
指先が嘘をつく【さとゆみの今日もコレカラ/第446回】
さとゆみゼミの5期クラスがスタートした。最初は200字、300字の課題から始まり、最後は2000字以上の文章も書いてもらう。
この時期にみんなに一番問いかけることは、「本当にそう思った?」「本当にそう感じた?」である。
文章を書き慣れてくると、指先で文章を書けるようになってくる。
体が感じていないのに、脳を通していないのに、脊髄反射で耳ざわりの良い言葉を転がせるようになる。
いや、脊髄まで届いていればまだ良い。ひどいときは指先だけで文章を書いてしまう。
そして、指先は、嘘をつく。
感銘を受けました。
鳥肌が立ちました。
目から鱗でした。
物書きをしていたら、こういう言葉が次から次へとすらすら出てくるようになる。たった300字の原稿でも、こういった表現があちこちに顔を出す。
いや、本当に感銘を受けたのであれば良いと思う。
だけど、それは、「本当に」深く心に刻んで一生忘れないぞと思うほどの体験だったのだろうか。私の感銘は、そんなに安いのだろうか。
「本当に」鳥肌が立つほどの衝撃だったのだろうか。
私の鱗は毎日一枚落ちるくらいはがれやすいのだろうか?
1dayアキュビュー?
そんなことを、ゼミのみんなと一緒に考えている。
指先で書いていると、本当に人生をかけて伝えたいことがあるときに、言葉の神様に嫌われる(と、私は思っている)。
そして、「本当に」思ってもいないことを書くことは、自分をほんの少しずつ傷つける。
思ってもいないことを書くのはもう、AIに任せてもいいよね。
「今日もコレカラ」は毎朝7時に更新して24時間で消えるショートコラムです。今日もこれから良い一日を。
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辺さんには、これまで3冊しか著作がありません。デビュー作の『こんな夜更けにバナナかよ』の上梓からは15年。その本の取材・執筆に要した約3年を加えると、平均して6年に1冊のペースです。


