
【さとゆみの今日もコレカラ/第764回】
CORECOLORで「炭田のレシピ本研究室」を連載してくれている炭ちゃんは、毎日の料理のすべてをレシピ本を見て作るのだという。
最初意味がわからなくて「え? どういうこと?」と聞くと、「私が作る料理は全部、誰かのレシピです」と炭ちゃんは言う。
びっくりした。炭ちゃんは「そういう人、結構いると思いますよ」というのだけれど、わたしは初めて聞いた。
私もレシピ本はそこそこ好きで家には30冊くらいある。それを見て作ることもあるけれど、基本は冷蔵庫の在庫を見て適当に作ることが多い。
炭ちゃんをはじめ、料理好きの友達とは「誰のレシピが好きか」という話をよくする。
わたしは和食だったら寿々木けいさん、笠原将弘さん、洋食なら鳥羽周作さん、ダニエル・マルタンさんのレシピ本をヘビーユースしている。
中でもボロボロになるまで愛用している『いつものごはんは、きほんの10品あればいい』(寿々木けいさん)は、X(Twitter)の140文字レシピがもとになっている。
140文字だから、食材と手順は載っているが、材料の分量や調理時間などはあまり記載がない。
私の家に遊びにきた友人は、そのレシピ本を見て「これ、いま人気の長谷川あかりさんのレシピ本とは真逆をいってますねえ」と言う。たしかに。手取り足取り初心者でも作りやすい長谷川さんのレシピに比べたら、作り手の匙加減(文字通り)に委ねられる範囲が広すぎる。だけど私は、けいさんのレシピがすごく好きだ。
それで、はたと気づいたことがある
私がヘビーユースしているレシピ本、どれも「元の味」というか「完成形の味」を知っている、ということだ。
「賛否両論」の笠原将弘さん、「SHIO」の鳥羽周作さん、「マキシム・ド・パリ」ダニエル・マルタンさん。何度かお店でその味を食べたことがある。
寿々木けいさんは調理人ではないけれど、けいさんの料理本の担当編集者さんが友人で、レシピ本に載っている料理を何度か作ってふるまってくれた。だから、こんな味というのは記憶している。
そうか。同じレシピ本でも、舌がその味(の傾向)を覚えていると、たとえ分量が曖昧でもこんなにも作りやすいんだな。そしてもともとの味が好きだから、自分が作ったときも美味しいと感じるんだな。
これは、ちょっとした発見だった。
そしてこれ、文章でも同じだなあと思う。
いろんなライティング講座がある。私自身も、過去に30-40人ほどの書き手や編集者さんの講座を受けて、いろんな「術」や「思考法」を習ったけれど、やっぱり、自分が読者としてよく読んでいる人から習ったほうが学びが多い。その人が書く文章や作るページをよく知っているときほど、その人の教えがすーっと身に入っていく気がする。
今日アップした炭ちゃんのレシピ本研究室も楽しい文章だから、ぜひみなさん、読んでくださいね。
今回紹介されている小田真規子さんのレシピ本、わたしは担当編集者さんが大好きで、このシリーズを全部持っている。この本の担当者さん「うんこドリル」の担当さんでもあり「さみしい夜にはペンを持て」の担当さんでもあるんだよ。すごいよねえ。
ああ、そうか、編集者さん軸で本を読むのも、やっぱり、さっきの話と同じだなあ。という話はまた今度。
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