
過去の本屋大賞のその後の今年【さとゆみの今日もコレカラ/第 96 回】
2024 年の本屋大賞ノミネート作が発表された。
凪良ゆうさんの『星を編む』は、第 20 回本屋大賞受賞作『汝、星のごとく』の続編で、受賞作品の続編が 2 年連続でノミネートされることは、史上初だそう。
本屋大賞のホームページを見ていると、2020 年の授賞式だけ、人物が写った写真がない。この時の大賞受賞者もやはり、凪良ゆうさんだった。作品は、『流浪の月』。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大により、授賞式が飛んだ。一世一代の本の売り時に、各地の書店はクローズになり、すべてのイベントは中止になり、授賞式の様子が報道されることもなく。なんて不運な作家さんなんだろうと思っていた。
なぜ、そのことを覚えているかというと、「2020 年 4 月 1 日以降の日本」を舞台にした 100 人の作家の web 連載企画「Day to Day」に、凪良さんがエッセイを寄せていたからだ。
「おまえ、ほんとついてない女だよな」
から始まるこのエッセイは、2020 年4月7日にアップされている。本当なら今ごろ本屋大賞の授賞式に出ているはずだった、という内容が強く心に残っている。
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もうひとつ、2020 年の写真で強烈に覚えている写真がある。『人は話し方が9割』の永松茂久さんが SNS にアップしていた電車広告の写真だ。あれはたしか最初の緊急事態宣言の最中、多分、4 月 20 日だったと思う。写真は広告のアップ写真だったけれど、おそらくその写真を撮影した車内はガラガラだっただろう。
「あいにくの自粛タイミングと重なってしまいましたが、著者人生初のことなので嬉しいです」というコメントに、前向きな方だなあ。しかし、よりによってこの時期に電車広告なんて、不運な人だなあと思ったので、よく覚えている。
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凪良ゆうさんは、その後どんどん読者を増やし、昨年2度目の本屋大賞を受賞した。今年も2年連続でノミネートされたのは前述した通り。
永松茂久さんの『人は話し方が9割』も、その後ミリオンセラーとなった。
運・不運なんてものは、その瞬間を見ているだけでは全然わからないものなのだなと思う。
それは、本当に力のあるものは運・不運だけに左右されないということかもしれないし、不運という逆境があってより強固になる何かがあるのかもしれない。凪良さんは昨年の受賞後インタビューで「順風満帆じゃないから書き続けていける」と語っている。そのメカニズムまではわからないけれど、「今、この一瞬の不運」が「人生の不運」とイコールではないことは、学べる。
おそらく失望の最中に書かれたであろう、くだんの凪良ゆうさんのエッセイは、以下の文章で結ばれている。
まあ、でも、あんまり心配しすぎないでおこう。あたしたちの船は小さいけど、あんたという新しい命を乗せて、なんとか向こう岸に辿り着くだろう。未来という名の岸から岸へ、遥か昔から、あたしたちはそうして続いてきたんだから。
沈みそうなとき。「未来」という視点を持つことが、ひとつの鍵なのかもしれない。
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【この記事をおすすめ】
今年の本屋大賞には、やはり史上初、知念実希人さんの児童文学『放課後ミステリクラブ』がノミネートされている。史上初はもうひとつあって、東京以外の出版社が発行した書籍としての初のノミネートだそう。ライツ社さんの快挙、応援したい。


