
ときどきフラジール【さとゆみの今日もコレカラ/第 174 回】
何かの映画で見たのか、山田詠美さんの本だったか、主人公の女性が 365 日 24 時間アンクレットをしているのに憧れていた。いつも自分の好きな服を着て、自分の好きな人の前で脱ぐ。自由奔放に生きる主人公の足首に、それだけは肌身離れず、唯一彼女と地球をつなぐ足枷のようになっているのが妙に色っぽかったのを覚えている。
そんな話をしたことも忘れていたころ、素敵なアンクレットをプレゼントしてもらった。嬉しくて毎日ずっとつけている。
アンクレットのある毎日は、ちょっと不自由だ。たとえば靴下を脱ぐ時に、間違ってアンクレットごと指を差し入れて引っ張ると、チェーンが切れてしま
う。これまでに2度、修理に出した。メイクを落とすのも面倒で、なんならコンタクトしたまま寝落ちしてしまいそうな時ですら、靴下だけはそーっと脱ぐ。そのときだけ、私の所作は、育ちの良いお嬢様みたいに丁寧になる。それも好き。
この感覚、何かに似ているなと思ったら、正絹のお着物を着ているときの感じだと思い当たった。クリーニングできない正絹の着物。お食事をするときも箸づかいが丁寧になるし、水濡れにも弱いから雨の日などは歩き方にも気をつかう。今日は駅まで何歩で行けるかと、大股でガシガシ歩く日の私とは全然違う私になる。
自他共に認めるがさつな人間なので、取り扱い注意の繊細な何かを身に着けることは新鮮でよい。自分の身につけるものを大切に扱っていると、自分自身を大切に扱っているような気がして、ちょっと優しい気持ちになる。近々50 代に突入するし、これから一番のフラジールは自分の身体になっていくだろう。これまで酷使してきた自分のこともそろそろ、取り扱い注意で労っていきたいな。
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あと何年書き続けたら、私は私の理想とする文章が書けるようになるのか? 17 年やってこのレベルだとしたら、全っ然、時間が足りない。


