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「書き続けたかったから、脚本家の道を選んだ」。『40までにしたい10のこと』『セラピーゲーム』脚本家・齊藤ようさん

2025年7月期に放送された『40までにしたい10のこと』の後、2025年10月には『セラピーゲーム』、2026年1月からは『黒崎さんの一途な愛がとまらない』『この愛は間違いですか~不倫の贖罪』と、3クール連続で漫画原作のドラマ脚本を手掛けている齊藤ようさん。新卒で建設機械メーカーに就職し、その後、編集者やライターを経て2018年に脚本家デビューを果たしたという。デビューしてから『40までに』を担当するまでの7年間には、苦しい時期もあったという。「書き続けるために脚本家の道を選んだ」「編集者としての経験が今に活きている」と話す齊藤さんに、「書くこと」への向き合い方や、多くの原作ファンからも愛される脚本づくりの秘密を聞いた。

聞き手/中道 侑希
編集/佐藤 友美

震えながら引き受けた、ドラマ『40までにしたい10のこと』の脚本

――今回、齊藤さんにお話を伺いたいと思ったのは、ドラマ『40までにしたい10のこと』がきっかけでした。一視聴者としてドラマやSNSを楽しみに拝見していたのですが、「脚本が素晴らしかった!」という声が多く寄せられていたのが印象的だったんです。原作がある作品でそのように言われるのはとても難しいと思ったので。
その後も原作のあるドラマの脚本が続いていますよね。どんなことを意識しながら書かれるのかを知りたいと思いました。

齊藤:『40までに』はまず原作が素晴らしいのですが、ドラマに大きな反響をいただいたこと、そして脚本にも触れてくださった方がたくさんいらっしゃったことに本当に感謝しています。

――視聴者のみならず、原作者のマミタ先生も脚本を絶賛されていました。齊藤さんの脚本は「原作とオリジナルのミルフィーユ」だと。

齊藤:素敵な表現をしていただいて、本当に嬉しいです。実は脚本のお声がけをもらったときは「私に務まるだろうか」と不安で、震えながらお受けしたんです。原作の魅力や世界観を決して損ねてはいけないというプレッシャーがありました。

ただ、脚本制作を進める途中でマミタ先生とリモートでお話をする機会をいただいて。プロデューサーや監督と一緒に参加したのですが、先生から「映像のプロのみなさんにお任せしているので、ビビらずやっちゃってください!」と言ってもらったんです。その言葉に背中を押してもらいました。

――マミタ先生、かっこいいですね。

齊藤:かっこよすぎて、「先生とお話できて嬉しいです!」と一人で舞い上がってしまいました(笑)。

漫画原作を連続ドラマにする場合、ドラマの話数は決まっていますし、俳優さんが演じるにあたって違和感がないように物語を進める必要がある。そのためには、どうしてもオリジナルストーリーが必要になったり、原作とは話の順番を入れ替えたりする場面が出てきます。 オリジナル要素を入れるからには、絶対みなさんに喜んでもらいたいと思っていたので、今回温かい声を多くいただいてほっとしています。同時にこんなに喜んでもらえるんだ、こんなにやりがいがあるんだ、ということを知って、「脚本家として生きていこう」と改めて思えた作品になりました。

――いま、「脚本家で生きていこう」との言葉がありましたが、齊藤さんはライターや編集者を経て脚本家になられていますよね。今日はぜひ「書いて生きていくこと」への想いも伺えたらと思っています。 その前にまずは、齊藤さんの「書き方」について教えてください。特に原作のあるドラマの場合、どのように脚本を書いているのでしょうか。

齊藤:まずは原作の漫画を読みながら、「ここまでが1話かな」と、ドラマの話数にあわせて付箋を貼っていくんです。その作業が一通り済んだら、もう一度はじめから読み直します。そこで、「このエピソードは1話ではなく、6話のほうが連続ドラマとしてはいいかも」と思ったら、該当箇所に「6」と付箋を貼ります。その繰り返しで、まずはどの回にどのエピソードを入れるのかを大まかに決めていきます。

そうして構成が固まってきたら、1話ごとにA4用紙1枚程度にあらすじをまとめていく。いわゆるプロットの作成ですね。プロットができたらプロデューサーや監督と打合せをして、ブラッシュアップします。その後、原作サイドからもコメントをもらい、それを反映させたプロットができたら、ようやく脚本制作に取りかかる流れです。

――脚本を書き始めるまでにいくつもの工程があるのですね。構成段階で「このエピソードは1話ではなく、6話にしよう」と決めるのは、齊藤さんなりの基準があるのですか。

齊藤:うーん、感覚ですかね。

――感覚、ですか。

齊藤:もちろん「三幕構成(導入・展開・結末の三段階で物語を構成する手法)」のような基本のストーリー構成は意識していますが、以前、雑誌の編集の仕事をしていたときの感覚に近いと思います。いくつかの要素を、ああでもない、こうでもないと並べ替えていくと、あるとき「これだ!」とバチッとハマる感覚があるんです。

たとえばインタビュー記事などは、相手が話してくれたことをそのまま時系列で並べるより、構成し直した方が文章として伝わることがありますよね。冒頭と終盤で関連する話をしているからひとつにまとめようとか、中盤に出てきたこのセリフは印象的だから締めに持ってこようみたいに、全体を組み直して文章にしていく。原作の漫画からドラマの脚本をつくるのも、その作業と似ていると思います。

漫画は漫画としてベストな流れで描かれているけれど、それをドラマとして俳優さんが演じるときには、観ている人に届きやすい形に変える必要があります。その組み替えの感覚は、編集者時代と変わらないかもしれません。

――ライターとして、「組み替え」が重要であるということはわかる気がします。齊藤さんの脚本の特徴は、そうした原作の巧みな組み替えと、原作の世界観を壊さないオリジナルストーリーだと感じていますが、オリジナルのシーンはどのように書いているのですか。

齊藤:私の場合、オリジナル部分も原作のキャラクター設定やセリフからヒントをもらって書いています。ここは感覚でなくロジカルに組み立てていて、たとえば「このキャラクターの場合、同期がいればメンターになる」とか、「アパレルの姉がいるならそのお店に服を買いに行けばよりエピソードが深まる」とか。『40までに』に関してはオフィスラブだったので、会社員時代の経験が活かせたこともよかったのかもしれません。

あとは、「感覚」でも「ロジカル」でも、自分ひとりの判断では進めないようにしています。

――「自分ひとりの判断では進めない」とはどういうことでしょうか。

齊藤:オリジナル作品を含め、脚本を書く際は、わかったつもりにならないように、常に気をつけています。たとえば、初めて原作を読んだときに自分が受けた印象を大事にはしますが、その印象をあまり信用しないようにしています。

齊藤:物事をそのまま受け取るのではなく、「それって本当なの?」とまず疑ってみる。もしかすると、これも編集者の目線と近いかもしれないですね。「私はこう受け取ったけれど、客観的に見たときに本当に正しいのだろうか」と。

ですので、自分が原作から受けた印象に対しても「本当にそうなのか?」と自問自答しています。一度原作を読んだあと、時間をあけてもう一度読み返し、「こういうことかな」と思ったところで、今度はファンの方の感想を読みます。もし原作者の先生のインタビュー記事や作品に関する発言などがあればそちらも読んで、自分の解釈が合っているかを確認します。そうして少しずつ、原作の世界観を自分の中に染み込ませていく感じです。

オリジナル要素については、制作チームのみなさんにも「このアイデアで原作を壊さないでしょうか」と意見を聞いては脚本を修正する作業を繰り返しています。自分だけの感覚ではなく、みなさんの意見と照らし合わせて「これでいいんだ」という確信を得るようにしています。

“赤字”がもらえる打ち合わせの場が楽しい

――自分の感覚や思考を起点にしつつ、周囲からのフィードバックやアイデアも取り入れてチューニングしていくのですね。1話分の脚本が完成するまでに、どれくらいの打合せや修正を重ねるのですか。

齊藤:場合によりますが、3回から10回ほどでしょうか。1話分が書きあがるごとにプロデューサーや監督と打ち合わせをして、みなさんからいだたいた意見を私が集約して脚本を修正します。その作業を何回も繰り返して、最終的な脚本が完成します。

――大変な作業ですね。

齊藤:もちろん大変ですが、今は修正作業がすごく好きになりました。みなさん一人ひとりが「作品をより良くしよう」との思いから意見を出してくれるので、その内容を反映させると必ず良い脚本ができるはずじゃないですか。「その視点はなかったな」「良い表現だから取り入れさせてもらおう」と、学ぶことがたくさんあります。

――ライターが編集者から赤字をもらって、それを取り入れることで原稿が良くなっていくのと同じ感じでしょうか。

齊藤:まさにそうです。私もライターや編集者を経て今に至るので、赤字を取り入れたら自分の文章が良くなると、身をもって経験していますから。

人が書いた原稿に赤字を入れるのって楽ではないですよね。「この文章がより良くなるように」という愛がないとできない。脚本の打ち合わせも同じです。みんなが愛情をもって意見をくださるので、修正作業は楽しいですし、むしろ「みんな、こんなに脚本づくりに協力してくれるの?!」と感動すらしてしまいます(笑)。

――赤字といえば凹みそうですが、すごく前向きなのですね。

齊藤:ただ、それも今に至るまでにたくさん経験を積んだからで、うまくいかない時期は打ち合わせや修正が辛いと感じていました。当時は、自分に自信がなかったのだと思います。だから、たとえ前向きなフィードバックをもらったとしても、自分を否定されたと受け取ってしまったのだと。

それに、当時はそもそも脚本が下手くそだったと、今振り返ればわかります。なんとなく雰囲気で「雨が降ってきた」と書いて、「雨を降らせるのにいくら掛かるか知ってる?」と言われ、「すみません……」となったこともありました。

それくらい脚本のことも業界のことも何にもわかっていなくて、常にびくびくしていました。今は経験を積んで、たくさんの方に教えてもらってきたからこそ、勘所が掴めるようになってきて、修正につながる指摘も楽しく聞けるようになった気がしています。

先日、新人の脚本家さんと一緒に打ち合わせに参加したあと、私が「楽しかったねー!」と言ったら驚かれたことがありました。そのときにいつの間にか修正が楽しくなっていることに気付いて、私も少しは成長してるんだなと感じました(笑)。

――特に印象に残っているフィードバックやアイデアはありますか。

齊藤:私は文章を書くのは慣れているけれど、映像での見せ方はまだまだ弱いと思っていて、その点で監督やプロデューサーから意見をいただけるのはとても勉強になります。たとえば『40までに』の最終回で、雀さんが慶司君への想いを断ち切るために「40までにしたい10のことリスト」を消す場面。その姿に重ねて今までの2人の楽しかった思い出が回想で流れるシーンは、監督のアイデアで逆再生で見せることになりました。

――SNSでもとても話題になりましたよね。「演出が秀逸で泣いてしまった」「胸が締め付けられた」と、視聴者の心に強く響いたシーンです。

齊藤:私も実際に映像になったのを観たときは、「こんなに感情が揺さぶられる映像がつくれるんだ!」と、ぞわっとしました。タコパをしたりクレープを食べたり、一緒にリストをクリアすることで少しずつ縮まってきた2人の距離が、逆再生によって一気に離れていくように見える。あんなすごいものに出会えるこの仕事は、やっぱり辞められないなと思います。

――ライターや編集者時代の経験が生きているとのことでしたが、逆に、それらの仕事と脚本家の違いは何だと感じますか?

齊藤:一番の違いは、自分が書いた脚本は設計図であって、完成品ではないということでしょうか。脚本は設計図ではあるけれど、私が書き上げた時点では紙の本でしかなくて、そこからたくさんのプロの方の手を経て作品になります。演出はもちろん、ロケ地や小道具、衣装や照明、音楽、そして演じてくださるキャストのみなさんが脚本に命を吹き込んでくださると感じています。

――ドラマの脚本は書いて終わりではなく、制作チームも俳優さんも含めた、まさに“ワンチーム”の力で作品として完成していくんですね。

齊藤:そうですね。脚本家は脚本を仕上げたらあとは監督やキャストをはじめとする制作スタッフのみなさんにバトンを渡すので、チームの一員という感覚です。完成した映像を観ると、演出もキャストのみなさんの演技も毎回私の想像の遥か上を超えてくるので、いつも感動しています。

加えて、自分でストーリーを生み出す点も、ライターや編集者との違いだと感じています。ライターや編集者は、取材相手から聞いた話を読者に届ける役割なのに対して脚本家は、“0”から“1”を産む役割だと考えています。

ただ今回、「漫画原作のドラマ脚本」を担当させてもらったことによって、「これは編集者と似ていて、漫画を映像にして視聴者に届ける仕事でもある」と気づきました。実際に脚本を書いているときは意識していなかったのですが、振り返るとこれまでの経験を活かした仕事ができたのだなと思っています。

書きたい、けれど仕事がない。自分に価値を見出せなかった時代

――先ほど、編集者やライター時代の経験が今に役立っているという話が出ましたが、ここまでの歩みも教えてください。もともと脚本家になりたい思いはあったのでしょうか。

齊藤:最初から「脚本家になる」という明確な目標があったわけではなく、とにかく「書きたい」気持ちを諦めずに進んできた結果、今ここにいる感じです。

新卒では建設機械メーカーに就職したのですが、なかなか期待されるような成果が出せず、不甲斐なさを感じていました。そうした折、たまたま社内報に載せる文章の執筆を頼まれる機会があって。その文章を褒めてもらったのをきっかけに「昔から書くことが好きだったな」と思い出し、ライタースクールに通い始めました。

そこでも、私が提出した課題を先生がとても褒めてくださったんです。働きながらスクールの課題をこなすのは大変でしたが、書くことが本当に楽しくて。育ててくれた会社には申し訳なかったのですが、「こっちの道に進もう」と決意しました。

メーカーを退職したあとは、女性ファッション誌での編集ライターを経て、リクルートが発行する通販マガジン『eyeco(アイコ)』(※現在は廃刊)の編集デスクの仕事に就きました。

――そこではどんなお仕事を?

齊藤:自分でも記事を書きつつ、デスクとして社外の編集者・ライターさんたちと連携をとりながら1冊の雑誌をつくりあげていく役割でした。仕事はとてもやりがいがあった一方で、続けるうちに私は誌面のディレクションでは周りのプロフェッショナルたちに敵わないと感じるようにもなりました。

たとえ同じモデル、スタイリスト、カメラマンで撮影した写真でも、それを誰がディレクションするかによって誌面の空気感ががらっと変わるんですよ。通販カタログの撮影でも、上手な人が作るとおしゃれなハイブランドのポスターのようになる。その実力の差を目の当たりにして、私はこの分野では敵わないなと。「また逃げることになるのでは」と、とても悩みましたが、「私は編集ディレクションではなく、書くことを突き詰めていこう」と覚悟を決めました。

そこでリクルートを退職して、フリーのライターとして活動しながら、シナリオ・センターに通って脚本を学び始めたんです。物語を書くことへの憧れもありましたが、脚本家や小説家になれたら、ずっと書いていられると思ったんです。その数年後、2018年に2時間サスペンスドラマで脚本家デビューをすることができました。

――デビューのきっかけは何だったのでしょうか。

齊藤:脚本の勉強をしているときにご縁があった、制作会社のプロデューサーから声をかけてもらったのがきっかけです。でも、思っていた以上に2時間ドラマの脚本を書くのは難しく、苦しみました。

サスペンスドラマや刑事ドラマを見るのは大好きなのですが、実際に書くとなると、ストーリー以前に犯行トリックや警察の捜査方法なども全部自分で考えなければならなくて。知識も脚本技術も足りず、書いては直し、書いては直しの繰り返し。プロデューサーからフィードバックを受けても直しがうまくできず、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

どれだけ脚本を書いても誰の役にも立てていないのが辛くて、あのときの気持ちは今でも鮮明に覚えています。

――脚本家の仕事を、辞めようと思ったことはなかったのでしょうか。

齊藤:いろんな仕事を経験して、もうこの道しかなくなっていたので、辞めようにも辞められませんでした(笑)。だから脚本の仕事を続けていくにはどうすればよいか、だけを考えていましたね。それに、苦労しながらもなんとかデビューできたので、絶対に続けようと思っていたんです。でも現実は厳しくて、デビュー後も思うような結果を出せずにいました。

――その当時はどのような生活を?

齊藤:脚本家デビューの前から取り組んでいたフリーライターの仕事を続けつつ、派遣社員としても働いていました。それに加えて、シナリオ・センターを介してご縁のあった制作会社から、テレビ局に出すドラマ企画書のプロットを作成する仕事をいただいていて。

20巻の漫画を読んでA4用紙10枚にあらすじをまとめるような仕事ですが、当時の私にはとても勉強になりました。昼は派遣社員として働き、夜に子どもが寝てから企画書を書く、といった生活でした。

そうして50~60本以上の企画書を書いたのですが、なかなか企画が通らず、その先につながらなくて。せっかく依頼してくれているのに申し訳ないですし、悔しさも感じていました。

――その後、ドラマ『相棒』の脚本チームに参加されていますよね。

齊藤:脚本家としての仕事もないし、これはまずいぞと思って、テレビ朝日の「新人シナリオ大賞」に応募したんです。受賞は逃したものの、ありがたいことにコンクールに応募した作品を読んでくれたプロデューサーからお声がけいただき、脚本チームに参加させてもらうことになりました。

とはいえ、国民的ドラマである『相棒』の脚本を書くにはまだまだ未熟で。『相棒』は毎年2クール(6ヶ月間)放送するのですが、その中で1話書くのが精一杯でした。このままでは「脚本家」とは名乗れないと焦り、腕を磨くために脚本家のマネージメントをしてくれるスターダスト(SDP)に所属して、様々な企画に挑戦させてもらいました。その中で出会ったのが、『40までにしたい10のこと』だったのです。

これからも、地に足をつけて書き続けていきたい

――脚本家を続けていこうと思うきっかけとなった『40までに』に続き、2025年10月期ではドラマ『セラピーゲーム』が放送されました。こちらもシリーズ累計130万部を突破する人気BL漫画のドラマ化でしたが、齊藤さんが脚本を担当すると発表されると期待の声が多く寄せられていましたね。

齊藤:実は『セラピーゲーム』の脚本の話をいただいたのは、『40までに』のおかげなんです。「あの大人気BL漫画の脚本を担当するということは、書けるのだろう」と思っていただいたようです。

――『セラピーゲーム』原作の日ノ原巡先生も、ファンと同じ目線でドラマを楽しみにされているご様子を感じました。

齊藤:本当にありがたいですよね。漫画家の先生たちは私では思いつかないような魅力的なキャラクターやシーン、セリフをゼロから生み出している、とてもクリエイティブな方々です。そうした先生たちに楽しんでいただけるのは本当に嬉しいですし、作品に出会えたこと、そして原作を大事にしたいという気持ちで繋がったこのドラマチームに入れたことが、本当に幸せだと思っています。

――特に印象に残っている出来事はありましたか。

齊藤:わかりやすいことを1つあげるなら、ぬいぐるみですかね。原作では主人公の静真君が獣医学部の学生という設定で、たびたびかわいい動物たちが登場するんです。ドラマに動物を出すのはなかなか難しいのですが、でも、この空気感は残したい。さてどうしよう……となったときに、「ぬいぐるみはどうだろう」と思いついて。

ただ、静真君がぬいぐるみを撫でるシーンはこの作品の世界観に合うかどうか、自分ひとりでは判断がつきませんでした。そこで制作チームと原作サイドに相談したところ、みなさん受け入れてくださって、脚本に反映することになりました。

また、牧場のシーンも脚本執筆段階では別の場所だったのですが、撮影チームの尽力で牧場で撮れることになり、脚本を変更していただくことになりました。撮影チームの原作への愛を感じましたし、牧場のシーンは本当に楽しくて、大好きなシーンです。

――ドラマの裏側では、いろんなことが起きているんですね。

齊藤:それもすべて学びになります。制作チームはみなさん信頼できるプロの方ばかりなので、1つの作品を担当するごとに多くの引き出しが増えて、毎回、脚本家としてのレベルを引き上げていただいているなと感じています。 もっと早く脚本家になっていたら、若いときにたくさんのことを吸収できたのかもしれないと思う瞬間もあります。ただ、今は「原作とオリジナルのミルフィーユ」と言っていただいたように、ライターや編集者など、社会人経験が長かったからこそ書ける脚本があるのかなとも感じています。

――2026年1月期からは、『黒崎さんの一途な愛がとまらない』『この愛は間違いですか~不倫の贖罪』の2本のドラマの脚本に携わっていらっしゃいますね。それぞれのドラマへ込めた想いを伺えたら嬉しいです。

どの作品に対しても想いは同じなのですが、原作者である先生方が精魂込めて描かれた大事な作品をお預かりする者として、その魅力をドラマとしてしっかり伝えるのが使命だと思って書いています。今回もオリジナリティ溢れる2作品で、『黒崎さん』はとびきりのキュンを、『この愛は』はとびきりのゾクゾク感を楽しんでいただけると思いますので、ぜひ見ていただきたいです。

――最後に、苦しい時代を経ても「書くこと」を諦めなかった齊藤さんが、今後、「書くこと」とどのように向き合っていきたいと考えているのか教えてください。

齊藤:脚本家としては、これまでずっと低空飛行してきたところから、昨年くらいから急にぽーんっと跳ね上がった感じがしていて。「こんな幸せな体験していいのかしら、私」という驚きや喜びはありつつも、きちんと地に足をつけて進んでいかないといけないなと気を引き締めているところです。

「書くこと」については、自分でもびっくりするくらい、書いても書いても嫌いにならないなと。だからこそ続けてこられたと思いますし、まだまだ書き続けていきたいと思っています。(了)

撮影/上田 修司
執筆/中道 侑希
編集/佐藤 友美

齊藤よう(さいとう・よう)

東京都出身。上智大学法学部を卒業後、建設機械メーカー勤務を経て編集者・ライターの道へ。30歳を過ぎて脚本に興味を持ち、働きながらシナリオ・センターで学ぶ。映像制作会社でプロットライターを務めた後、2018年にサスペンスドラマで脚本家デビュー。その後、子育てや派遣社員をしながら『相棒』の脚本チームに参加し、複数の脚本を執筆する。近年は『40までにしたい10のこと』『セラピーゲーム』などの脚本を担当。2026年1月から脚本を務めた『黒崎さんの一途な愛がとまらない』『この愛は間違いですか~不倫の贖罪』が放送中。SDP所属。

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