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ママにもし、何かあったら……と書いた日【さとゆみの今日もコレカラ/第752回】

昨年のちょうど今ごろ。
私は生まれてはじめて、商業出版ではない自分の本をつくっていた。きっかけはCORECOLORのクラウドファンディング。この『今日もコレカラ』を1年分、1冊にまとめた本をリターンにしようとなったからだ。

毎日24時間で消しているこの文章は、ときどき、「昨日のを読み逃しました」とか「毎日分、PDFにしています」などの声を聞いていたので、それをひとつにまとめて読めるようにしたら、ひょっとしたら何人かは買ってくださるのではないかと思ったのだ。

これまでも、師匠の還暦祝い、友達の結婚式の冊子、先輩の退職祝い、出版記念パーティで配る冊子など、商業出版ではない本を作った経験はあった。だけど、それらはあくまで「プレゼント用」であって、販売するものではない。

どんなふうに作ろう……。どんなものだったらみなさん、買ってくださるだろうか。

そんなことを考えはじめたとき出会ったのが「藤原印刷」の名前だった。
私が通っていたある勉強会に、藤原印刷の藤原章次さんが登壇されたのだ。

その時、章次さんが持ってきてくれた本(それら、出版社から出しているのではない独創的な本を、章次さんは「クラフトプレス」と呼んでいた)には驚かされた。
え、こんな表紙で作れるの? こんな加工ができるの? そしてなにより、なんで印刷会社の人が、こんなに「アツく」本について語っているの……?

驚いた私は、勉強会の休憩時間に「藤原印刷」を検索した。
これまで、出版業界で20年以上働いていたけれど、初めて聞く名前だった。
だけど、検索をかけると「藤原印刷」の名前は非常に有名だった。「いつか藤原印刷さんで印刷してもらうのが夢!」「うわあ、すごい造本だと思ったら、やっぱり藤原印刷さんか」「この装丁、ヤバい。さすが藤原印刷!」
そんなコメントをいくつも見かけた。

自分の本を自分でつくるなんて、人生で最初で最後の経験になるかもしれない。
『今日もコレカラ』は、藤原印刷さんにお願いしたい! 目の前の「人の本をつくること」に対して、出産の話をしているのだろうかと思うくらい暑苦しいほどの愛で語るこの人に、私の本の出産を手伝ってもらおうと思ったのだ。

「藤原印刷さんで印刷させてもらうことにしようと思う」
そうCORECOLORのメンバーに伝えたら、何人もから「憧れの!!!」「羨ましい!!!」と連絡がきた。
そうか、知らないのは私だけで、そんなにリスペクトされている印刷会社さんなのだなと、あらためて驚いた。

途中を全部すっ飛ばして結論にいってしまうけれど、私は藤原印刷さんで本をつくることができて、本当に良かったと思っている。なぜかというと、死ぬことに対しての恐怖がだいぶ薄まったからだ。

この『今日もコレカラ』は、昨年の年末から年始にかけて発送させてもらった。
で、年始に今年私は家族と親しい友人たちにむけて遺書を書いたのだけれど、その遺書を書いたあと、「ああ、これで万が一、今年死ぬことがあっても安心だ」と思った。

遺書を残せたからだけじゃない。
その遺書に、「もしもママに何かあって、もう現実世界で会えないとしても。寂しくなったら、ママが書いた文章の中に、ママはいます。こんなとき、ママだったらどうするかなあと思ったら、ママが書いた本を読んでね」

と、書けたからだ。

これは、『今日もコレカラ』をつくる前は、思えなかったことだ。それくらい、この『今日もコレカラ』は、私そのものだな、と思った。この366日の毎日の記録に私のほとんど全部があると思えた。

そして、そんな本をつくれたひとつの理由は、藤原印刷さんだ。

そんな藤原印刷の藤原兄弟(隆充さん・章次さん)に、インタビューをさせていただきました。
書いてくれたのは、長野にある藤原印刷さんの工場に一緒に見学にいったライターの高山しのぶさん。

みんなが憧れる藤原印刷さんは、何が違うの? どう違うの? 私は何に感動したの? 

そして、自分の著作の中で、過去イチ部数が少ない『今日もコレカラ』を、「私の分身」と思え、そして「一番読者さんに届いた一冊」と思ったのはなぜか。そんな話もお二人とさせていただきました。

いつか自分の本をつくりたいと思っているみなさんに、ぜひ読んでもらえたら嬉しいです。
『今日もコレカラ』は、こちらで買えます)

【この記事をおすすめ】

「いつか自分の本をつくってもらいたい!」 多くの書き手が憧れる藤原印刷さんに聞いた。何が違うの? どうすごいの?

【さとゆみゼミ6期生を募集します】

11月24日(月・祝)の20時から、オンラインの説明会&質問会(アーカイブあり)があります。ゼミ生が5名(+昨年のチューターさん2名)参加して、率直な感想を話してくれます。
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「今日もコレカラ」は毎朝7時(頃)にアップして24時間で消える文章です。今日もこれから、良い1日を!

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毎朝7時に更新して24時間で消える「今日もコレカラ」の1年分がZINEになりました。ご希望の方はこちらからご注文可能です。興味があること、お悩みごとなどを書いてくだされば、「○月○日の文章がおすすめ」とメッセージを入れてお送りさせていただきます。



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