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足切り書籍。爪切りエッセイ。【さとゆみの今日もコレカラ/029】

あるベストセラー著者さんが「ビジネス書を何十冊も書くのは、タコが自分の足を切るようなものだ」と話した。「このテーマならまだ書けるか、切り口を変えればもう1冊書けるかと、8本ある足を切り刻んで売って、いまは胴体しか残ってない」
恐ろしい比喩だ。

また、ある編集者さんは、こう言った。
「エッセイを書く時に、自分の身を切る必要はない。切るなら、爪とか髪とか、痛みのない場所を切りなさい。血を流してまで書かなくて良い」

いずれも、書くときの素材をどこに求めるかの話だが、ここから得られる教訓を考えた。

まず、この二つの話は、似ているようで違う。足は切ったら生えてこないが、爪や髪はまた伸びる。つまり、書くことで枯渇しないためには、新陳代謝する部位で書けばいい、もしくは自身の新陳代謝を早めれば良いと言えるだろう。

もうひとつ学べるのは、自分の人生を切り売りするスタイルには、限界があるということだ。だとしたら、書き続けるには素材を自分の外部に求める必要がある。もしくは、外部と自分の「関係性」を書く方法もある。視座と視点の組み合わせの数だけ、切り口が生まれる。

と、ここまで優等生ちっくに考えたのだが、ちゃぶ台を返す。
実は、足をばっさり切っても、もう一度生えてくる時があると思っているからだ。

一切の出し惜しみなく、根元からばっさり切断した時に限って、同じ場所から新しい足が生えてくることがある。その分野において、全てさらけ出しもう何ひとつ新しいことは書けないと思った時ほど、空っぽになった自分に新しい芽が吹き出す。
経験的にほぼ100パーセントの確率で、そうなる。だから出し惜しみしない方が安全だ。細かく切り売りせず、一本丸ごと差し出す方がリスクが低い。

今夜「しゃべりで稼ぐ」というテーマで講義をする。このテーマで足を切るのは初めてだから、いったん全部棚卸ししてすっからかんになろうと思う。話した後の自分が楽しみで引き受けた。

文/佐藤友美(さとゆみ)

※この文章は毎朝7時に更新され24時間で消滅します。今日もコレカラよい一日を。see you tomorrow❤️

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