「新しくやり直す良い機会でもある」と前を向く深見町復興協議会代表・佐藤克己さんを応援したい【能登のいま・18回】
CORECOLORで取材させていただいた輪島市深見町の佐藤克己さんとインタビュー記事公開についてやりとりをしていた最中のことでした。9月21日に起きた奥能登豪雨により輪島市深見町は再び孤立。一時は、佐藤さんとの連絡も不通になり「孤立も解消し、怪我人もいません」と連絡が取れたときは心底ホッとしたのを覚えています。10月中旬、私は「今は現地に行くことが応援になるはず」と思い、豪雨の爪痕が数多く残る輪島市を再び訪れました。
奥能登豪雨から約1ヶ月後、私は息子と友人親子の4名で石川県輪島市を訪れました。のと里山空港でレンタカーに乗りナビを入れ驚いたのは、輪島市中心地から車で15分の旧深見小学校(深見センター)まで所要時間1時間半と表示が出たこと。Google Mapも同じだったので指示されたとおりに進むも、「これでは辿り着かない気がする」と思い佐藤さんに電話。
「海沿いの道が開通しているから、そっちで来て! ナビは信じちゃダメだから!」
佐藤さんの言葉で、道路状況が日々変わっていることが感じられました。旧深見小学校への道中、土砂崩れの跡が何ヶ所も生々しく残っていました。道の脇に寄せられた岩の大きさが、水流の強さを物語っています。7月にあまりの美しさに再訪を誓った旧深見小学校前の海は茶色く濁り、豪雨から1ヶ月経った今もたくさんの木片が海岸に打ち寄せられていました。
豪雨直後の海は泥色に濁り、流れてきた木々で埋め尽くされていたそうです。
佐藤さんは、私たちを笑顔で迎えてくれました。
豪雨が襲った週末は、旧深見小学校で復興食堂開催中。そのため、大阪から出店していた飲食店の方や地域住民、工事関係者含め約20人が旧深見小学校に避難し、佐藤さんは皆に食事を振る舞ったそうです。
「ひどい雨なんてもんじゃないよ。目の前にある海が、全く見えなかったもんね」
深見町がある輪島市の奥能登豪雨の降水量は、激しいときで1時間で121ミリ、24時間で412ミリを記録。東京都の年間降水量が約1,500ミリなので、約3ヶ月分がたった1日で降ったことになります。雨は想像を絶する量で土砂崩れは至る所で発生し、断水だけでなくテレビ・電話・ネット回線は不通。畑も土石流でえぐられ、当初は何から手をつけたらいいか分からない状況だったそうです。「復興食堂によく家族で来ていた子が、この豪雨の犠牲になったんだ……」と、ふっと遠くを見てぽつりと呟いた佐藤さんの横顔が忘れられません。
佐藤さんの拠点である旧深見小学校は現在、1階が調理室や食堂、2階・3階は解体業者の作業員の方々の住居スペースになっています。
震災後から「作業員の方にできるだけ快適に過ごしてもらいたい」という思いで、佐藤さんは山から水をひき、解体現場からボイラーや風呂釜を譲り受け、お湯が出るシャワーと風呂を自分たちで製作。洗濯機・乾燥機も完備されています。ボランティアの方の宿泊も受け入れられるよう、避難所で使わなくなった段ボールベッドや、使用しなくなった畳や布団も数多く用意。震災後の教訓を生かし、「もしも」の為の備蓄だけでなく住環境も整えておいたことが今回の水害でも生きました。避難住民が、夜間は横になってゆっくり体を休められたのはそのおかげです。
水害を機に、衛星を使用したスターリンクWi-Fiを設置し、オンライン打ち合わせもできるようになりました。他地域のボランティアの方が宿泊のみ利用することもあるそうです。
私たちが伺ったときも、解体現場からもらってきた洗面台や、風呂釜を軽トラの荷台から運び出していました。もっと地域の人たちに喜んでもらえる場所になるように「次は外に檜風呂を作るんだ」と、製作途中のお風呂も見せてくれました。
大きな幹線道路は、行政が土砂を退かして通行できるようにしてくれますが、地域の人たちが使っている小さな道は自分たちで整備が必要です。
佐藤さんは「行政の支援が届きにくい部分は、自分たちで、今できることをやる」と日々、住民の声を聴き動いています。活動には、時間もお金も必要です。「資金が足りなくて沈没しそうです」と、佐藤さんからメッセージがありました。ぜひ、皆さまのご支援、情報の拡散をお願いします。
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文/本間 友子
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