
オーディブル甲斐があった作品(続編)【さとゆみの今日もコレカラ/第872回】
久しぶりに、「オーディブル甲斐があった本」選手権に躍り出てきた作品。
それが、
『本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む』
だったことを発表します。
過去に、これぞオーディブル甲斐がある(音声で聴く甲斐がある)選手権では
・『目の見えない白鳥さんとアートを見に行く』(白鳥さんと同じように、絵画を見ない状態で鑑賞ができるから)
・『板上に咲く』(渡辺えりさんの青森弁が最高)
・『国宝』(言わずもがな)
・『大名倒産』(あれだけの声を使い分けるとは)
・『僕には鳥の声がわかる』(途中入ってくる実際のシジュウカラの声が◎)
・『俺たちの箱根駅伝』(マラソンレース中に聞いて、最高だった)
以上の作品がノミネートされていましたが、これらの作品にまさるともおとらずの「オーディブル甲斐本」は、『本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む』(かまど、みくのしん)
この本は、その名の通り、32歳まで本を読んだことがなかった「みくのしん」さんが「かまど」さんに薦められて本を読むようになる話なのだけれど、みくのしんさんの本の読み方が「音読」なんですよね。
だからこそ、「音読」で初めて本を読めるようになったみくのしんさんの目線で(耳線で?)、作品を楽しむことができる。
この作品に関しては、イザエミちゃんとのポッドキャスト『本に酔いたい』でも話しました。よかったらぜひに。
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【バックナンバー】
京都でドキドキすること。ご近所様ご挨拶周り【さとゆみの今日もコレカラ/第871回】
出張で地方滞在が長くなるとき、私はいつも、その土地でお花を買う。一輪だけのことが多いけれど、ホテルのグラスに水を入れてお花を挿すと、それだけでその場所が「自分の場所」のようになって少し落ち着く。
京都に借りた家は、築98年の町屋だ。マンションの部屋を4つ見たあと、不動産屋のサイトにピコンと出たこの新着物件に、一瞬で惹かれた。問い合わせをしたら、まだ人が住んでいるので内見はできないという。
教えてもらった住所を頼りに、路地の奥にあるその家を外から見て、ひと目で気に入った。この家が100歳を迎えるときに、自分が住み主だったら素敵だなあと思った。
「立地が良いので、内見せずに決める人もいるかもしれませんね」
と言われ、その場で申し込みをした。
心配だったのは、京都での人付き合いだ。戸建てだと、マンションのようにはいかないだろう。
「ご近所へのご挨拶、どの範囲まで行くべきかな」と考えたのは、久しぶりだった。
不動産屋さんに相談したら、お隣とお向かいの2箇所だけでいいのでは、と言われた。いやいや、そんなことはないだろうと、東京から6個の手土産を持って行った。やっぱり、全部なくなった。
この感じ、とても久しぶり。
どきどきの京都暮らし、ご近所さまとの思わぬできごとを書きました。
よかったらご覧ください。
Apple Store京都の接客が素晴らしすぎた件【さとゆみの今日もコレカラ/第870回】
今日行ったApple Store京都の店員さんたちが、揃いも揃って(誤用)、素晴らしすぎた。
まず、店に入るなり、にっこり笑いかけて話しかけてくれたお姉さん。中にお客さんがたくさんいたので、今日の商品購入は無理ですかね?と聞いたのだけれども、大丈夫ですよと売り場の人にすぐ引き継いでくれた。
売り場の人は、別の人に接客をしていたのだけれども、お姉さんはとても上手に会話の合間に割り込んで、「この方がiPhoneを購入されたいそうです」と耳打ちしてくれた。そして、待たされることなく案内してもらえた。
売り場担当の男性も、下取りの方法を丁寧に教えてくれ、もしも携帯キャリアの方で下取りのプランを選択しているのであれば、Appleで下取りに出さないほうが良いよなどと丁寧に教えてくれる。
その合間にも、いろんなお客様に声をかけられているが、ちょっとだけお待ちくださいねと言って、ものすごい数の客を次々と接客していく。
商品を持ってきてくれたお兄さんはお兄さんで、「これ、すごくいい商品なので楽しんで欲しいな」と、にっこにこで手渡してくれる。「本当にいい買い物をしたね!」的な笑顔が嬉しい。
会計の待ち時間に、iPhoneケースを見ていたら、また別の店員さんが声をかけてくれた。そして、私が買ったのがiPhoneAirだとわかったら、Airはケースをつけないほうが良いですよと、アドバイスしてくれた。ケースを買わせたほうが売り上げになるだろうに、裸のまま持っても良いと考える理由を教えてくれた。
何もかもが、気持ちの良い接客で、こんなに素晴らしい接客を受けたのは、何年ぶりだろうと思ったくらいだ。
その直前に行った、携帯キャリアの会社の対応が、揃いも揃ってひどすぎたので(こちらは正しい日本語の使い方)、ギャップの大きさも感じた。
どういう教育をすれば、この天と地ほどもある接客の差になるのだろう。
何はともあれ、私に接客をしてくれた、Apple Store京都の4人の店員さん。20万円以上使ったけれど、良い買い物だったなと思わせてくれてありがとう。
もう買うものはないけれど、また行きたいです。
らびゅー。
編集者のいる原稿、いない原稿【さとゆみの今日もコレカラ/第869回】
今日コレを毎日書くと決めたとき、ほとんどの連載をおろさせてもらったor不定期連載にしてもらった。
毎日これを書くことを考えると、それ以外にいろんなメディアで書ける気がしなかったからだ。
2年半たって、だいぶペースも掴めるようになり、また、エッセイやコラムを媒体で書かせてもらうようになってきた。
そこで思うのは「編集者の存在の大きさ」だ。
まず、そもそも連載の方向性を一緒に考えてもらえる。
・いま、どんな記事が読まれているのか
・どんな読者に向けて書けばよいのか
・その媒体の中で私の記事はどんな立ち位置にいればいいのか
・連載の内容をどんな内容にするか
などを、ゼロから相談させてもらえる。
書いた原稿に関しては
・誤字脱字、事実の確認、日本語表現の甘さ
・推敲時に迷ったところへの指摘
・修正や追加取材した方が良い部分への指摘
・タイトルやリードの提案
などなどをしてもらえる。
今年に入ってから書いている連載4本で、私の原稿がそのまま採用されるケースは、これまでのところ、ゼロだ。
こんなに寄ってたかってみなさんに良い原稿にしてもらえるのだ。なんて幸せなのだろうか。
逆に言うと、自分だけで書いている原稿がいかに甘ちゃんかもわかる。
もっとうまくなりたいよー。
男だけじゃなく女も。集団浅慮【さとゆみの今日もコレカラ/第868回】
新卒で入社したテレビ制作会社で、大チョンボをしたことがある。
築地市場を縦横無尽に走り回る番組企画ロケハンの日、その許可証を持っていたADの私が、6時間の寝坊をしたのである。
目が覚めたら着信が17件あった。「いまどこ?」の留守電も4件入っていた。
この日は会社の上司だけではなく、テレビ局のプロデューサーも参加する日だった。
そのプロデューサーの足止めをしてして、ぐーすかぴーすか6時間も寝ていたのである。
目が覚めたときの「私の人生終わった……」感は半端なかった。
だから、待ち合わせから8時間後に現場に到着した私を、みんなが爆笑で迎えてくれたことには、もう心の底から感謝したし、
「お前、バツとしてあしたから1ヶ月ミニスカート履いて会社にこい」と言われたときに、「うわああああああああ。坊主にしてこいとか言わない上司、優しすぎる」って思った。
これまじで。
いま考えるとだいぶやばい。
そんなことを思い出しながら、古賀さんの『集団浅慮』を読んでいます。
集団浅慮の書籍のサブタイトルには、「優秀だった男たち」はなぜ道を誤るのか? 」とあるけれど、同時に、「優秀だったはずの女たち」も、道を誤るのではないかと思っている。
いや、自分が優秀だったという意味じゃなくて。男がおかしかったのであれば、それは男だけの話ではないはずで。
この本については、また、ゆっくり書きます。
これで髪の毛が増えた! と書きたいのだけれど薬機法に触れるので書けない【さとゆみの今日もコレカラ/第867回】
久しぶりに書籍の編集を担当させていただきました。
『老けない人の「指リフト」』

ヘアライター時代にお世話になったGarlandの和久井さん(別名・頭皮王子) が渾身の力でかめはめ波した、頭皮ケアについての書籍です。
この本、頭皮やヘアについての正しいケア方法がわかるのはもちろんなのですが、1日3分、これだけやっておけばOKという「指リフト」マッサージを推奨しています。
私もヘアライター歴がそれなりに長いので、「まあ、マッサージしたら血行よくなるよね」ということは知っています。
頭皮マッサージは、たしかに髪にも頭皮にも良い。
でも、それって健康的な食事をするといいよーくらいの、即効性がない感じだよね、と思っていました。
ところが!
今回、この本を発売するにあたって、3ヶ月間モニターをしてくださった人たちが!!!!
薄毛に悩んでいたみなさんたちが、そろいもそろって、髪が増えてきたんです。
これ、正直なところ、ここまでとは思っていませんでした。
1日3分のマッサージで、目に見える効果が出るとは思わなかった。
ということを声高に叫びたいのですが、いろいろ薬機法に触れるので、お察しください。
原稿はさとゆみゼミの、あつお、こと、はせべあつこさんが書いてくれました。
デザインは超売れっ子デザイナーのかときょさんこと、加藤京子さん。
ぜひぜひ、お手にとってくださいね。
薬機法で書けないけれど……お察しください。
重要なのは、AIを使ったかどうかではなく、「AIがあなたなしでもそれを作ることができたか」どうかだ。【さとゆみの今日もコレカラ/第866回】
「non-fungible writer(代替不可能な書き手)」という概念について書いた、ノア・ブライアーのエッセイ The Non-Fungible Output Edition を、とても興味深く読んだ。
私たちはよく、「AI時代にライターはどう生き残るか」という話をするのだけれど、ここに、「代替可能な書き手」と「代替不可能な書き手」という概念を投入すると、話が整理しやすくなるように思う。
このエッセイには、こんなことが書かれている。
The test isn’t whether you used AI. The test is whether AI could have done it without you. If you removed yourself entirely from the process, would the output be materially different? If not, you’re fungible.
重要なのは、AIを使ったかどうかではなく、AIがあなたなしで同じことをできたかどうかだ。もしあなたがプロセスから完全に身を引いたとしたら、結果は大きく変わるだろうか? そうでなければ、あなたは代替可能な存在だ。
自分の介在価値をどこにおくか。
人によってはそれを、インタビューに置くかもしれないし、そもそもその人にアポがとれるといった、コミュニケーションにおくかもしれない。構成の妙におくかもしれない。
私の場合、それは企画かなあと思う。
私がいなかったらそもそもスタートしなかったインタビュー、
私が存在しなければそもそも書かれることがなかった文章。
とはいえ、存在すればいいというわけでもない。
先ほどの文章に続く、この部分がブッ刺さった。
“Culture fails, or should fail, because it’s of poor quality, not what tools it was made on.”
「文化が失敗する、あるいは失敗するべき理由は、それが作られたツールではなく、その質が低いからだ」
ぐぬぬぬ。ぐぬ。
鋭い人はなぜ優しいのか【さとゆみの今日もコレカラ/第865回】
テレビの業界で働いていたとき、よく聞いた話があった。
急に売れっ子になった人の中には、偉そうな対度をとる人もいるけれど、長年活躍している超売れっ子の人は人格者が多い。
これはたしかにと思うことが多かった。
本当に第一線で活躍している方たちは、自分の仕事について考え尽くしている。
自分の仕事のパフォーマンスをあげるためには、他者に信用され、信頼されないといけないこともわかり尽くしている。
むやみに敵を作ることが、のちのちの自分の仕事の足を引っ張ることも知っている。
大御所と言われる人ほど、人に優しい方が多かったなあと思い返す。
先日、この業界にこの方ありと言われるような、大御所中の大御所の書き手の方のお話を聞いた。
非常に鋭いメスで社会課題を切る方で、その筆致は一言一句研ぎ澄まされている。
でも、実際にお会いしたら、とても細やかな気遣いをなさる方で、信じられないくらい優しい方だった。
だからこそ、こんな鋭く突っ込んだ取材ができるのだとしみじみ感じた。
厳しさと優しさは両立する。
人に対して優しい人は自分に対して厳しい。
そんなことも思った。
得難い経験をさせて頂きました。
恩送りせねば。
傷口に粗塩タイプ【さとゆみの今日もコレカラ/第864回】
傷ができたところが、ちょっとずつ治癒し、かさぶたになる。
そのかさぶたをはがしたくなるタイプの人がいる。
私だ。
はがすだけじゃなくて、なんなら、そこに塩どころか、粗塩をもみこみたくなる。
最悪の状態を想像して、さらにそれ以上の最悪をイメージする。
すごく痛そうだ。それに比べたら、いまはだいぶマシ。
と、考える変な思考回路が自分の中にある。
息子と飛行機に乗る。
めっちゃ揺れる。落ちたらどうしようと思う。
自分たちが乗ったこの便が墜落ところを想像する。めちゃくちゃ怖いと思う。
さらに、落ちたあとに、自分だけ生き残る最悪of最悪を思い浮かべる。
ああ、それに比べたら落ちて2人とも死ぬほうがずいぶんマシだなと思うと落ち着いて眠くなる。
眠っている間に、着陸する。
過去にこんなことを30回くらい考えたなあと思う。
今日も今日とて粗塩もみこむような読書をしていた。痛え。
そういうタイプの人、います?
同じことを聞かれても違うことを答える不思議【さとゆみの今日もコレカラ/第863回】
火曜日から、45人分、45分ずつのインタビューを受ける日々が続いている。
そこで、なんだかすごく不思議な体験をしている。
これだけ人数が多いと、同じ質問をされることがままある。
そのとき、同じ質問に対して、同じ答えを返していないことに気づいたのだ。
その前の話の流れによって、同じ質問に対する答えがyesだったりnoだったり、ummmmだったりする経験をしている。
Aさんに対しても、Bさんに対しても、適当に答えているわけじゃない。どちらかに嘘をついている気持ちもない。
それが、たったの数日、数時間の差でおこるものだから、つくづく、人は「あとから理由をつくる」生き物なのだなと気づいた。
質問される文脈が変われば、その文脈にそった回答を脳が導き出す。
どっちの答えもそのときの「ほんとう」だなあと思うし、だから「ほんとう」なんて、ないようにも思う。
貴重な経験。
今日の塚田智恵美さんの原稿も、そんな「共犯者」になる話です。
30年のうち、いま、15年。【さとゆみの今日もコレカラ/第862回】
先日から「能登に行ってきました」「明日から能登いきます」「いま、能登です」というさとゆみゼミメンバーからの連絡が続いている。
とても、嬉しい。
さとゆみゼミの仲間が能登で被災し、その後「能登の現状を伝えてくれるメディアがどんどん減ってきた」と相談を受けたのが、2024年の夏。
その後、ゼミ仲間と一緒に能登に入り、「能登のいま」と題したリレー連載を23回更新している。
そのとき一緒に行けなかったメンバーも、その後、能登に足を運んだり、過去に取材した先を尋ねたりして、それぞれがそれぞれに能登と関わり続けている。
ボランティアにいったメンバーもいるし、クラファンのお手伝いをしたメンバーもいる。
先日は、依頼を受けて、政策提言のもとになる県副知事やNPO団体のインタビューをとりまとめる仕事もさせてもらった。
ゼミの仲間からの相談をきっかけに、こんなふうに、みんなで能登を訪問し続けられているのが嬉しい。能登についてみんなが書いてくれるのも嬉しい。
*
明日は3月11日。東日本大震災が起こった日から15年たつ。
この日が来るたびに思い出すTwitterの投稿がある。
「まずは自分の道を。わたしはこうして出来るようになるまで30年かかったよ」
東日本大震災のときに、自身でトラックを多数手配し、被災地に物資を送り続けた野口美佳さんの投稿だ。
私はいまでも、この投稿を一字一句はっきりと覚えている。
15年前、何もできない自分に、とても響いた言葉だった。
15年間、自分の道を歩いてきた。
15年前にできなかったことが、たくさんの仲間と一緒にできるようになった。野口さんがいう「30年」まで、あと15年ある。
これからも、書く仲間たちと一緒に、あったかい地球のためにできることを、ひとつずつ。


