
“女優再生工場”で起こっていることは【さとゆみの今日もコレカラ/第 114 回】
わたしが心の中でひそかに「女優再生工場」と呼んでいる美容師さんがいて、泣かず飛ばずだった女優さんやモデルさんが、その人の手にかかり髪を切られると、突然「ぱーん」とする。
引退まで考えていた崖っぷちの彼女らが、見違えて美しく強いオーラをまといはじめ、ざくざくと仕事のオファーが増えていく様子は、本当に感動的だった。人間の手で生み出される奇跡を見るようだった。
この「ぱーんとする感じ」を上手く説明するのは難しい。写真加工で言うと彩度がぐいっとあがりシャープネスがきく感じだろうか。とにかく、「その人」の輪郭がくっきりする。そして、本人の内部に自信がみなぎってくるのがわかる。
その自信の生まれっぷりは、音が聞こえるくらいだ。たぷたぷたぷたぷ、あ、いま、この人の中に自信の泉が湧いているんだとわかるほどの、音がする。
私は美容担当ライターとして、何度かその「再生」の瞬間に立ち合ったから、その美容師さんの手にかかる前と後で、彼女たちがどれだけ別人になったかがわかった。
陳腐なたとえだけれど、蛹からでてきた蝶がおそるおそるあたりを見渡し、あれ、私、飛べるんじゃない? と気づき羽を広げる。飛ぶ。飛べた! そんな感じなのだ。
えっ、嘘。世界はこんなに広かったの。そんな声が聞こえる感じ。
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ある時その美容師さんに、どうすればそんな魔法をかけられるのかを聞いたことがある。すると彼は、意外なことを言った。
どんなに綺麗に見える俳優でもモデルでも、コンプレックスに思ってる部分があるんだよね。
たとえば、鼻が座ってるとか、エラがはっているとか、左右の目のバランスが違うとか。
それをね、目立たせるの。
え? 弱点を目立たせるの?
そう。本人がコンプレックスだとか弱点だとか思っている部分って、規格から外れた個性的な部分なんだよね。それをバーンと目立たせる。
すると、特別感が出る。
特別感?
うん。普通に綺麗な人、じゃなくて、とびきり特別に目を引く人になる。
なるほど、と私は思う。
できれば隠したいと思っていた自分の弱点が前面に出されて隠しきれなくなって、けれどそれがあなただけの美しさだと言われれば、確かにその人は生まれ変われるのかもしれない。
これまで彼が担当してきた、とびきり際立った女優やモデルたちの顔を思い浮かべ、もう一度、なるほどと思う。
強みではなく、弱みが、代替のきかない個性を作る。弱みをさらけ出して認められるのだから自信になる。
そうか。これが、「ぱーんとする」理由か。
多分、女優さんの話だけでは、ない。
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けれど、今、私は「自分らしい言葉」がどうしても欲しい。


