材をしたときは、そんなXデーから5年経ったときだった。その時の従業員はその後誰一人辞めておらず、その後入社したスタッフも「こんなに働きやすい職場はない」と話をしてくれていた。

先日、その彼のフェイスブックが更新されていて、スタッフのみんなとの写真がアップされていた。
驚いたことに、10年前の顔ぶれがまだそこにはあって、みんな本当に楽しそうに笑っていて、ああ、本当にいい会社になったのだなあと思ったらじーんとした。
私はこの方から、自分の非を認めてあやまること、改心すること、それはいくつになってもできるのだと教えてもらった。

ところで、私は先日、土下座に近いお詫びをした。だいぶ歳下のお相手だ。
私の発言が思わぬ方向で受け取られていて、先方を非常に傷つけ怒らせてしまっていたのだ。
その話を聞いてひと晩考えた。そんなつもりで言ったわけじゃない。こちらの意図も汲んでほしいとか、最初はそんなことを思っていた。でも、よくよく考えたら「その意図を伝えられなかった件も含めて、完全に私の非である」と思った。長い付き合いだからと、私が甘えていたのだろう。

頭を下げ、不徳を詫び、生まれ変わったような気持ちでひとつひとつ改善したいと思うと伝えた。最後には「これまでのことはいったん水に流して、もう一度楽しくやりましょう」という話になって、私はとても大切な人を失わずに済んだ。

くだんの美容師さんのおかげである。

※「今日もコレカラ」は朝7時に更新です。バックナンバーが読めるようになりました。

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