「アニメと声優」徹底分析(前編)【運ちゃんのウィキペディアのおかげです/第21回】
長年ウィキペディアを眺め、寄稿し続けた運ちゃんが、ウィキペディア日本版のページビュー(以下PV)を分析します。リニューアル第1回目の今回は、ウィキペディアを使って「アニメと声優」について考察します。
ウィキペディアはInstagramよりも閲覧数の多い、ウェブサイトPVのTOP10に入る巨大サイトです。ウィキペディアで検索された上位PVページを見続けていると、決してニュースを見ているだけではわからない、リアルな日本の今を知ることができると感じます。
今回はウィキペディアでも閲覧されることが多い「アニメ」と「声優」について2回にわたりお届けします。今回はその前編。「アニメ作品」について考察します。(「声優」さん徹底分析の後編はこちら)
最も閲覧されているのは人以外では「アニメ」
「ウィキペディア」日本語版のページは約140万ページ(2024年2月現在)あります。毎日10ページずつ読んでも40年かかる分量です。しかも日々増加・変更されています。
どんなページがよく閲覧されているのか。月間10万PV超えのページ(*1)を区分し大きく2種類にわけたところ、「人(グループ含む)」が6126ページで、「人以外」は4591ページでした。さて、人々が関心の高い「人以外」のページは一体どんな内容なのかを確認していきます。まずはカテゴリ分けした大分類の表をみてみましょう。
*1・・・月間10万PV超えのウィキペディア日本語版:1万717ページを必ず1つのカテゴリに分類(カテゴリ数は200以上)/集計期間は2015年7月から2024年2月までの104か月のうち、一度でも月間10万PVを超えたことがあるページを集計。(過去8年8か月)
アニメ作品、ドラマ作品、映画、スポーツ関連用語、漫画や小説・アニメ・実写作品など複数メディア化されているものなどのエンターテイメント関連のページが全体の約3分の2を占めます。
私が上記の集計をみて改めて驚いたのは、これほどまでに多くの方が「アニメ作品」の情報に興味関心を抱き、ウィキペディアを読んでいるということです。人以外の4591ページでは「アニメ作品」が最も多く721ページありました。まさか政治・歴史・事件・事故・戦争・病気・自然をすべて合わせたページ数よりアニメ作品の方が多いとは!
ドラマより数が多いアニメ作品
先ほど見たように、ウィキペディアにおいて、月間10万PV超えのページは、「ドラマ作品」よりも「アニメ作品」のほうが多くなっています。そこで、「ドラマ作品」と「アニメ作品」の詳細をグラフ化してみました。まずはドラマ作品を確認していきましょう。
最近ではNetflix『サンクチュアリ -聖域-』『全裸監督』などインターネットでの配信をメインにしたドラマ作品も増えてきましたが、その数はまだまだ少ないです。全体の8割以上が、旧来通りのテレビ局が制作する連続ドラマでした。TOPは、プライムタイム(19時〜23時)で5番組を揃えるフジテレビ。2位は火・金・日のプライムタイム3番組ですが、日曜劇場や金曜ドラマでヒット作品を量産しているTBS。3位は4月から土曜日にドラマ枠を集中させる日本テレビ、4位は朝ドラ(連続テレビ小説)や大河ドラマという強力枠を持つNHKです。
続いてアニメ作品をドラマ作品と同様に分類しようとしたのですが、その違いが大きくて驚愕しました。
アニメ作品はキー局のネットワークに属さない独立放送局で放送される「UHFアニメ」が最も作品数が多く、続いてCS放送アニメ専門チャンネルの「AT-X」です。民放キー局とNHKで全体の8割を超える「ドラマ作品」とは大きく異なり、アニメ映画を除き集計すると「UHFアニメ」と「AT-X」で過半数を超える約6割でした(*2)。
「UHFアニメ」とは日本の地上波テレビ放送において、独立放送局を中心に放送されるアニメを指します。たとえば、関東ではキー局ではなくTOKYO MXで放送されているような作品がそれに当たります。アニメ映画『千と千尋の神隠し』を19年ぶりに超え、歴代日本興行収入1位を記録した2020年公開の映画『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』が世界的な人気作となった『鬼滅の刃』も、アニメ化の最初は「UHFアニメ」でした。映画ヒット以降、続編の地上波放送はフジテレビ系列となりました。
また先ほども例にあげた『【推しの子】』は、新シリーズが4月からはじまります。こちらは前シリーズ同様、民放キー局ではなく「UHFアニメ」として独立局で放送され、AT-X・ABEMAや数多くのプラットフォームで配信されます。実写化も決まり、映画は「東映」配給、配信は2015年に日本に上陸した「Amazon Prime Video(プライムビデオ)」での世界配給です。
✳︎2・・・放送局は便宜上キー局で分けていますが、実際の制作は準キー局が担当しているケースがテレビドラマ作品より多く目立ちました。「UHF」と「AT-X」の両方で放送されているアニメ作品は多いのですが、分類の都合上どちらかより制作に近い方に振り分けしています。
独立放送局の中では、特に年間で再放送含め240作品以上を放送しているTOKYO MXがアニメにチカラを入れており、テレビ東京の子会社でもある「AT-X」や様々なマスコミや業種が製作委員会をつくりアニメ作品を作る場合も多いです。
世界中から愛される日本の「アニメ」
続いて、2023年のウィキペディア日本語版ページ「人以外」PVランキングを確認してみます。
TOP12の半数がアニメ関連のページです。そしてアニメ関連のウィキペディアページは英語版はもちろん様々な言語のページが存在することが、ドラマ作品と大きく違います。NHK大河ドラマ『どうする家康』が中国語・韓国語とイランなどで使われているペルシア語、そして日本語の4言語なのに対し、『鬼滅の刃』は世界で51言語でウィキペディアページが作成されています。ウィキペディアの多言語化という点だけでみても、日本のアニメは世界でしっかりと認知されていることがわかります。
対グローバル的にも日本の武器として紹介されるアニメ産業。産業規模はこの10年で倍増しているそうです。すでにアニメ市場の半分以上は、海外のファンが支えているという記事を読んでもさほど実感が湧きませんでしたが、ドラマ作品と比較することでやっと腹落ちしました。
ウィキペディアのカテゴリ分け
私は、ウィキペディアのPVを見続けることで、今まで見えてこなかった新たな人々の興味関心や行動が少しわかってくるのではないかと期待し、日本語版の月間ランキング1000位以内のページを毎月、200種類以上のカテゴリに分類しています。今回アニメやドラマを調べていて改めて、ウィキペディアページの分類方法について考える機会になりました。
ウィキペディアではページの情報量が多くなると、ページが細分化されるケースがよくあります。ページを分割するには、まずは誰かがページの分割を提案し、複数人で確認・議論する必要があるので、少なくとも1週間以上の期間が必須となります。更新後も、更に読みやすくするために分割したり、時には統合されたりする「常に変化する百科事典」という特徴はウィキペディアの面白い点です。
今回のアニメのケースでいうと、『呪術廻戦(月間147.7万PV/2020年12月)』は2018年に「漫画」に分類され、2021年につくられた新しいページの『呪術廻戦(アニメ)(月間20.6万PV/2023年7月)』は「アニメ」に分類されています。
漫画作品が原作で、2024年に実写化もされる『【推しの子】(月間111.7万PV/2023年5月)』は2020年につくられました。PVが多くなかったためずっと未分類でしたが、アニメ化される前月の2023年3月に私が毎月ウォッチしている月間ランキング1000位以内(月間6.7万PV/605位)に入ったため「漫画」のカテゴリに分類しました。さらに、アニメ化されてすぐに人気のページ(月間96.7万PV)になったので、カテゴリを「アニメ作品」に変更しました。
このあとはちょっと複雑なのですが、『【推しの子】 (アニメ)』というページが2023年10月につくられ、翌年月間ランキング1000位以内(826位)に入ったため、このページのカテゴリを「アニメ作品」に分類。同時に「アニメ作品」に分類していた『【推しの子】』を「複数メディア」に変更しました。漫画、アニメ、小説、実写のドラマ・映画、ゲーム、舞台、音楽コンサートなどメディアの垣根を超え多角メディア展開をしているということを表すカテゴリ名として「複数メディア」を使っています。
作品によっては、ページを分割せずに1つのページのまま掲載される場合もあります。また、元々は漫画作品であるけれど、アニメでPVが増えたためカテゴリを「アニメ」としているページもあります。独自のルールでカテゴリ分けを行っているため、カテゴリ分けはあくまでも便宜的なカテゴリ分けであることを最後にお伝えさせていただきました。
明日の後編ではアニメ作品に欠かせない声優さんを分析します。2023年に注目された声優さんTOP200のプロファイルや上位ランキングなどと共にお届け致します!
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大人になるにつれてアニメを観る機会が少なくなりました。大学生の時に専門外の社会学ゼミに入り、そこで話題になっていた『新世紀エヴァンゲリオン』が、アニメを観て深く考察した最後の機会だったはず。しかし今回、久しぶりにアニメにハマり、自分が小学校の頃はアニメが大好きで雑誌の『Animage(アニメージュ)』や『アニメディア』を隅から隅まで何度も読んでいたことを思い出しました。
今回「アニメ」と「声優」について取り上げるにあたって30年ぶりにテレビアニメをどっぷり観ました。アカデミー賞長編アニメ映画賞『君たちはどう生きるか』はまだ観れてませんが、『ルパン三世 カリオストロの城』『未来少年コナン』『機動戦士ガンダム』『美味しんぼ』といった旧作を見返しました。声優さんが変わってからしっかり観てなかった『ドラえもん』『サザエさん』、そして4月に劇場版シリーズが27作目が公開される『名探偵コナン』を観て、面白いからシリーズ化されるという当たり前のことを体験できました。
もちろんウィキペディアPVのTOP3の『【推しの子】』、『呪術廻戦』、『葬送のフリーレン』もしっかり観ました。呪術や魔王がでてくるのは小説だけで良いと考え、食わず嫌いでしたが人気のアニメ作品はしっかりその世界観に没入させてくれます。面白い。やっぱりアニメっていいですよね。特に『【推しの子】』は自分が20代の時に働いた世界が描かれていたので懐かしさもあり凄く楽しめました。普段アニメを観ていない方も、是非チェックしてみてください!
参考:
・「世界で荒稼ぎする「日本アニメ」熱狂と混沌の今」東洋経済オンライン 森田宗一郎さん 2023/05/22
・「ジブリに新海誠、スラムダンク「日本アニメ」が世界で適正評価されるようになるまで」FRaU(KODANSHA) 渡辺由美子さん2024/1/16
・「数字でわかる!ANIMEは世界のZ世代へのキラーコンテンツに」電通報 清水瑛美さん 2023/09/26
・「アニメ産業の市場規模は過去10年で倍増!声優業界の変化から始めた新たな取り組み」株式会社アプラ(PR TIMES)2023/10/27
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文/運ちゃん
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