
太陽も。女も。マジックアワー延長戦。【今日もコレカラ/第910回】
マジックアワーという言葉を初めて知ったのはテレビマン時代で、「お前、貴重なマジックアワーに、見切れてんじゃねーよ。バカ」みたいなことをカメラマンに言われ、「マジックアワーとは?」と聞いたのが最初だったと思う。
マジックアワーとは、日の出前と日没後の数十分を指す。
直接的な太陽の光源がないこの時間は、光がグラデーションに染まる。映像が淡くたゆたう。この時間だけで撮影した映画があるくらいだ。
ヨーロッパに来るといつも感じるのは、マジックアワーの延長戦だ。
日本だと、数十分しかないマジックアワーが、ヨーロッパの夏には、体感、2時間半くらいある。地軸の傾きぶん、マジックアワーもななめにのびる。
陽が落ちるとすぐに暗くなってしまうような日本のような夜じゃなくて、落ちたあともずっと存在感のある日の入り。
私は、ヨーロッパのそれが好き。
太陽が落ちたあとの長い長い、夜に塗り替えられるまでの時間が好き。
この時間があるから、ヨーロッパの大人の女性は美しいのではないかなと思うくらいだ。
マジックアワーの延長戦があるかないかで、酒の杯数も変わるし、恋の数も変わるし、歳を重ねた女の価値も変わるように思う。
残り香のような時間をどれくらい美しく切なく名残惜しく保てるかが、女の幸福度にわりに直結するように思うのだ。
フレッシュなグリーンワイン2杯。
ほろ酔いで見た、ポルトガルの片田舎のマジックアワー。
直射日光ではなくて。
ギラギラ自分が輝ける時間だけではなくて。
真っ青な空じゃなくて。
もういなくなった太陽の残り香が、ずっと続く。
こういうのがいいなあと思うようになったお年頃。
サムネイルは、ポルトガルの田舎町。遠く、海に沈む太陽。
【この記事をおすすめ】
「物語」とは何なのだろう。
人は、目の前の現実のみによって、自分の生き方を決めるわけではないのかもしれない。
人はなぜ、物語を求めるのか ———映画『今日からぼくが村の映画館』
※「今日もコレカラ」は朝7時に更新です。バックナンバーが読めるようになりました。


