
誰に褒められるよりも【今日もコレカラ/第828回】
ライターになってすぐ、編集者さんに、「ライターとは、折り紙の折り方や風呂敷のたたみ方を、写真なしで伝える仕事です」と言われた。
ほどなくして私はヘア専門ライターになり、「ヘアアレンジ」のページを作るときに、その言葉を何度も噛み締めることとなった。
よく仕事をさせてもらう出版社に、名物校閲と言われる方がいた。
雑誌の校了日が近づくと、校閲質問を受け取った編集者さんから、よく電話がかかってきたものだ。
「校閲さんから、『この原稿の通りにヘアアレンジすると、ピンの方向が逆になってしまいませんか?』と質問がきています」
といった具合だ。
ん? と思いながら、原稿の通りに手を動かしたら、たしかにその通りだ。それ以来、写真を見ずに、原稿だけでそのアレンジができるかどうかを必ず確認するようになった。それでも毎月、どこかは質問の鉛筆が入ってきた。
書き方に自信が持てないときは、先輩ライターさんたちの過去の記事を調べた。なるほど、こうやって書けば伝わるのかと勉強になった。よってたかって、いろんな方に育ててもらったと思う。
ライターになって5年目くらいの時だっただろうか。
まるっと1冊100ページ超のヘアカタログの原稿を全部任されたとき、久しぶりにその校閲さんがご担当くださった。
ちょっと緊張しながら原稿を引き取りにいったら、「私が言うのも僭越ですが、原稿、上手くなりましたねえ」と言われた。「あなたの原稿は、ほとんど質問を入れなくてすむから、楽ですよ」と言われたのには、思わず込み上げるものがあって、慌ててトイレにかけこんだ。
誰に褒められるよりも、あれは、嬉しかったなあ。
今の時代は、動画でも写真でも、ひと目でわかる表現方法がいろいろある。
でも、文章だけで伝えられるなら、それが一番省エネだし、ライターは皆、当たり前のようにそれができていたわけだ。
そして、今の時代であっても、動画や写真を使わず文字だけで表現しなくてはならない場面は多い。小説やインタビュー原稿などは、文章だけで読者を現場に連れていく必要がある。うまい人の文章は、登場人物が目の前で動き出す。
そういう文章を書きたい、と思う。
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「新しい時代をクリエイトしていくクリエイターが、クリエイティビティを発揮できるためのクリエイティブを……」
……すみません、もう1回いいですか?


