
ちょっとずつ、ちょっとずつ【今日もコレカラ/第721回】
先日友人の紹介で、腕が良いと評判のネイリストさんのところに行ってきた。マンションの一室で個人でやっている方だ。
普段わたしはネイルサロンでは爆睡していることが多くて、施術中に話をすることはないのだけれど、そのときは、たまたま目が覚めていたのでいろいろと会話した。
彼女は10店舗以上転々としたあとに、コロナ禍をきっかけに独立したという。
私はネイルの技術に詳しいわけではないけれど、ネイルサロン利用歴 25年だから、上手い・下手はなんとなくわかる。彼女が甘皮の処理を始めたとき、この人はすごく上手いとわかった。
「ネイルの技術って、どの部分で一番差が出るんですか?」
と聞くてみた。
たとえば、ケアの部分で差が出るとか、トップコートの塗り方とか、薬剤知識とか、それこそ甘皮処理とか。そういうのをイメージしながら質問した。
ところが彼女は、少し考えたあとで
「ちょっとずつ、ですね」
と言った。
「どの技術もちょっとずつ、ちょっとずつ差がついて、仕上がりが全然変わるんです」
ちょっとずつ。
そうか! ちょっとずつか!!
なんとなくこの言葉にじーんときた。
それはそうだよな。プロの仕事ってそういうことだ。ひとつひとつは客に差がわからないくらいの微差なのだけれど、全体ではまるで違った仕事になる。
そういうものだよなあ、と思う。
昨夜はさとゆみゼミのアドバンス講座の最終回だった。半年強、かなりみっちり課題に向き合ってもらった。
知らない人からみたら「重箱のすみをつついているのでは?」というくらいの「ちょっと」をチューニングしてきた仲間たちだ。最後の添削も「ここ、『に』のほうがいいかな? 『を』のほうがいいかな?」と10分以上悩んで辞書を引いて赤字を入れた文章があった。
最終課題の2500文字。その2500分の1にあたる1文字1文字の選択の微差が、2500文字を作るのだと改めて思った。
わたしを含めて、完璧な原稿など書けない。
だけど、「1文字の選択」を重ねた結果「2500文字の物語」ができることはみんな、この半年で体に刻みつけたのではないかなと思う。「なんとなく書かない。全部の1文字を、意志を持って書く」ことを、繰り返してきたのだ。
全員が全員、半年前とは別人の原稿になっていた。
ちょっとずつ、なのだよね。
【この記事をおすすめ】
もっとうまく書きたい。もっと面白く書きたい。
もっと、もっと、もっとが止まらない。
欲深くてすみません。
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